分析者のための行動経済学入門 プロスペクト理論からナッジまで、人間行動を深く網羅的に解明する

黒川博文(著者)

• 販売会社／発売会社: ソシム
• 発売年月日: 2024/11/25
• JAN: 9784802614924

商品レビュー

2025/07/13

　データ分析者としての知識の幅を広げるために本書を読みました。
　本書は、完全には経済的合理性だけでは動かない人間の行動にみられる傾向をデータ取得・データ分析の観点から説明した入門書です。本書の大半を占める2部においては事例を通じて様々なモデルが説明されますが、非常に複雑そうに思われる人間の意思決定に対し驚くほど体系的な理解が与えられており驚きました。また本書では、単に分析するのではなく何らかの課題をより改善するために行動経済学の知見を活用する事例も多くあり、エンジニアである私にとっても学ぶところが多い書籍でした。
　本書で気になる点はありませんが、個人的には、もう少し日本語の文献を挙げてくれると嬉しいとは思いました。

2025/03/10

はじめに
- 行動経済学は「人間行動をより深く理解することで得られる知見をデータ分析に活かす」ことを目的とした分野である。
- データ分析において「人間行動の理解」が不可欠であり、データは多くが「人々の行動や選択の結果」として生み出されるものである。

行動経済学の重要性
- 行動経済学は「非合理」な人間行動を分析する学問であり、心理学の知見を経済学に組み込むことで、現実的な人間の行動を分析することができる。
- データ分析には「記述」「予測」「因果」という3つの目的があり、行動経済学は「なぜ、そのような結果になるのか？」という仮説を立てることができる。

データ分析と行動経済学の関係
- 行動経済学の知見を活用することで、行動を変えるための介入策を設計し、結果指標を改善することが可能になる。
- 行動経済学を正しく理解するためには、経済学の基礎知識も必要である。

本書の構成
第1部: 分析者のための行動経済学
- 基礎知識を身につけ、行動経済学が人間行動をどのように分析するかを学ぶ。
- 因果分析や経済モデルの考え方についても言及する。

第2部: 実践法
- 行動経済学の考え方と実践法を身につけ、プロスペクト理論などに基づく分析を行う。

因果推論の重要性
- データから因果関係を推論する方法（例：ランダム化比較試験）を説明し、その有効性を示す。
- セレクションバイアスや観察データにおける因果関係の誤解についても触れる。

行動経済学の実験
- 様々な実験（例：独裁者ゲームやマッチング寄付ゲーム）を通じて、利他性や社会的選好のモデルを検証する。

利他性のモデル
- 純粋利他性とウォームグローを区別し、実験結果を通じてその理解を深める。
- 不平等回避モデルを提案し、他者の利得との関係での人間行動を考察する。

ナッジの概念
- 行動を促すためのナッジの作成手法を説明し、行動経済学の知見を利用して効果的な介入を設計する方法を示す。

結論
- 本書は行動経済学を分析に活かすための体系的な理解を促進するものであり、現実のデータでの分析との結びつけ方を理解することを目指している。

2025/03/07

正直少し難しかった。
計算とか出てくると理解に時間がかかるし、読むのも時間かかった。そこに関しては自分の学の無さを感じた。
そんなレベルの私でも、人間の心理を考え、自分の経験や過去の例に倣って意識できる事例も多く、あ、わかるかもってとこまで落とし込める本だった。
ビジネス書としては難しいけど、医療に携わってた身からすると心理的側面、行動変容に必要な考え方としてはすごくしっくりきた。
また時期が来たら読み直したいし、著者の他の作品も読みたい。