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招かれた天敵 生物多様性が生んだ夢と罠
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2023/03/14 |
JAN | 9784622095965 |
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招かれた天敵
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商品レビュー
4.8
4件のお客様レビュー
世の中には部屋の中でもアトラクション気分を味わえる本ってのがたくさんありますよね。 これもそんな本。内容は決して簡単ではないけれど書き手の知識とストーリテラーとしての能力で読ませるんだなぁ。 まずタイトルからしていい。偶然動植物やコンテナについて来ましたよーではなく、人間が「故...
世の中には部屋の中でもアトラクション気分を味わえる本ってのがたくさんありますよね。 これもそんな本。内容は決して簡単ではないけれど書き手の知識とストーリテラーとしての能力で読ませるんだなぁ。 まずタイトルからしていい。偶然動植物やコンテナについて来ましたよーではなく、人間が「故意に」「良かれと思って」「よりによって」導入した外来種の罠(当初夢見た物語と隠れた罠という方が正しいですかね)を冷静かつドラマチックに紹介していく。 メインから外れた小さなエピソードながら心にチクっと刺したものがある。第4章「夢よふたたび」の中のものだ。オーストラリアでの毒蛇対策として、またネズミ対策として持ち込まれたアナウサギが増殖しすぎたため、大量のマングースが放たれた。外来天敵を駆逐するためにまた大量の外来天敵を。。ということでオーストラリアの生態系に深刻なダメージを与えそうなものだが、オーストラリアの気候がマングースの生育にマッチしなかったことに加え、アナウサギの捕獲と駆除を請け負っていた業者が自身の雇用保全のためにマングースを放った側から駆除したためとのこと。 (10章のアフリカマイマイも似た話) まさに第4章冒頭で紹介される「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」だ。 成功は時に他人の悪意が功を奏した偶然の結果だったり。そうよね。てかそうなの。世の中。人生。 また第6章、英国からハワイに学術調査のため派遣されたナチュラリストの昆虫学者は、自身の名を冠した昆虫がオーストラリアからハワイに輸入されたサトウキビについて被害を出していたため、害虫駆除の任を得る。 ここも巡り合わせの不思議。人生。 物語が展開する場所的にも割かれたページボリューム的にもここが山場か。第7章「ワシントンの桜」米国農務省昆虫学者チャールズマーラット(1863-1954)とスタンフォード大昆虫学者桑名とのナシマルカイガラムシの原産バトル、米国農務省植物学者デヴィッドフェアチャイルド(1868-1954)の2000本桜、国務長官と日本政府のやりとり、東京市長のジョークなど「直接聞いた?」的に実に生き生きと描かれている。 特にマーラットの半年に及ぶ日本各地の調査記録は瑞々しい表現力で、当時の一般の日本人の姿が差別なく描かれていて読んでて楽しい。(と、何も考えないパッパラパーの日本人の私は自慰感覚で読めます。がしかし。後半で作者はこれらの描写を「当時の米国上流階級のロマン主義的な影響を割り引くべきだし、これらの自然な姿は安価な労働力と膨大な作業量に支えられており、自然と調和した美しい景観は貧困、過酷、疫病、危険と一体である」としている。) 幸運による成功も賞賛すべき。但しそこから何かを学ぶのは控えめに。我々が学ぶべきところな必然の失敗である。 第10章11章は著者自身の小笠原諸島で経験した固有種を絶滅に追いやる天敵との死闘を詳細かつドラマチックに書く。 「天敵導入(もしくは駆除)の壊滅的な失敗の歴史」を通じて生態系への理解の変遷を教えてくれるとともに「自然のバランスなんて便利なもんはねぇ」と結論。 毎度毎度これを結論に書いて申し訳ないがこの本も中高生に是非読んで欲しい。 「自然のバランスなんてないよね(あるかも知れないけれど人間になんて分からない→絶対に理解できないならないも同然では)」「ルール無用、生態系の複雑極まるメカニズム」「20世紀後半であっても驚くスピードでの絶滅(人間加担)」これだけでも十分ですがもっと具体的かつ細かいことでは、小笠原諸島でのニューギニアヤリガタリクウズムシが防護壁に流れている電流で胴体が焼かれた際、頭が胴体を食い引きちぎって頭だけ柵の向こう側に落ちて身体を再生&繁殖って読んだだけで、この世はルールや計画なんてなさそうだなーなんでもありの無差別試合だなーと少なくとも一神教の訳の分からないものに不必要に傾倒するリスクを軽減出来るのでは。(カタツムリの生態を落ち着いて考えても似たような感想ですねどね)
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様々な理由で「人間の手によって」世界中を行き来させられてきた生物たち。主に農作物を害虫から守る「生物的防除」をテーマに、移入種たちがどのように広がり、成功を納め、あるいは失敗し、現代に至ったのかをたどる。 生物たちは自己の遺伝子を地理的に拡散する宿命を帯びています。ですから広が...
