ティンガティンガ・アートでたのしむアフリカのむかしばなし(2) こわいはなし シャターニに育てられたむすめ

しまおかゆみこ(編者), チャリンダ(絵)

• 販売会社／発売会社: かもがわ出版
• 発売年月日: 2025/02/21
• JAN: 9784780313550

商品レビュー

2025/10/31

「ティンガティンガ・アートでたのしむアフリカのむかしばなし」全3巻、この巻は「こわいはなし」
怖くもあり哀しいお話だと思いました。『遠野物語』と似ている感覚です。

事前メモ。
・タンザニア：ザンジバルとタンガニーカ（本土）の連合共和国。
・ザンジバル：ウングジャ本島とペンバ島により成り立っている。
・「シャターニ」とは：悪魔でもあり、守り神でもある妖怪。

『どろから生まれたどろんこむすめ（タンザニア本土　マクワ）』
こどもができないことをとても嘆き悲しんだ女性が呪術によって泥でできたむすめを授かる。女は大切にむすめを育て、特に水に濡らさないように気をつけていた。だが娘が友達と遊びに行ったときに雨に降らえて、娘は泥に戻ってしまう。
そこから村の人達は「あかんぼうは神様からの授かりもの。生まれても生まれなくても神様に感謝して生きて行こう」と思ったんだそうです。
＝＝哀しい、しかしどろんこ娘は泥だけど村の人たちに受け入れられ、お母さんからも愛され楽しい人生だったんじゃないか。そして「女性は子供を産むのが当たり前！」という価値観で、昔話としてこのような女性に優しいお話を伝えていったんですね。

『歌うシャターニ（タンザニア本土　ナカパニャ村）』
シモンジャは父さんから「シャターニに攫われてしまう森には行くな」と言われています。けれどもおおてんば娘のシモンジャは気にせず森に入り、そしてシャターニに攫われてしまったのです！父さんはシモンジャを取り戻しに森に入ります。森ではシャターニが、ウサギとかカラスとか動物たちに魔法をかけていました。
父さんが気をつけながら進むと歌声が聞こえます。それは沢山の人を食ったシャターニで、身体から生えたシャターニに食われた人たちの頭が歌っていたのです。
父さんはシャターニを退治して、シモンジャを助けることができました。
＝＝シャターニから人の首が生えている挿絵は不気味ではあるんだけど、木の枝に花と人の首が咲いていて、首は歌っていて、なんか呑気というか「まあこれも人生」って感じに見える(^_^;）

『シャターニに育てられたむすめ（ザンジバル　ペンバ島）』
森の中で赤ちゃんがシャターニに連れ去られました。村の人達は、森でシャターニに育てられている娘を見かけますが、近づこうとするとシャターニに呪われてしまいます。村の人たちは娘のことは諦めて過ごしました。
それから17年たち、娘は森の中で動物たちと一緒に過ごしていました。村の老人たちは「あの娘のことは放っておけ」と言いますが、若者たちは「あの娘を捕らえてシャターニの弱点を聞き出せばシャターニを倒すことができる」と考えます。そして動物を殺し娘を捕らえて縛り付けたのでした。しかし娘は死んでしまいます。
＝＝これは哀しい。娘は人間とは離れたところで平穏に育ち、人間と仲良くしたいと思ったら酷い仕打ちをされ、シャターニからは裏切り者と思われて殺される。これは哀しい。『遠野物語』と似ている感覚です。