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アーレントと黒人問題
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アーレントと黒人問題

キャスリン・T.ガインズ(著者), 大形綾(訳者), 百木漠(訳者), 橋爪大輝(訳者)

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アーレントと黒人問題

定価 ¥4,950

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 人文書院
発売年月日 2024/08/28
JAN 9784409031339

アーレントと黒人問題

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商品レビュー

4.5

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2025/04/16

2023年以降のイスラエルとガザの問題をモヤモヤとずっと考えている中で「アーレントが生きていたら何を考え発信したのだろう」ということを考えたくて読んだ本。アーレントの多くの著作や論文、そして批判に対する反論やインタビューなどを詳細に追いかけ、その論理の中に潜む差別的志向を批判的に...

2023年以降のイスラエルとガザの問題をモヤモヤとずっと考えている中で「アーレントが生きていたら何を考え発信したのだろう」ということを考えたくて読んだ本。アーレントの多くの著作や論文、そして批判に対する反論やインタビューなどを詳細に追いかけ、その論理の中に潜む差別的志向を批判的に捉え直す。昨年『エルサレムのアイヒマン』を読んだときにアイヒマンに冷静に放った言葉を同じようにイスラエルの政治家たちに投げかけるのだろうかと思ったが、少なくとも黒人問題について見る限り、アーレントはユダヤ人の立場について深めた洞察や論理を黒人の立場に立って考えるということはしなかったということがよくわかる。全体主義への考察などアーレントの仕事の重要さ自体が失われる訳ではないにしても、パレスチナの人々に対しても冷淡な言葉が出たのかもしれない、と残酷な想像が強まってしまって悲しい。ヨーロッパ中心主義とはどういうことかとその根深さ、そしてあらゆるレベルでのダイバーシティの在り方について引き続き考えていきたい。

Posted by ブクログ

2024/12/03

今、アーレント業界では話題の本。 アーレントの政治的な発言は、しばしば極論的で、人の感情を逆撫でるような「不適切」なものが多い。 それは、彼女の性格や思想からくるもので、その場その場で考えたこと、思ったことは、大勢の意見と異なっても自分の意見をいうことの自由を大切にしていたと...

今、アーレント業界では話題の本。 アーレントの政治的な発言は、しばしば極論的で、人の感情を逆撫でるような「不適切」なものが多い。 それは、彼女の性格や思想からくるもので、その場その場で考えたこと、思ったことは、大勢の意見と異なっても自分の意見をいうことの自由を大切にしていたということだと思う。 アーレントの政治的な発言の一部を取り出して、事実誤認があるとか、いろいろと批判する議論はこれまでもあった。 また、アーレント自身は意見の多数性を大切にする「活動」を重視し、あらかじめある抽象的な理論を現実に当てはめることに慎重な思想家であるはずなのに、現実的な状況に対する政治的な意見表明にあたっては、自分の理論フレームをそのまま現実に当てはめているという指摘もこれまであったと思う。 が、ガインズは、アーレントの黒人問題に関する発言を批判するにあたって、アーレント自身の理論を踏まえて、より本質的な批判をしている。つまり、アーレントの理論をちゃんと論理展開すれば、こういう発言にはならないはずなのに、アーレントに人種的な偏見があるために、アーレントのもともとの論理からして矛盾した発言になるという批判の仕方である。 さらに、そうした発言を通じて、アーレントの哲学的な理論自体の問題に入り込んでいく。対象とされているのは、アーレントの主著と言われるような本全体となっており、一部の議論をピックアップしての批判ではないところがすごい。 著者自身は、アーレントを否定したいわけではなく、全体主義の問題などを徹底して考えた人と評価しており、それをもっと発展させる可能性があるにもかかわらず、人種的な偏見によって、その可能性が十分に展開することができなかったというスタンスである。 とはいえ、全体を通して、著者の批判は本質的で、ここまで批判してしまうとアーレントの議論全体が揺るぎ始めているようにも思った。まあ、アーレントを守らなければならない義務が私にあるわけではないけど。 理論的な面では、著者の言っていることはもっともというか、そうだろうと思うことも多いのだが、私が問題となっている政治的な発言を昔読んだ時の感覚とは何だか違うところもある。うまく、説明できないが、例えば著者が批判する「リトルロックについての考察」の考察については、こうした発言は物議をかもすだろうことも分かるが、アーレントの言っている論点にも共感することがあった。つまり、これまで白人しか行っていない学校に公民権運動の流れで黒人も入学することになり、それを阻止しようとする人々との間で大騒ぎが生じるという事件である。アーレントは性急に黒人を白人の学校に入れることに消極的で、全体的に保守的、反動的とも言える立場を表明し、その中には、私も少し変だなと思うところもあるが、私がメインのメッセージとして受け取ったのは、社会変革のツール、コマとして、子どもを使うということの問題点であったと思う。社会変革は必要だし、変革の始まりは平和なだけではないものだが、そうした「大人の都合」によって、黒人の子どもが白人だらけの敵対的な状況の中で学ぶような状況を作り出すのが良いことかということだった。発言の細部を見れば、なるほど著者の指摘するような人種差別的な意識がアーレントにあることは否定できない。が、子どもを、あるいはもっと一般化して他者を社会変革のツール的に使うということの是非なのだと思う。 公民権運動は重要なことではある。それに主体的に取り組んだ人々の勇気には感銘する。が、どんな素晴らしい社会活動であれ、何らかのイデオロギーの実現に向けて、必ずしもボランタリーとはいえない形で、他者が使われるということの危険性というものはある。しばしば、極端な発言もあるものの、アーレントは基本、全体主義的なものに反対するということが彼女の圧倒的な優先順位としてある気がして、そのあたりところがアーレント理解にとっては重要なんじゃないかと思った。 やや分裂的なコメントになったが、それだけこの本のインパクトが大きくて、まだまだ消化不良状態ということで。

Posted by ブクログ