傲慢と善良 朝日文庫

辻村深月(著者)

• 販売会社／発売会社: 朝日新聞出版
• 発売年月日: 2022/09/07
• JAN: 9784022650597

商品レビュー

2024/09/19

自分の事よりも先に他人の気持ちを考え、我が儘を通さず大人の言うことを素直に聞く初心で「善良」な子供が、恋愛市場に放り込まれた途端、ダサく退屈でイタい不良品になってしまうという残酷な真実を描いた、ある意味ホラーといえるかもしれない小説。

親や先生が指示したレールを疑うこともなく進み、「自分で判断し、結果を引き受ける」という当たり前のことをしてこなかった代償は、自分に『見合った』パートナーが『与えられない』と考えてしまう無意識の「傲慢」さである。

お互いに相手を、自分に足りない何かを埋めるパーツのような存在として評価していた架と真美が、それぞれが一人になり、自分の気持ちが向かう目的地として再認識する過程は綺麗な恋愛小説として気持ちよく読めた。二人に幸せあれ。

2024/09/18

冒頭の方ではなぜ真美は失踪してしまったのだろうかしか考えていなかったが、
架視点で、今まで知らなかった真美の一面がだんだん知れたり、
真美視点で描かれる失踪経緯など、人の感情を繊細に描いているのが面白かった。
しかし、個人的にはラストの真美のわがままじゃんと思ってしまって共感できなかった。
そんな私は傲慢なんだろうかと考えさせられた。タイトルも的をえていている。

2024/09/17

架と真実のストーリーが、男女別視点で描かれているのが新鮮で面白かった。自分もマッチングアプリで知り合った相手と1年の交際期間を経て結婚したが、文中にもあった通り、将来のライフプランが具体的だったからこそ結婚という決断ができたと思う。それぞれの人生があるから、結婚に対して強い願望がなかったり、将来のライフプランが抽象的であったりする場合、結婚しなければいけないという気持ちにならなくてもいいと思う。とはいっても人と比べてしまうのであれば、相手に求めすぎず、自分磨きをしてすることが大切だと改めて感じた。小説自体はボリュームがあるが、現実味のあるストーリーで読みがいがあった。