「地下鉄サリン事件」自衛隊戦記 出動部隊指揮官の戦闘記録 産経NF文庫 ノンフィクション

福山隆(著者)

• 販売会社／発売会社: 潮書房光人新社
• 発売年月日: 2025/02/25
• JAN: 9784769870746

商品レビュー

2025/04/02

第一章：第32普通科連隊
著者の連隊長就任（1993年）。
市ヶ谷駐屯地という特異な立地、厳しい訓練環境、都市型災害への即応性。
軍事的伝統と現場の誇り。
第二章：大震災と防災訓練デモ
阪神・淡路大震災による出動遅延と教訓。
災害対応能力強化として「キャピタル・レスキュー195」防災訓練を自主開催。
自治体との連携構築の端緒。
第三章：事件発生
地下鉄サリン事件発生時、指揮官は代休中。
ゴルフ場からの急遽帰隊、情報の錯綜と危機認識。
自衛隊の出動意義：国家の存在を可視化する行動。
第四章：留守部隊の奮闘
非常呼集に応じた少数の留守隊員による指揮所設営。
通信網整備、連隊再編、現場復帰する隊員たち。
若手幹部・曹のリーダーシップと使命感。
第五章：出動準備
除染隊4個隊の編成、化学科部隊との連携。
現場指揮官の不在・不統一というリスクと、アドバイザー制度の導入。
駅構造や地下構造に対応するため市販地図の活用。
第六章：出陣
出陣式（編成完結式）による士気高揚。
装備確認の遅延への決断：「俺が責任取る」。
指揮系統の曖昧さへの反省と現場任務委譲。
第七章：除染現場の闘い
狭い地下空間でのサリン除染作業。
装備不足、情報伝達手段の乏しさ、無線の不安定。
「再検知」と追加除染、判断の重み。
記録映像の重要性。
第八章：幻の作戦計画
極秘裏に作成された「対オウム治安出動」計画。
狙撃手小隊の編成、駐屯地防衛、カナリアによる毒ガス警戒。
法的根拠不十分ながら、現場の備えは極限に達していた。
国家の非常時に備える自衛隊の「覚悟と限界」。
第九章：事件から得た戦訓
情報連携・無線通信・法整備の不備。
医療体制、装備品、初動対応の見直し。
指揮命令系統の明確化の必要。
東京都の制度改革（危機管理監など）の紹介。
教訓の記録と風化防止のための“記録戦”。

◆【本書の主題とメッセージ】
自衛隊は「軍隊」である前に「公的インフラ」でもある
→ 有事だけでなく、平時の災害・テロにも即応すべき社会の支柱。
国家緊急時には「早すぎる出動」は存在しない
→ 遅れることで人命が失われ、国家の信頼が損なわれる。
命令系統・装備・法制度の未整備が命取りになる
→ 法の空白が現場の混乱と危険を招く。
「記録すること」が最大の戦訓である
→ 後世に正確な教訓を伝えることで、失敗を繰り返さない。

2025/03/26

地下鉄サリン事件で地下鉄の除染作業を行なった第32普通科連隊連隊長の回顧録と、実際に現場で除染の指揮にあたった自衛隊員の証言をまとめたもの。現場を見てきた人たちの証言なだけあって、当時の状況が手に取るようにわかる。