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虚史のリズム
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 集英社 |
| 発売年月日 | 2024/08/02 |
| JAN | 9784087718393 |

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商品レビュー
4.4
11件のお客様レビュー
1065ページ!何とかならんか!これに尽きる。 いくら興味深いからといっても、さすがに修行であった。 虚実ないまぜ、時空は歪み、面白げな登場人物が、太平洋戦争前後の世界を、日本を行き来するわけなのだが、三分のニくらい読み進んだところくらいから、何でもいいから早く決着をつけてくれ、...
1065ページ!何とかならんか!これに尽きる。 いくら興味深いからといっても、さすがに修行であった。 虚実ないまぜ、時空は歪み、面白げな登場人物が、太平洋戦争前後の世界を、日本を行き来するわけなのだが、三分のニくらい読み進んだところくらいから、何でもいいから早く決着をつけてくれ、という願いの方が、頭の中の想像世界を押しのけていたような気がする。 グランドミステリー以来の奥泉光。あの時はもっと夢中で読めていた記憶が。 脳が老いたかも。 恐ろしいことにあれは20年前の読書体験だったのだと知り、こっちの時空も歪んだ。
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A5判1095ページの巨編。 何度か中断しようやく読了。 「神器 軍艦「橿原」殺人事件」の続編か。 発端は、海軍上がりで探偵を自称するお調子者の主人公石目英二が山形の出羽庄内地方で遭遇した退役陸軍中将夫妻の殺害事件。 体裁はミステリー仕立てで、怪しげな「K文書」やGHQ、裏...
A5判1095ページの巨編。 何度か中断しようやく読了。 「神器 軍艦「橿原」殺人事件」の続編か。 発端は、海軍上がりで探偵を自称するお調子者の主人公石目英二が山形の出羽庄内地方で遭遇した退役陸軍中将夫妻の殺害事件。 体裁はミステリー仕立てで、怪しげな「K文書」やGHQ、裏社会、宗教団体などが登場し話は複雑化する。 もう一人の主人公神島健作は、捕虜収容所で石目と出会った元陸軍少尉で殺害された陸軍中将の弟で、復員後商大に復学している。 夢の中でフィリピン奥地の沼地を破れ案山子の成りで彷徨う神島の周囲には、鼠化した人間や鼠集合体としての人間が登場し、終いには神島本人も鼠化し未来から来た水谷澄江の孫久良々(こちらも鼠)と行動を共にする。 K文書は昆布谷なる人物による予知の書で、各勢力が所在を探している。 ここに来て本書は多元宇宙論やESPといったSF的要素を内包する。 ロンギヌス物質という超物質近傍で超空間が生まれ、別の人生、いわゆる「2周目の人生」に遷移するという。 本書では「第1(第2)の書物」、「かくり世・うつし世」と呼ばれる。 出羽の山中で皇祖神霊教が執り行う怪しげな神事と混乱。 ここまで道具立てをして、作者は本書で何を語りたいのか。 天皇の存在なくして日本は国家の体をなすか。 主体性を持たない鼠化した国民たち。 空虚な中心を妄信する人々の狂気。 澄江が語る「自由な国」。 ある意味本書のクライマックスは門馬元中将に投げ掛けられた澄江の言葉かもしれず、軍隊糾弾集会で何も語らず山中で一人木像を彫る地金ミノルは作者が提示するアンチテーゼにもみえる。 探偵を廃業する決心ヲした石目だが、愛しの卑弥呼さんこと鈴木奈緒美の誘いに、ドイツで失踪した女性ピアニスト(これも前作と関係?)の捜索に呆気なく乗り出す。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
あり得たかもしれない戦後史を陰画として描いた伝奇ミステリー。まずはモノとしての本の厚さに圧倒されるが、主役級の数名は言うに及ばず、次々登場する端役キャラに至るまで1人1人異なる味付けがされているところや風景事物の細部を描いて戦後の匂いがしっかり再現されているところ(特に下山事件を彷彿とさせる各種団体名には事件の臭いがプンプン)など注入されたエネルギーには恐れ入るしかない。 序盤どんどん話の風呂敷が広がり続けるなか、インテリ層による新憲法評価の議論に一つのクライマックスがあるが、そこから話がオカルト方面に転換して少しテーマを見失いそうになった。最後には再び本テーマに回帰するが個人的には最初の疾走感を維持したまま没入したかった。現代のシスターフッド的要素など後半の一連の流れと登場人物には著者自身本当に書きたかったことなのか疑問に感じて少し雑味を覚えてしまった。ただ現代っ子の鼠が国体論を振りかざす大蛇と対決する場面では、敵役の論理に借り物(21世紀のウツ先生によると〜)の論理で立ち向かう形となり、明らかに力不足を露呈して、小説としての成否とは別に、現代リベラルのひ弱さが見事に描かれていると受け取った。
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