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焼き芋とドーナツ 日米シスターフッド交流秘史
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焼き芋とドーナツ 日米シスターフッド交流秘史

湯澤規子(著者)

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焼き芋とドーナツ 日米シスターフッド交流秘史

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 KADOKAWA
発売年月日 2023/09/28
JAN 9784041126493

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商品レビュー

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2024/06/10

 女性の近代史を、日常茶飯という観点から整理し、当時の女性の内面に迫った一冊、非常に面白かった。  特に近代における、産業革命からの働き方の変わり方、これが日本とアメリカで意外な接点があり、パッチワークキルトのように全体像が浮かび上がってくる。自分で稼いだお金で、自分の欲求のため...

 女性の近代史を、日常茶飯という観点から整理し、当時の女性の内面に迫った一冊、非常に面白かった。  特に近代における、産業革命からの働き方の変わり方、これが日本とアメリカで意外な接点があり、パッチワークキルトのように全体像が浮かび上がってくる。自分で稼いだお金で、自分の欲求のために使う、というのがどれだけ重要な事であったか。  骨太な一冊であるが、タイトルからは内容が想像しにくく、このタイトルにするのであれば、もっと間食に焦点を当てるべきで、結論も間食に持っていった方が良いのではないかとも思うが、この注目されない感じも、日常茶飯事なのだろう。

Posted by ブクログ

2024/03/11

タイトルにある「焼き芋」は近代日本の紡績工場で働いていた女性たちが工場内での食事以外に楽しみにしていた食べもの。 「ドーナツ」は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてアメリカの工場で女性労働者が日々食べていたもの。 タイトルが象徴しているのは、日米の女性工場労働者の生き様と主体性...

タイトルにある「焼き芋」は近代日本の紡績工場で働いていた女性たちが工場内での食事以外に楽しみにしていた食べもの。 「ドーナツ」は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてアメリカの工場で女性労働者が日々食べていたもの。 タイトルが象徴しているのは、日米の女性工場労働者の生き様と主体性の構築の歴史である。      代表的な人物を取り上げ、女性たちが固有の人格である「わたし」という主語で自らを語る術を身につけていった過程を紹介する。  第一部「日本の女性たち」の冒頭で取り上げるのは「女工哀史」で知られる細井和喜蔵の内縁の妻だった高井としを。彼女は女工の一人だったが、実質的には「女工哀史」のもう一人の執筆者だった。彼女が後に自身で書いた「わたしの女工哀史」には女工たちの日常生活世界が生き生きと描かれている。 女工の劣悪な日常生活が1911年の工場法公布以来、見直され、食事や栄養、福利の向上に向け第一歩が踏み出された。 女工を雇用した資本家代表の鐘淵紡績の武藤山治が「経営家族主義」や「温情主義」にとどまったのに対し、倉敷紡績の大原孫三郎は一歩進んで労使を対等とみる「労働理想主義」、「人格向上主義」を貫いた。 また、1918年、魚津で起きた米騒動での女性たちの言葉は全国各地の都市労働者、とりわけ男性たちの言葉へと変換され広く一般に知れわたり大きなマグマとなった。 明治初期、森有礼の渡米や津田梅子のアメリカ留学などの動きがあり、明治女学院が創設されたが、明治中期以降は「家父長制」や「良妻賢母」の台頭で新しい女子教育の芽が摘まれたのは残念だった。 第二部の「アメリカの女性たち」では、産業革命期のアメリカ工場女性や「小公子」のバーネット、「若草物語」のオールコットといった著名な作家、女性化学者の草分け・エレン・スワロウ・リチャーズなどが紹介される。 中でも、エレンが創設に関わったウッズホール海洋生物研究所は留学した津田梅子が生物学に目覚めるきっかけとなり、日米の女性の知られざる交流の歴史として興味深い話だった。 この他、女工たちが共同組織を作り雑誌を発行していたり、西部開拓の前線でコミュニティ形成に尽力したり、食と教育の改革に取り組んだりした女性たちの話もあった。 とにかく、労働者である女性が、生身の人間として、「わたし」を獲得し、「わたしたち」を生きようと奮闘する姿がうねりとなって いく様子が強く伝わってきた。 だが、心情を吐露すると、圧倒的な数の参考文献に裏付けられた著者の研究心の深さ、力量、骨太の内容になかなかついていけず、消化不良に終わってしまったというのが正直なところである。

