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蒸気駆動の男 朝鮮王朝スチームパンク年代記 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
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蒸気駆動の男 朝鮮王朝スチームパンク年代記 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ

アンソロジー(著者), イ・ソヨン(著者), チョン・ミョンソプ(著者)

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蒸気駆動の男 朝鮮王朝スチームパンク年代記 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ

定価 ¥2,860

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 早川書房
発売年月日 2023/06/20
JAN 9784153350601

蒸気駆動の男

¥1,980

商品レビュー

4

5件のお客様レビュー

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2024/05/01
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※このレビューにはネタバレを含みます

韓国で活躍するSF作家が飲み会で集まった時に盛り上がったネタをもとに製作されたのが本作『蒸気駆動の男: 朝鮮王朝スチームパンク年代記』だ。タイトルにある通り、”もし韓国の歴史に蒸気で動く人間がいたら?”という歴史ifモノで全部で5人のSF作家が参加している。形としてはアンソロジーに近い者だが、共通の設定や歴史年表を最初に設定してから各作家が書き進んでいったらしく、全体としては統一した世界観のもとで話が折り重なっていく。 本作はタイトルに「スチームパンク」という文字が入っていることから自分が想像したように、”蒸気によって文明が支えられていた架空の韓国”を舞台にしているわけではなかった。確かに全ての短編で蒸気機関は登場してくるのだが、この劇中世界では蒸気機関が全面的に活用されるわけではなく、時々の政治状況によって利用が活発になったり弾圧されたりする。その振り子のように揺れる方針が、宮廷内における政治闘争が激しく、王たちが派閥均衡のために政策を変えてきたという韓国の歴史とうまくリンクしているところが本作の仕掛けの上手いところだ。 その方針の揺れが最も端的描かれているのが、冒頭に配置されているチョン・ミョンソプ『蒸気の獄』だ。この作品では、16世紀に実在した政治家趙光祖(チョ・グァンジョ)の政治的な失脚と死が、実は蒸気機関を積極的に推進したためだったという”秘密”が明かされる。劇中では「蒸気の獄」と呼ばれるこの政変は、実は朝鮮の歴史ではしばしば見られたように、国王がうまく反対派とのバランスを取るために彼を切り捨てたことによって起こったのだった。 この趙光祖の死が示すように、この「蒸気駆動の男」の世界では蒸気機関というのは意思を持たない物が活動を行ったり、あるいは動きを見せるということで、朝鮮における根本的な価値観(少なくとも建前の上では・・)とされる儒教とは相容れないものとされている。そのため、蒸気の利用は明らかに利便性があることがわかっていても、政治的に弾圧がされやすい状況にあるのだ。 その弾圧の強さと悲劇を描いているのが、キム・イファン「「朴氏夫人伝」」のイ・ソヨン「知申事の蒸気」だ。前者は蒸気を使って鍛治を行っている民間人、後者は蒸気によって動く汽機人が主人公になるという違いはあるとはいえ、いずれも蒸気を用いていることが最終的には弾圧の理由になってしまうという悲劇を引き起こしてしまう。 ちなみに後者の実質的な主人公になる汽機人「都老」は劇中を通じて登場するキャラクターで、朝鮮の蒸気を用いる仮想歴史の裏側で常に活動をしている狂言回しのような役割を担っている。ある短編では人間に蒸気利用の方法を教えたりする存在し、他の短編では宮廷で自らが活動をするのだが、その正体や出自は最後まで明らかにならない。 最初に書いたように本作は全部で5篇が収められており、上に紹介した以外には、蒸気を用いて奴婢の立場から抜け出そうと試みる主人公を描いたエジン「君子の道」と、ある地方都市を騒がせる呪いの正体が蒸気機関であるというミステリー仕立ての作品、パク・ハルの「厭魅蠱毒」が収められている。 本作で取り上げられている歴史イベントは韓国の歴史でも有名な話が多いため、、例えば21代英祖とその孫で正祖となるイ・サンの物語に裏側には、実は名も知られぬ蒸気で動く男がいた・・という設定だけでニヤリとしてしまうだろう。とはいえ、韓国の歴史を全く知らなくても各短編の設定がしっかりしているため、読者は物語にあっという間に引き込まれることは間違いない。

Posted by ブクログ

2024/03/05

無難におもろいけどジャンル自体に内在するおもろさであって特に目新しくはない 朝鮮の歴史に親しみを持つためのみちびきとしてよかった

Posted by ブクログ

2024/02/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

装丁がとてもすてき。 都老は名前が出てくるだけであったり、あるいは案内者的な立ち位置で一瞬登場するだけであったりと、舞台道具的な立ち位置。しかし、最後の一編でそれが覆された感があった。国栄は、自身に人間的な内面はないと考えている(というかそもそもその有無すら意識していなさそう)。しかし、周囲の人間の目には国栄が私情に基づいて行動していると見える(がゆえに王は処分に踏み切る)し、国栄が認識していないものを提示される読者の目にも、そこに人間的な内面があるように映る。結局、それがただ機械を擬人化して捉えているに過ぎないのか、あるいは本当に「人間性」が芽生えていたのかはわからないが、この人物がアンソロジー全体を繋ぐ経糸だったのかという驚きが残る(全ての都老が同一個体だとは言い切れないにしても)。そこにアンソロジー全体の構造のうまさがあると思った。 あとは、突き詰めた合理性が人からどのように見做されるのかっていう話でもあるのかな。そのあたりはカミュの言う不条理につながるのかも。

Posted by ブクログ