精神科病院で人生を終えるということ その死に誰が寄り添うか 日経ビジネス人文庫

東徹(著者)

• 販売会社／発売会社: 日経BP/日経BPマーケティン
• 発売年月日: 2025/02/26
• JAN: 9784296207619

商品レビュー

2025/10/25

米国では専門の精神科医がいるほど一般的だが、日本では、まだ精神科にかかるという事自体がタブー視されている。そして実際、精神疾患を抱えた高齢者が、精神疾患以外の病気を発した際、受けいれてくれる病院を探すのは難しい。ストレスは昔より増えている。精神疾患にかかる機会も多くなる。家族がいれば、必死で病院を探してくれるが、もし独身で精神疾患になったら、他人である第三者は、親身になって病院を探してくれるだろうか。

　そして、精神疾患は完治がない。癌同様、寛解はあるが、精神疾患にかかりやすい要素は体自体にあるため、何かのきっかけで、再び症状が出てくることがある。治療完了というゴールが見えないため、家族が焦燥感に駆られて、つい本人を責めたくなる。しかし本人も疾患であるという意識がなく、自身で治療に向けた努力をしたくても、方法がわからない。とても難しい。答えがわからない闘病生活に入る家族や患者と接する医師の苦労がしのばれる。

　優生思想の犠牲になり、亡くなった相模原障害施設殺傷事件についても触れている。

　高齢者と同様、精神疾患も、だいたい食べられなくなったら亡くなる。

2025/03/17

1. はじめに
- 精神科病院における患者の最期の過ごし方と、その死に誰が寄り添うかがテーマ。
- 精神疾患を抱える患者の治療とケアの重要性が強調されている。

2. 精神科患者の終末期医療
- 精神科病院では、患者の身体的および精神的な健康を維持するための努力が必要。
- 終末期における患者の希望や意思表示の重要性。
- 患者が拒否する場合の治療方針やケアの選択肢について。

3. ケーススタディ
3.1 事例1: 癌患者の終末像
- 二つの癌が同時に見つかった患者の例。
- 患者は治療への抵抗が少なく、意識を失いながら穏やかに亡くなった。
- 医療従事者による緩和ケアの実施。

3.2 事例2: 誤嚥性肺炎の繰り返し
- 脳萎縮の進行が見られる患者が誤嚥性肺炎を繰り返すケース。
- 薬剤の使用を減らしても肺炎は改善せず、看護体制の限界が浮き彫りに。
- 結局、医療の選択肢が限られた中での最善のケアが模索される。

4. 治療方針の決定
- 患者と家族とのコミュニケーションが重要。
- 家族の意向と患者の希望を考慮した治療方針が求められる。
- 家族が医療方針を決定する際の心理的な負担。

5. 精神疾患と身体合併症
- 統合失調症などの精神疾患が進行すると、身体的な健康も損なわれる。
- 身体合併症の管理が精神科医療の重要な課題であることが示される。
- 患者の生活の質を保つための取り組みが必要。

6. ケアの質と医療従事者の役割
- 精神科医や看護師の役割が強調され、患者に寄り添う姿勢が求められる。
- 医療従事者の感情的な負担とその対処法についても言及。
- 患者の尊厳を保ちながら、実質的なケアを提供することの難しさ。

7. 終末期医療における倫理的考察
- 無理な延命治療を避けることが重要であるとの意見。
- 倫理的なジレンマと医療現場での意思決定の複雑さ。
- 患者の権利と医療提供者の責任のバランス。

8. 結論
- 精神科病院における患者の終末期ケアは、身体的、精神的な側面を含む総合的なアプローチが求められる。
- 家族や医療従事者が連携し、患者にとって最良の選択を模索する姿勢が重要。
- このテーマに関する理解を深めることで、精神科医療の質の向上が期待される。