事件は終わった

降田天(著者)

• 販売会社／発売会社: 集英社
• 発売年月日: 2022/08/26
• JAN: 9784087718065

商品レビュー

2024/11/01

以前読んだ「偽りの春」がおもしろかったので
手に取ってみた一冊。

電車内での無差別殺傷事件に巻き込まれた人々は
その後の生活をどんなふうに送っているのか？
を描く６つの物語。

良く言えばバラエティに富んだ、
悪く言えば少々とっ散らかった印象。
それぞれの話に緊迫感もあり、先が気になる内容ではあるものの、なんか最後はどの話もさらっとハッピーエンド、みたいなまとめ方が
わたしには物足りなさを感じたかな。

おもしろいのは最初の事件の章が00と表記されていて、そのお話だけが書き下ろしとのこと。
事件の部分はあとから書かれたってこと？
うーむ、不思議。

2024/09/30

電車内で男がナイフを振り回し、70代の男性が死亡、複数の負傷者が出た『地下鉄S線内無差別殺傷事件』。犯人は警察によって取り押さえられ事件は終わった。男が暴れる車内から逃げ出した乗客、死亡した男性に庇われた妊婦、事件当時の記憶がない高校生など、電車内に乗り合わせた乗客たちやこの事件に関わる者たちのその後とは…。
小田急線・京王線での刺傷事件を思い起こさせる内容だった。動画を撮影していた人間がいて、映像が物凄いスピードで拡散されていく。現場にいなかった人間には何も言う権利なんて有りはしないのに、車両から真っ先に逃げ出したことで責められる男性は今の時代らしいエピソードだなと思った。
自らを庇った男性が亡くなったこと（それ以外にも理由はあるのだが）に責任を感じる妊婦さんの話が辛い。死亡した男性はどんな人で何を考えていたのか、最後のエピソード「壁の男」でようやく明らかになる。本当に衝動というか、男性なりの理由はあるだけれど、正義感で助けようと思って行動したとかじゃないのが人間っぽさを感じた。
テニス部と報道部の高校生の話以外はちょっと不思議な話。全体的に救いがある話でよかった。

2024/09/10

犯人の動機には触れず、ひたすら事件に関わった人のその後を描くオムニバス。

幽霊や特殊能力など、割となんでもありな真相もあって面食らったが、そこに至るまでの心情描写や伏線はしっかりしていて、読みながら作風に慣れていく感じだった。

共犯者コンビ(トリオ？)が好きだったので、後半に再登場して嬉しかった。