様々な理由で「人間の手によって」世界中を行き来させられてきた生物たち。主に農作物を害虫から守る「生物的防除」をテーマに、移入種たちがどのように広がり、成功を納め、あるいは失敗し、現代に至ったのかをたどる。 生物たちは自己の遺伝子を地理的に拡散する宿命を帯びています。ですから広がっていくわけですが、そこに人為的な要素があると移入種と定義されます。本書はこの移入種が発生する経緯と経過と結果についてまとめたもので、大変に興味深い内容でした。 まず生物的防除が19世紀には始まっていたことはけっこう驚きでしたし、そこに至る思想的な変遷も(宗教が絡んでいたりして)驚くべきものでした。移入に失敗したケースの多くは科学者が「慎重にすべき」とした移入を有無を言わさずやってしまう政治的な圧力だったりするのもとてもやな感じで、進歩しないヒトの社会を痛感したりしました。また、例えばアメリカで大被害をもたらした日本のマメコガネ(Japanese Beatle)が第二次大戦の際に日本憎悪のためのシンボルとしても用いられるなど、移入種による災厄が差別やイデオロギーに利用されていたというのも注目したいところです。 最後に著者本人が関わった小笠原の生態系保全のための移入種対策については迫真のドキュメントで、人間の罪深さを噛み締めるエピソードになっていました。 要所要所では非常に重要な指摘や提言があるのですが、何しろ語られるジャンルが広範なのでどれもこれも興味があり、ノートとか取りながら読まないと何が書いてあったか忘れがちになってしまうところは注意が必要です。 日本を含めて世界中の多くの地域で地域の生態系に影響を与える移入種問題は頭の痛い課題となっていますが、多くの場合は解決に至る道筋すらつけられないのが現状です。こうした現状の何が問題なのかについて、非常に中立的に論じているのも印象的で、例えば化学農薬(化学的防除)を否定せずに総合的な観点から対策を提言するあたりなどは大変に同意できました。 もうひとつ、こうした提言も含む科学的な問題というのは専門書に近く、読みづらいのが定番ですが、この本については、たとえばある科学者が世界中を新婚旅行ついでに調査してまわったリア充エピソードが長々と語られてなんじゃこりゃ、と思っていたところ、その後の展開で見事に回収されたりとか、たくさんの登場人物が出てくるけどキーマンを絞っていて科学者の系譜がわかりやすかったりとか、人柄まで感じられる人物描写だったりストーリーテーリングが上手だったりして読みやすい本になっているのが素晴らしいところだと思いました。(とはいえ、生態学が好きじゃないと読みこなすのは大変かも)。 移入種や生態学に興味のある方はぜひご一読ください。レイチェルカーソンの名著、「沈黙の春」と一緒にどうぞ。
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重厚な内容だった。 応用昆虫学の系譜を辿る 進化論の系譜とはまた違う、政治色もある人間と生きものの歴史 きっかけとして知るカーソンの主張には偏りはなかった 追求する科学者たち。時々現れる類稀な彼らは自然の記録者であり、かき回された世界の調整者を目指した その探究劇にはロマンを感じ...
重厚な内容だった。 応用昆虫学の系譜を辿る 進化論の系譜とはまた違う、政治色もある人間と生きものの歴史 きっかけとして知るカーソンの主張には偏りはなかった 追求する科学者たち。時々現れる類稀な彼らは自然の記録者であり、かき回された世界の調整者を目指した その探究劇にはロマンを感じる 科学を明らかにすることと、そこに住む住民の意思はまた違っていた。住民から生まれた政治は切実でありながら暴走した。 その点、最後のカタマイマイの話の中には希望もあった。
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