- 中古
- 書籍
- 書籍
顔のない遭難者たち 地中海に沈む移民・難民の「尊厳」
定価 ¥2,200
825円 定価より1,375円(62%)おトク
獲得ポイント7P
在庫なし
発送時期 1~5日以内に発送
商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 晶文社 |
発売年月日 | 2022/11/14 |
JAN | 9784794973368 |
- 書籍
- 書籍
顔のない遭難者たち
商品が入荷した店舗:0店
店頭で購入可能な商品の入荷情報となります
ご来店の際には売り切れの場合もございます
オンラインストア上の価格と店頭価格は異なります
お電話やお問い合わせフォームでの在庫確認、お客様宅への発送やお取り置き・お取り寄せは行っておりません
顔のない遭難者たち
¥825
在庫なし
商品レビュー
5
5件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
不法移民の船が地中海へ相次ぎ沈んでいると、度々ニュースで目にしていた。ぼんやりと、遺体は母国に送り届けられるんだろうなあ、などと考えていた。本書を読み、それがあまりに甘い見通しであることを痛感させられた。 遺体の氏名を同定し、然るべき遺族へと繋げること。言うは易しだ。実際にそれをなすには、生前データと死後(検死)データのマッチングが必要でる。国内の身元不明死体でも、それをしっかりこなすのは簡単では無い。増してや、移民ともなれば尚更だ。 生前データの収集を巡る困難について。例えばリビアでは、家族が移民船に乗ったことが当局にバレれば、残された家族はムショ送りなのだという。そんななかで、母国に「この死者の家族の情報をください」などと公的に助けを求められるはずもない。そのため本書では、コミュニティを介した「クチコミ」で生前データを収集している。それでも少なくない難民が、家族や友人の消息を尋ねて遠くミラノまで来るのだと言うのだから痛ましい。 死後データを巡る困難について。検死は労力も専門性も、時間的制約も大きい。何百人もの移民の遺体に、その労力を掛けるのか? 誰が法医へ賃金を支払うのか? DNA鑑定が必ずしも万能ではない、というのも面白い視点だった。DNA鑑定以外の鮮やかな鑑定方法については、ぜひ本書を実際に見ていただきたい。 本書を通じて、法医学者達の高い職業倫理に強い感動を受けた。この大きな問題に、熱意を持って(決して恵まれない資金状況のなか)取り組んだイタリアの法医学者達に心から敬意を表する。 本書の取り組みが、発展的に実を結ぶことを切に願う。地中海移民は現在進行中の大きな問題である。この問題は本書に登場するような法医学者達の「熱意ある働き」だけで解決できようもない。いずれもっと国際的視野で持って解決を図るべきだろう。 自らの死後も尊厳を持って扱われ、家族や友人に悼んでもらえるであろうという希望があってこそ、ひとは自分の命を、他人の命を大事にできる。死者の尊厳を守る。「死者に名前を与える」ことは、ひとが人として生きていく上での第一歩、見過ごしてはならない権利なのだと思う。
Posted by
数ではなく名を。憐れみではなく尊厳を。 「遠く」の死者の無関心さ、無意識での無関心について考えた。数字だけで終わる、処理されてしまう大多数の個人の歴史・家族。想像がつかない過酷な世界から安心して暮らせる世界へと死を覚悟して出航して亡くなっていった人々が、死してなお軽んじられる。...
