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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 平凡社 |
発売年月日 | 2021/05/21 |
JAN | 9784582838718 |
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商品レビュー
3.9
7件のお客様レビュー
なにこれ最高!!!!! 先日『月に吠えらんねえ』を読み終わったのもあって、世界観に入り込めた。萩原朔太郎やっぱり好きだーーー
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
自らのための備忘録 私が図書館から借りてきたのは、1996年1月30日発行の透土社発行の『猫町』でした。挿画は市川曜子です。 実は、萩原葉子の長男・萩原朔美がその著書『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日間』の中で次のように書いているので、市川曜子さんには大変申し訳ないけれど、極力イラストは見ないようにしてこの本を読み終えました。 《そう言えば、母親は『猫町』を他の画家やイラストレーターやアニメーターが描く試みを許さなかった。知らないうちに出版されたものに対しては強い嫌悪感をもっていた。様々な人が様々な解釈によって描いてもいいと思うのに、『猫町』だけは受け入れ難いようだった。あの頑なさは、考えてみれば父親が気に入ったネコのイラストが存在するからなのだ》(p.199-200) 詩人・萩原朔太郎の散文詩風小説。つくづく詩人とは言葉の魔術師なのだということがわかります。 《旅への誘いが、次第に私の空想(ろまん)から消えて行った》という作者が、《医師の指定してくれた注意によって、毎日家から四、五十町(三十分から一時間くらい)の附近を散歩》するようになり、《ふと知らない横丁を通り抜け》《そしてすっかり道をまちがえ、方向を解らなくしてしま》うのです。 作家が入り込んでしまった町は、《それは全く、私の知らないどこかの美しい町であった。街路は清潔に掃除されて、鋪石がしっとりと露に濡れていた。どの商店も小綺麗にさっぱりして、磨いた硝子の飾窓には、様々の珍しい商品が並んでいた。珈琲店(カフェ)の軒には花樹が茂り、町に日陰のある情趣を添えていた。四つ辻の赤いポストも美しく、煙草屋の店に居る娘さえも、杏のように明るくて可憐であった》のです。 またある時は、《私は幻燈を見るような思いをしながら、次第に町の方へ近付いて行った。そしてとうとう、自分でその幻燈の中へ這入って行った。私は町のある狭い横丁から、胎内めぐりのような路を通って、繁華な大通の中央へ出た。(中略)それは迷路のように曲折しながら、石畳のある坂を下に降りたり、二階の張り出した出窓の影で、暗く隧道(トンネル)になった路をくぐったりした。南国の町のように、所々に茂った花樹が生え、その附近には井戸があった。至るところに日影が深く、街全体が青樹の蔭のようにしっとりしていた。娼家らしい家が並んで、中庭のある奥の方から、閑雅な音楽の音が聴えて来た》りするのでした。 そもそも、この作者は《私は昔子供の時、壁にかけた額の絵を見て、いつも熱心に考え続けた。いったいこの額の景色の裏側には、どんな世界が秘密に隠されているのだろうと。私は幾度か額をはずし、油絵の裏側を覗いたりした。そしてこの子供の疑問は、大人になった今日でも、長く私の解きがたい謎になってる》ような人物なのです。 そして長じた今尚感性は鋭く、《私が始めて気付いたことは、こうした町全体のアトモスフィアが、非常に繊細な注意によって、人為的に構成されてちることだった。単に建物ばかりでなく、町の気分を形成するところの全神経が、ある重要な美学的意匠にのみ集中されていた。空気のいささかな動揺にも、対比、均斉、調和、平衡等の美的方則を破らないよう、注意が隅々まで行き渡っていた。しかもその美的方則の構成には、非常に複雑に微分数学的計算を要するので、あらゆる町の神経が異常に緊張して戦いていた》のです。 そして、《何かしら、そのにはある異常な、唐突な、その全体の調和が破るような印象が感じられた》その時、《人は私の物語を冷笑して、詩人の病的な錯覚であり、愚にもつかない妄想の幻想だと言う》かもしれないけれど、だが確かに「猫町」を見たのでした。
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文字を読みながら、挿画を眺めながら、用紙とインクの匂いを嗅ぎながら、ゆっくり紙をめくるのが楽しいですね。 普段使わない道を使ったり、普段出歩かない時間に出てみたり、日常の土地でパラレルワールドのような非日常を体験するのは身に覚えがあるけれど、猫の町か……!
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