腐ったテレビに誰がした？ 「中の人」による検証と考察

鎮目博道(著者)

• 販売会社／発売会社: 光文社
• 発売年月日: 2023/02/22
• JAN: 9784334953638

商品レビュー

2023/07/10

テレビプロデューサーである著者が、テレビ放送界の問題点と提言をまとめたもの。テレビ放送界の内部の人だけに、問題点がよく見えており、内容は具体的で説得力がある。ネットやＳＮＳなど、通信業界の勢いに押されがちで、苦境にある状況がよくわかった。可能性は大きいものの、以前の栄光に縛られており、改革は難しいように感じた。

「（番組は、ニュースとワイドショーだらけになっている）ニュース番組の基本は「ニュースを伝えること」ですが、じつは最近、ニュース番組では「ニュースでないもの」を伝える時間がどんどん長くなっています。なぜかというと、それは「ニュース番組自体がどんどん長くなっているから」です。ニュースだけでは時間が埋まらない、となっているのが現状です（ニュースに対する意見や感想、コメンテーターやゲストが時間を埋めている）」p12
「ワイドショーでは「視聴者の共感」を大事にする」p14
「意外かもしれませんが、テレビ番組の中では生放送番組は比較的安く制作できる番組です（ドラマが一番高く、次はバラエティ（ギャラが高い））」p18
「朝から夕方の時間帯にテレビを見ている高齢者は時事問題に関心が高いので、とにかくニュースやワイドショーが好きなんです。だから、ニュースやワイドショーさえやっておけば安易に視聴率が取れます」p20
「テレビ局の社内で「SNSや動画サイトなどの投稿をウォッチして、いい映像を探す」専属チームを組織するようになりました。映像は「自ら撮る時代から探す時代へ」変わってきたのです（これでは、通信業界にかなわない）」p27
「こんなことを続けていては、「テレビはネットのまとめサイト」という皮肉な状況が定着してしまい、「テレビは情報が遅くて、信頼性も低い」という悲しい状況になりかねません。これでは若者がテレビを見なくて当然です」p29
「ニュースは視聴率競争の中で、「他局より長いほうが視聴者が増える」ということでだんだん放送時間が伸びていき、ワイドショーの手法を取り入れて演出の要素やスタジオトークの時間が増えていって「ワイドショー化」していきました」p36
「いまワイドショーやニュース番組では、若いスタッフの取り合いになっているらしいです。巨匠っぽいオジサン・ディレクターに凝ったVTRをつくってもらうより、若者に気の利いたパネルをささっとつくってもらったほうが「視聴率に響く」わけですから、私がプロデューサーでも若いスタッフのほうが欲しいです」p46
「（日本のドラマは国際基準に合っていない（番組が短い））単純計算すると、韓国ドラマが16話×70分で1120分。日本ドラマが11話×50分で550分ということになり、日本のドラマは韓国ドラマのおよそ２倍速でストーリーを展開させて完結させなければならないことになります。これでは「日本のドラマより韓国のドラマの方が、見ごたえがあるし描写も深い」といわれても当然ではないでしょうか」p61
「日本のテレビ制作現場はどこもブラックで、悪条件・低賃金でもがんばるスタッフたちに支えられています」p65
「なんとかまともな金額のドキュメンタリー番組はNHKくらいで、民法はほぼお話になりません（長時間にわたり取材ロケを継続できない）」p66
「NHKは公共放送なので、民法に比べて働き方改革や労務管理、ワークライフバランスへの配慮がかなりしっかりしていて働きやすく、さらに、スキャンダルからもちゃんと守ってくれる仕組みがあります」p129
「NHKの公務員的ガードの固さが、飲食の場における女子アナへの「悪い接近」を防いでいます。こうしてNHKの人気女子アナたちは、スキャンダルから強力にガードされているわけです」p130