がん患者さんとご家族をつなぐ在宅療養ガイド 新版 豊かな療養生活をかなえる安心の1冊

地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報普及と活用プロジェクト(編著)

• 販売会社／発売会社: 日本医学出版
• 発売年月日: 2024/05/14
• JAN: 9784865770674

商品レビュー

2025/06/19

『#がん患者さんとご家族をつなぐ 在宅療養ガイド~豊かな療養生活をかなえる安心の1冊~』

ほぼ日書評 Day903

放送大学で選択している授業の副読本。直近で自分が入院・手術を経験したこともあり、こうした内容をより身近に感じることができた。
単に知識や情報を得ると言うよりも、いわゆる心構えの重要さが理解できた。

「高額な医療費が発生する場合でも、マイナンバーカードを健康保険証として使うことで、医療機関・薬局の窓口で高額な医療費を一時的に自己負担したり、事前に役所で書類申請手続きをしたりする必要がなくなります」（デジタル庁）といった制度もあるので、普段からアンテナは立てておいた方が良い。

手術後の回復期間や、大規模な機器を必要とする治療・検査等、入院・通院が必要なケースはもちろんあるが、あるところからは在宅療養としっかりと検討すべし。
住み慣れた環境や家族との触れ合い、身の回りのことは自分でやる暮らしが、療養にプラスの効果をもたらすことも期待できる。

何らかの介護が必要になることもあるが、その際、最初に相談すべきは「地域包括支援センター」が良い（これはDay709にも出て来たところ）。
その方面のより深い掘り下げは、「介護」をテーマとした書籍に譲るとして、本書では在宅医療でも意外にできることは多いと強調する。
在宅医がエコー等の機器は持参で検査してくれるし、点滴の針交換を自分でやっている（自分でできた）体験談も語られている。ただし、そのあたりは技術よりも気合い…みたいな話もあるようだが。

痛み…について。身体面での痛みやだるさ、息苦しさに加えて、社会面（仕事、人間関係、家庭、経済）、精神面（孤独感、苛立ち、鬱）、魂の側面（死への恐怖、罪の意識、人生の意味）といった様々な側面からの「トータルペイン（全人的苦痛）」を和らげられるようなアプローチが望ましい。
あえて点滴を止めることで、食欲が戻り、好きなものを食べることで得られる幸せもある。

一方で、家族の側が「介護疲れ」に陥るケースも。「レスパイト入院」と呼ばれる、病状の悪化よりもむしろ、介護から離れる時間を作ることを目的とした入院という選択肢もある。在宅医や支援チームとら相談すること。

最期の時。それが遠くないことを、本人は明確に気づいていることも多い。そのような場合には、葬儀のこと等、亡くなった後の相談をすることが不安を取り除くことにもつながる。
本当に死が近づくと、無呼吸の時間が増えたり呼吸が途切れ途切れになって喘いだりして苦しそうに見えることもあるが、本人は脳が徐々に低酸素になるため実は苦痛を感じていない。反応することは難しくとも、声をかけたり手を握ってあげたりすると、そのことはしっかり本人に伝わっている。

最期…の、その後。大切な人を失った家族など、遺されたの悲しみに対処するためのグリーフケア。悲しみや不安等の感情により積極的に向き合えるようにするための「グリーフワーク」と呼ばれる取り組みもある。

いずれ一度は訪れる「見送られる側」の立場を考えておくことは、見送る側に立った際の心構えはもとより、日々の生活をより充実したものにしたいという思いにも直結するものと感じた。

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