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ファシズムとロシア
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 東京堂出版 |
発売年月日 | 2022/02/26 |
JAN | 9784490210644 |
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商品レビュー
4.3
6件のお客様レビュー
私がこの本を読もうと思ったのは、プーチン大統領がウクライナに対して「非ナチ化のために我々は戦っている」という旨の発言があったからでした。正直、その言葉を初めて聞いたときは全く意味がわかりませんでした。なぜプーチンにとってウクライナと戦うことが非ナチ化なのか、私にはどうしてもわから...
私がこの本を読もうと思ったのは、プーチン大統領がウクライナに対して「非ナチ化のために我々は戦っている」という旨の発言があったからでした。正直、その言葉を初めて聞いたときは全く意味がわかりませんでした。なぜプーチンにとってウクライナと戦うことが非ナチ化なのか、私にはどうしてもわからなかったのです。 というわけで手に取ったこの本でしたが、これがなかなか興味深く、「なるほど」と思えることが満載の一冊でした。
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Is Russia Fascist? Unraveling Propaganda East and West http://www.tokyodoshuppan.com/book/b599344.html
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ロシアとウクライナ(あるいは欧米)との間で互いを「ファシズム」「ナチス」だとする非難の応酬が続いている。「ファシズム」という言葉がその内実を示すより、「悪」のレッテル貼りとして政治的に利用されているようにみえる。はたしてロシアは「ファシズム」国家なのか?その疑問を解くためにこの本を手に取った。 ロシアでは、独ソ戦の勝利はファシズムへの勝利であり、ナチ・ドイツを破りヨーロッパの平和をもたらすためにロシア国民は多大な犠牲を払ったと考えられている。ロシア国民の間では「ファシズム」は「悪」であると認識されているし、第二次世界大戦におけるファシズムに対する勝利こそが、ロシアがヨーロッパの一員であることを保証していると考えられている。他のヨーロッパ諸国と同様にネオナチと呼びうる極右勢力はロシアにも存在するが、クレムリンに影響を与えているわけではない。 プーチン政権は、「反対派リベラルを非合法化することに注力し、反体制の原動力となり得る国民の怒りを回避するために非政治的表現には可能な限りの自由空間を許容しつつ、プライベートで忙しい市民や生活に満足している個人を歓迎している」が、これらは権威主義体制の典型であり、ナチ・ドイツのようなアーリア人による世界支配といった人種主義的な思想もない。ファシズム研究の立場から言えば、ロシアはファシズムではない。 筆者は「ファシズム」論争の背景には、ロシアと西側諸国との間に歴史の参照点に対するすれ違いがあると指摘する。 ロシアにとっては、ヤルタ会談により大陸を二つのブロックに分け、その後何十年も続いた冷戦期(ヤルタ体制)こそが「正常な状態」である。「それは同国に、あらゆる主要な国際問題について打診され、尊重される大国の地位を与えていた時期であり、ヨーロッパでは多大な影響力を有し、ファシズムに対して勝利したアメリカ合衆国の同盟国とみなされた状態である。」 一方西側諸国にとっての「正常な状態」とは、1990年代初頭のソ連の崩壊とともに「鉄のカーテン」がなくなり、EUが拡大していく状態である。 「誰がファシストか」というレッテル貼りは、ヨーロッパのあるべき姿の在り方の問題に集約される。もしもロシアがファシストならロシアはヨーロッパから排除されることになる。 プーチンのロシアをナチ・ドイツに喩えるアナロジーは問題を混乱させるだけで解決には導かない。ウクライナとの「戦争」がどうなるかは分からないが、その結果プーチンが辞めてもロシアがなくなるわけではない。ヨーロッパはロシアをどのように包摂するのか(あるいは排除するのか)。それがもっとも重要な問題なのだと痛感した。
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