数ではなく名を。憐れみではなく尊厳を。 「遠く」の死者の無関心さ、無意識での無関心について考えた。数字だけで終わる、処理されてしまう大多数の個人の歴史・家族。想像がつかない過酷な世界から安心して暮らせる世界へと死を覚悟して出航して亡くなっていった人々が、死してなお軽んじられる。 自分の大事な人、家族、友人がもしかしたら亡くなったのかもしれない。おそらく亡くなったのだろう。けれど確証がない。事実がない。証拠がない。事実を得るための力も自分にはない。書いているだけでも底のない真っ暗な沼の中に入ってしまいそうな絶望。 今現在(2023年11月)に起こっているイスラエル・パレスチナ問題にも通づる。ニュースで「この爆撃で約〜人が亡くなりました」。 数字はなんて楽で残酷なんだろう。1の中の歴史を無にしてしまうのだから。私もその事をわかっていても「犠牲者が多いなぁ」と思ってしまう。 人権について真に理解出来ていない。同じ人間だと、仲間だと思っていないから安易に数字で表せるのだろうか。数字は悪では勿論ない。が、命の安易なカウントのニュースに心が痛む。この活動(失踪者の同定)が世界各地で当たり前のように起こせるようになっていきますように。全ての命が重んじられる世界へなっていきますように。
Posted by
アフリカの国々から、地中海を渡りヨーロッパに迫害を逃れる人々がいる。 その粗末で小さな避難船に、許容を遥かに超える人々が乗船しているため、一度転覆でもしようものなら、被害は甚大だ。 『顔のない遭難者たら』の著者であるクリスティーナ・カッターネオは、地中海に沈んだ移民の遺体に「名...
アフリカの国々から、地中海を渡りヨーロッパに迫害を逃れる人々がいる。 その粗末で小さな避難船に、許容を遥かに超える人々が乗船しているため、一度転覆でもしようものなら、被害は甚大だ。 『顔のない遭難者たら』の著者であるクリスティーナ・カッターネオは、地中海に沈んだ移民の遺体に「名前」を与え、「曖昧な喪失」に苦しむ人びとを助けるために奔走しているイタリアの法医学者。 法医学者は「名もなき死者」の身元を、指紋鑑定、遺伝学、歯科医学の3つを主たる手段として探っていく。 また著者が勤務する「ラバノフ」には、人類学者や考古学者も籍を置き、それを遺体の同定に役立てている。 本書では、犠牲者が多かった2013年10月と2015年4月の2つの遭難事故に焦点が当てられているが、悲劇はそれだけではないことを理解しておく必要がある。 国際移住機構の報告によれば、2000年から2016年までに、少なくとも22,400人が地中海で没しているとのことだ。地中海は、移民・難民にとっての「集団墓地」と言われながらも、未だに決死の航海は跡をたたない。 欧州移住に成功した人々が、残された家族をアフリカから呼ぶケースがある。そして突然難破したと知らせを受ける。しかし、その目で遺体を見たわけではない。その手で遺体に触れたわけではない。 我々がその当事者であったなら、自分にとってほかの誰よりも大切な人がもうこの世にはいないという事実を、本当に受け入れられるだろうか。海に沈んだ遺体が回収され、損傷が激しいのであれば科学的な同定(身元特定)が行われ、それがほんとうに愛する家族の亡骸なのだと判明するまで、心から納得することはできないのではないだろうか。 「確かさが得られないこと」の苦しみを、今日の心理学は「曖昧な喪光」と呼び、鬱やアルコール依存を招きかねない危うい心理状態として注意を促しており、現在の欧州には、この「曖味な喪失」に悩まされる移民が、数万、数十万の規模で存在しているとのことだ。 人間が死しても、それに敬意を払い、遺された遺族への配慮も怠らない。素晴らしいと言う言葉では言い表せない。 またその一方で、ロシアによるウクライナの侵略と虐殺、イスラエルのパレスチナ人への過度とも言える報復、ミャンマー軍事政権の民主運動家殺害など、世界の中では命の重さが、こうも違うのかと思わせることが続いている。 深く考えさせられた。 ちなみに、移民・難民の収容所があるランペドゥーザという小さな島の島民には、移民・難民の悲惨な現実が見えていないらしい。 敢えて見えないようにしているようだ。 しかし、この島の人たちを非難することは、出来ないのかもしれない。 それも複雑で深い問題だ。
Posted by