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いきている山
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | みすず書房 |
発売年月日 | 2022/10/19 |
JAN | 9784622095293 |
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商品レビュー
4.3
7件のお客様レビュー
20世紀初頭、スコットランドのケアンゴーム山郡にくり返し登り、ヘザーの茂るプラトー(高原)を散策し、天候や四季ごとの色彩や樹々が放つ芳香に魅せられ、野生動物たちと山の同一性を見つめる。「フェイ」の感覚に取り憑かれ、〈山の内側〉へ迫ろうとした作家によるネイチャーライティング。 ...
20世紀初頭、スコットランドのケアンゴーム山郡にくり返し登り、ヘザーの茂るプラトー(高原)を散策し、天候や四季ごとの色彩や樹々が放つ芳香に魅せられ、野生動物たちと山の同一性を見つめる。「フェイ」の感覚に取り憑かれ、〈山の内側〉へ迫ろうとした作家によるネイチャーライティング。 山にも自然にも大した興味はないけれど、ネイチャーライティングを読むのが好きだ。それは自然を愛する人たちの感覚を通して抽出される言葉の世界が、私にとって一種の幻想世界に感じられるからだと思う。 霧と雲が見せる恐ろしい白の闇。セントジョンズワートの茎が水のなかで灯す光。葉が落ちると紫に輝きだすカバの木。「燃えかす色の雲」、「見るものすべてがウイスキーの黄金色に輝く日」……。「私たちが色を見ているのではなく、まるで色がその実体の内部に私たちを取り込んでいるかのよう」という秀逸な表現そのまま、読者は山の色彩に引き込まれていく。ジュニパーやカバの木が放つ香りを綴った文章は、上質な酒のように味覚と嗅覚を刺激する。「鳥、哺乳動物、爬虫類——そのすべての要素が鹿には入っている」という動的な形態の捉え方も、山で対峙した人の目だと思った。 本書が素晴らしいのは、透明度の高い湖を素裸で泳ぐときに感じる畏怖の感情や、ヘザーの季節に体が花粉まみれになっていく感覚などの体感がぞわぞわするほど伝わってくるのに、筆致がどこまでも理知的なことだ。山と生き物たちが見せるマジカルな瞬間に何度も立ち合い、山と同化するかのような「フェイ」の感覚について語りながらも、シェパードの語りはスピリチュアルに転んでいくことがない。それがまた彼女自身「プラトー」であるかのようなのだ。 シェパードがこの原稿を書いた1930年代、独身の女性が野外で寝たり、全裸で泳いだりした経験を書くのはどんな意味を持っていたのか。原稿が出版社から突っぱねられたのはそうした世間の目とも無関係ではなかっただろう。そんな偏見との闘いは存在しないかのように、シェパードは山との交感を不純物なしで描きだすことを選んだ。 肉体的な感覚を通じて山と触れ合う喜びが伝わってくる文章を、つい「官能的」と表現したくなってしまう。だが、その裏には"本来女性が公に語るべきではないことが語られている"というニュアンスが含まれているのではないか。しかし、男性が躊躇もなくシャツを脱いで水浴びをするように、シェパードにとっても身体感覚を通して語ることは当然のことだったのだと思う。前近代なら彼女のような人が魔女と呼ばれたのかもしれない。
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スコットランド湖水地方の登山 淡々とした文章 風景の透明さ(自分の思い込み?)が筆致に表れていると感じられる
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知らない固有名詞が多くて読みにくさは感じたけれど、過酷な環境で生きる木や草花、動物への敬意と親しみや、壮大な自然への愛と憧憬があふれた、詩的で哲学的で美しい文章だなと思った。
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