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ラビリンス 生存の迷宮
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | グラフィック社 |
| 発売年月日 | 2022/05/09 |
| JAN | 9784766135442 |
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ラビリンス
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商品レビュー
4.5
3件のお客様レビュー
『これをもう七年もやってきたのはお忘れなく。こうした遠征は決まり切ったものだった。地上のステーションのどれかにでかける。ヴェンデルスベリオネス、ベリウッデン。あるいはグランハマー。そこに何週間かでかけ、探検に出て、標本を採集し、温度と気圧をはかって、写真を撮り、計測機器のメンテを...
『これをもう七年もやってきたのはお忘れなく。こうした遠征は決まり切ったものだった。地上のステーションのどれかにでかける。ヴェンデルスベリオネス、ベリウッデン。あるいはグランハマー。そこに何週間かでかけ、探検に出て、標本を採集し、温度と気圧をはかって、写真を撮り、計測機器のメンテをする』 少しだけ表層的に作品を捉えておきたくなる気持ちが「「ソラリス」の世界観だな」と、頭の中で話しかけて来る。シモン・ストーレンハーグの、待望の四冊目。作家のウェブサイトで見ていたイラストレーションの印象に違[たが]わずとても陰気な物語。もちろん、これまでの作品も各々ディストピア風の世界を描いた物語ではあったけれど、この作品には一欠片の救いも無いよう。翻訳をした山形浩生の言を待つまでもなく、この世界は作品が製作されたパンデミック下の世界を反映しているようにしか読み取れない。そして、その後の世界を知ってしまった今となってはやや思い出しかねる絶望感や諦観が、これでもかと描かれる。特に物語の最終盤、黒い液体が流しの排出口から沸き出しみるみる世界を浸していく様は、感染症が辺り全てを覆い尽くして広がる様を思い起こさせずにはいられない。大気は既に防護服無しでは生きていけない程に汚染物質で満たされている。 物語が直喩として感染症の恐怖に沈黙させられた世界を思わせる一方で、黒い球体の吐き出す物質が大気を汚染していく様は、暗喩的にどちらかと言うと化石燃料の使用に対する苦言のようにも解釈され得る。穿ち過ぎかも知れないけれど、そこに欧州人の価値観の基底が表れているように読んでしまうのは自分だけだろうか。思えば最初に手にした「エレクトリック・ステート」もまた、原子力使用に対する作家の姿勢が表れていたものだとも言えるのかも知れない。引いてみれば、それは工業化された文明そのものに対するアンチテーゼの提唱のようでもあるけれど、ストーレンハーグのイラストに細密に描かれるものこそ、レトロな風貌を呈した最新鋭の未来の工業化製品たちなのだ。そう言ってみて奇妙な既視感を覚えるのだが、それは何処となく宮崎駿の描くアナログな機械化製品が満ちた世界観と通じるものがあるようにさえ思う。そのものの存在する理由や用途には与し得ないのだけれど、何故かその用具の美とでも言うようなものに惹かれてしまうアンビバレンツ。そんな自己肯定感では乗り越えられない自己否定は、きっと誰しもが持ち合わせているものなのだろう。それに対して正面から向き合う勇気のある人だけが創造の過程に踏み込めるのだ。 翻訳の山形浩生が言うように、この作品にはストーレンハーグの過去の作品では感じられたようなアナログな手触りのする温かみを感じられるところがない。「時計じかけのオレンジ」の不条理、「ウルトラセブン」で頻繁に描かれた哀愁、そんなものが溢れている。フラッシュ・バックの手法、スロー・モーションを思わせるコマ送り的描写。それら全てが、過去から押し寄せる罪の意識の重さを暗示する。もちろん、これまで作品も寂寥感には満ちてはいたし、それが映像作品となった「Tales from the Loop」にも引き継がれたストーレンハーグの特徴ではあるとは思うけれど。人類がそんなディストピアに向かってはいないと、パンデミック後の新たな心理的感染症とでも呼ぶものの広がる速度の早さを目の当たりにすると、否定し切れない気持ちにもなるのだった。
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人の力では抗えない現象に荒廃した世界。 気分を陰鬱にさせる挿絵とストーリー展開が感情を惑わせる。 タイトルのラビリンス通り感情が行き場を無くし、彷徨う。 それなのに何故かまた読み直したくなる。 そんなディストピアを描いた作品だった。
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暗くて息苦しい「方舟」の物語。 閉鎖空間の綻び。 アンモニアの雨に沈む世界。 ストーレンハーグ自身による同名のサウンドトラックも。すくなくともApple musicにはある。
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