Posted by ブクログ

2023/12/03

テーマは「働く女性の日常茶飯 in 近代日米」(漢字多…)といったところか。 有名無名問わず、歴史上語られてこなかった女性たち、”彼女たち”の生の声がいくつも取り上げられている。名前を再掲されたら何とか思い出せる程度であるが、取り上げる範囲が広すぎて把握するのに難儀した…というの...

テーマは「働く女性の日常茶飯 in 近代日米」(漢字多…)といったところか。 有名無名問わず、歴史上語られてこなかった女性たち、”彼女たち”の生の声がいくつも取り上げられている。名前を再掲されたら何とか思い出せる程度であるが、取り上げる範囲が広すぎて把握するのに難儀した…というのが本音。 でも歴史上スポットが当たらなかった…ではなく、当てられてこなかった事実なだけに、どの話も興味を掻き立てられた。 第一部「日本の女性たち」 『女工哀史』や米騒動で伝えられた女性たちの生き方が教わったものと違う。只々労働の辛さに打ちひしがれ、あるいはまるで本能のままに米問屋を襲撃したと言われる姿が1ミリも見当たらないのだ。 『女工哀史』の筆者 細井和喜蔵は内縁の妻だった高井としををモデルに女工を描写した。しかしあくまで登場人物の一人であり、としを自身の言葉で語られることはなかった。本書の言葉を借りれば、「『わたし』という主語の不在」ということになる。 しかし後の聞き取りで明かされたところによると、としをは空いた時間に読書や短歌を嗜むという非常に向学心の高い女工だった。労働集会でも積極的に発言し、そこで工場食の改善を訴えた。(ちなみに採用された驚) 富山の米騒動は話し合いで済んだという。70名ほどの女性が店の前に集まり店主に嘆願していたのを米穀店の娘が見聞きしていた。その後店主は速やかに救済に動いたそう。 逆に大都市にまで波及していた米騒動は、アナキストの力が働いて全国的にエスカレート。実状は富山の分も含め、民衆暴力に訴えた「男性の言葉」に変換されていった。 「新らしい女は多くの人々の行止つた処より更に進んで新しい道を先導者として行く」 第二部「アメリカの女性たち」 津田梅子の視点を交え、現地の女性問題を分析。新しい女性の生き方を示した女流作家の紹介も、読書好きとしては嬉しい。それに日本ほど「わたし」「わたしたち」が制限されていなかったことも。 そして、ここでもフォーカスされるのは日常茶飯である。 自分同様、本書のタイトルが気になった方も多いと思う。焼き芋は、日本の女工たちが間食として休日に好んで購入していたもの。一方ドーナツは、アメリカの工場労働者(大半が女性)にとって主食同然だった。 働く”彼女たち”の胃袋に欠かせないものに変わりはないが、後者は明らかに栄養面において危うい。その問題を解決すべく、アメリカではエレン・スワロウ・リチャーズという女性科学者が、安価で栄養価の高い料理を提供する「パブリック・キッチン」を開設している。 「『少なくともここでは孤独ではない』と確認する場、つまり、孤立した胃袋が、集団のなかで居場所を見つけた胃袋となる場であった」 ここで語られる日米の”彼女たち”は日常茶飯をしっかり見据え、下手すれば男性以上に思慮深かったといえる。偏った歴史観が綿々と語り継がれているのは情けないこと。 何かを学んだ際は、著者の言う「対岸の歴史」も気にしていかないと…と肝に銘じた一冊だった。

Posted by ブクログ

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