オレがマリオ

俵万智(著者)

• 販売会社／発売会社: 河出書房新社
• 発売年月日: 2024/10/29
• JAN: 9784309032214

商品レビュー

2025/09/25

震災との向き合い方も含めて、歌人として、母として、一人の人間としての揺らぎと揺るぎなさが共存して歌に表れている。新たに知った言葉が血肉と化していく様も素敵。あとがきでのWi-Fiや電子書籍に関する息子さんの言語感覚があまりにも俵万智の息子然としていて最高。

2025/07/23

歌集を読むのは初めてだったが、とても読みやすく共感できる歌がたくさんあって良かった！

東日本大震災の直後からその後の石垣島移住生活の中で生まれた歌集で、シンプルに悲痛な歌も多いが↓
・ありふれた心が後ろめたくなる花をきれいと思うことさえ
・空腹を訴える子と手をつなぐ百円あれどおにぎりあらず
こんな状況でも明るくほっこりした日常を切り取れるが俵万智さんらしいと思った！↓
電気なく水なくガスなき今日を子はお菓子食べ放題と喜ぶ

2025/06/29

歌人、俵万智の第５歌集。341首がおさめられている。
著者はシングルマザーとして子育てをされていて、この歌集はご子息の年齢でいうと2歳から10歳ころに作った短歌がおさめられている。
子育てについての短歌や、沖縄県の石垣島での生活について詠んだ短歌も多い。

『アボカドの種』も良かったが、この歌集もとても面白く、心に残る短歌が多かった。また、歌人の松村由利子さんの解説も素晴らしくて、歌人俵万智さんの人柄や短歌の魅力を深く知ることができた。

本歌集から、十首の短歌を紹介したい。

「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ

垂直の雨を水平に押してゆく風あり遥かな水のカーテン

新月の窓辺に江戸川乱歩読む子の目激しく上下しており

「ただいま」を言え言え言えと言われれば「ただいません」と返すおさなご

人生はそんなにあまくないけれど「ごめん」「いいよ」のビデオ見せおり

写真にはおまえ一人が写りおり五月の空から生まれたように

無垢、無邪気、無心、無防備　笑顔とは無から生まれるものと思えり

振り向かぬ子を見送れり振り向いたときに振る手を用意しながら

いのちとは心が感じるものだからいつでも会えるあなたに会える

危ないことしていないかと子を見れば危ないことしかしておらぬなり