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死者の贈り物 ハルキ文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 角川春樹事務所 |
発売年月日 | 2022/01/13 |
JAN | 9784758444545 |
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商品レビュー
4
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全ての詩が、なんとなく、死んでしまった長田弘の親しかった知人がふわっと浮かんでくるようなものを感じる。 詩には意味を求めず、言葉としての響きや美しさを愛でるだけでいいと谷川俊太郎が言っていた。 +++ 渚を遠ざかってゆく人 波が走ってきて、砂の上にひろがった。 白い泡が、白...
全ての詩が、なんとなく、死んでしまった長田弘の親しかった知人がふわっと浮かんでくるようなものを感じる。 詩には意味を求めず、言葉としての響きや美しさを愛でるだけでいいと谷川俊太郎が言っていた。 +++ 渚を遠ざかってゆく人 波が走ってきて、砂の上にひろがった。 白い泡が、白いレース模様のように、 暗い砂浜に、一瞬、浮かびでて、 ふいに消えた。また、波が走ってきた。 イソシギだろうか、小さな鳥が、 砂の上を走り去る波のあとを、 大急ぎで、懸命に追いかけてゆく。 波の遠く、水平線が、にわかに明るくなった。 陽がのぼって、すみずみまで 空気が澄んできた。すべての音が、 ふいに、辺りに戻ってきた。 磯で、釣竿を振る人がいる。 波打ち際をまっすぐ歩いてくる人がいる。 朝の光に包まれて、昨日 死んだ知人が、こちらに向かって歩いてくる。 そして、何も語らず、 わたしをここに置き去りにして、 わたしの時間を突き抜けて、渚を遠ざかってゆく。 死者は足跡ものこさずに去ってゆく。 どこまでも透きとおってゆく。 無の感触だけをのこして。 もう、島たちはいない。 潮の匂いがきつくなってきた。 陽が高くなって、砂が乾いてきた。 貝殻をひろうように、身をかがめて言葉をひろえ。 ひとのいちばん大事なものは正しさではない。
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有吉さんは人生を季節になぞらえました。年を重ねると死を身近に感じるようになります。人生でいえば秋。「碑銘を記し、死者を悼むことは、ふるくから世界のどこでだろうと、詩人の仕事の一つだった」という長田弘さんの名詩集『死者の贈り物』を選びました。
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たぶん5年後に読み返すとまた違った感覚、響くポイントが出てくると確信できる詩集。詩こそ読み手の読むタイミングで、受け止め方が全く変わるのではないか。 分からないけれど、なんとなく言わんとすることは想像できる。いますぐに見たい情景。ことばが自分の中で枯渇している時に、すーっとその隙...
たぶん5年後に読み返すとまた違った感覚、響くポイントが出てくると確信できる詩集。詩こそ読み手の読むタイミングで、受け止め方が全く変わるのではないか。 分からないけれど、なんとなく言わんとすることは想像できる。いますぐに見たい情景。ことばが自分の中で枯渇している時に、すーっとその隙間をやさしく埋めてくれるような本を求めている時にはけっこう刺さってくると思う。 ==== ■サルビアを焚く(一部) ことばは感情の道具とはちがう。 悲しいということばは、 悲しみを表現しうるだろうか? 理解されるために、ことばを使うな。 理解するために、ことばを使え。(p.41) ■その人のように(一部) 木があった。 ことばの木だ。 その木の影のなかに、 その人は静かに立っていた。(pp.49-50) ■わたし(たち)にとって大切なもの(一部) 何でもないもの。 朝、窓を開けるときの、一瞬の勘定。 熱いコーヒーを啜るとき、 不意に胸の中にひろがってくるもの。 大好きな古い木の椅子。 なにげないもの。 水光る川。 欅の並木の長い坂。 少女たちのおしゃべり。 路地の真ん中に座っている猫。 ささやかなもの。 ペチュニア。ベゴニア。クレマチス。 土をつくる。水をやる。季節がめぐる。 それだけのことだけれども、 そこにあるのは、うつくしい時間だ。(pp.56-57)
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