公園の木はなぜ切られるのか 都市公園とPPP/PFI

尾林芳匡(著者), 中川勝之(著者)

• 販売会社／発売会社: 自治体研究社
• 発売年月日: 2024/06/03
• JAN: 9784880377667

商品レビュー

2025/04/13

【感想】

公園にカフェなどを出店することを民間企業に許可し、その見返りに企業には公園の維持費を負担してもらうPark-PFI制度。行政も民間もwin-winになり、環境と経済の両立に貢献するなら良い取り組みだなと、個人的に感心していた。

ところが、このPark-PFIに基づいて公園の管理を民間にゆだねた結果、いま全国の公園の木が相次いで切られているそうだ。本書はそのメカニズムについて、法制度や各地の事例を参照しつつ簡潔に解説、とても勉強になった。

良質な公園環境を低コストで賄えるなんて、そんな都合のよい話はないと反省。

【まとめ】

★ いま全国で、都市公園の管理を民間事業者にゆだねた結果、都市公園の木が切られる事態が広がってる。

★ 公園は本来、主権者である住民のもの。住民が公園に関心を持って声を上げることが大切。公園の多様な役割をめぐって、行政や学識経験者にくわえて市民自身も参加し、合意を形成していく努力が必要。

- 基本的に、民間事業者は利益を増やすために活動する。そのため、Park-PFIを導入した公園を管理する事業者は、①「特定公園施設」（園路、広場などの公共部分）の維持管理にかかる経費（毎年の樹木の剪定費用など）を削減するために、また②「公募対象公園施設」（カフェ、レストラン、売店などの収益施設）を増やすために、「公園の木を切る」。

- 1990年代以降の、新自由主義、小さな政府、参入規制の緩和といった一連の流れのなかで、公園にかぎらず、地方自治体の公共施設はしばしばPPP/PFIを活用して民営化されるようになった。

- 地方自治体の公共サービスが市場化テスト（官民の競争入札）などを経て民営化されると、受託した民間事業者は利益を確保する目的で、しばしばサービスの担い手を非正規・派遣に置き換える。

- 質が高くて経費が安い公共施設・公共サービスなどない。経費を削減しようとすれば質は下がるし、質を維持しようとすると経費も相応にかかる。

- 自分の住むまちでスタジアムやアリーナの建設計画が持ち上がったら、住民はその是非について、時間をかけて慎重に議論したほうがよい。

- 公園をめぐる問題は各地で起こっているが、公園の事業計画の決め方（意思決定プロセスにおける市民不在）や知らせ方（住民への周知が遅く、事業実施の直前に説明会）に問題がある事例が多い。