台湾人の歌舞伎町 新宿、もうひとつの戦後史 ちくま文庫

稲葉佳子(著者), 青池憲司(著者)

• 販売会社／発売会社: 筑摩書房
• 発売年月日: 2024/10/11
• JAN: 9784480439833

商品レビュー

2024/11/18

新宿にゆかりのある私だが、祖母から聞いていた新宿と同じところもあったが、全く知らなかった台湾人や韓国人コミュによる歌舞伎町創生を垣間見ることができた。

2024/11/12

「歌舞伎町には台湾人オーナーのビルが多い」と大学の先生から聞いたのはもう30年以上前。当時は「そうか、だから歌舞伎町には台湾料理店があるのか」くらいしか思わず、その由来に注目することもなく歳を重ねた。それから再び台湾と縁ができた今これを読むと初めて知ることが多く、読み進めていくうちに戦後の歌舞伎町の様相が詳細な筆致の隙間から立ち上がるようにも感じた。歌舞伎町に映画館などの誘致したことで文化の街となり、60年代に演劇も盛んだったというのもいろいろ腑に落ちるところがあった。これを読んでから歌舞伎町に行くと、きっと思いもよらないところに目を向けることになるだろうし、見える風景もこれまでとは変わりそうだ。

2024/10/20

　終戦後、歌舞伎劇場を始め一大エンタメ―テインメント施設を集めた町を創ろうということで ”歌舞伎町”と名付けられたことは知っていたが、本書を読んで、歌舞伎町で台湾人のドラマがこれほどまで繰り広げられていたことにとても驚かされた。

　日本に留学等していた裕福な子弟の台湾人が多かったこと、新宿駅周辺にできたヤミ市の中に台湾人が多数存在していたが、その背景には ”解放国民” の立場を享受できるメリットがあったことなどから、終戦後早々の時期に一財産築いた台湾人たちがいて、そうした中から、当初構想がなかなか進まなずまだまだ空き地の多かった歌舞伎町に進出した台湾人がいたことが明かされていく。
　著者たちが取材を始めた（2009年）ころ、歌舞伎町の土地を買ったり借りたりして店を始めた創業者世代の人たちの多くは鬼籍に入っていたようだが、当時を知る関係者や子ども世代の人たちに丹念に取材を重ね、当時の状況を明らかにしていく。

　取材当時から更に時代が経ち、取り上げられたお店の多くは残念ながら姿を消してしまったが、当時の地図など見ながら在りし姿を想像するのは楽しいし、歌舞伎町という町のもう一つの歴史や台湾人のネットワークの在り様などを知ることができた。