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〈方法〉としての思想史 法蔵館文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 法藏館 |
発売年月日 | 2021/05/12 |
JAN | 9784831826220 |
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〈方法〉としての思想史
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『日本の近代化と民衆思想』、『神々の明治維新』、『出口なお』などで知られる歴史家・安丸良夫による論文集。方法論や現代社会批判が中心で、結構難しい内容が多い。 そんななかで面白かったのが、梅棹忠夫の歴史観(近代化論)への批判。1960年前後、梅棹は高度成長を通じて個々人の生活が豊...
『日本の近代化と民衆思想』、『神々の明治維新』、『出口なお』などで知られる歴史家・安丸良夫による論文集。方法論や現代社会批判が中心で、結構難しい内容が多い。 そんななかで面白かったのが、梅棹忠夫の歴史観(近代化論)への批判。1960年前後、梅棹は高度成長を通じて個々人の生活が豊かになりつつあった事実から、日本の近代化を高く評価するようになったのだが(「文明の生態史観」はその代表作)、個人の生活次元に密着しすぎることで見落とすものもあるというのが安丸の主張。「個人生活をその内部に含みこみながらも、しかし個人生活とは独自に展開してゆかざるをえない全体社会の構造、矛盾」への視点を見失ってしまうから。実際、梅棹の理解では、日本の戦争は一時的な「谷間」に過ぎなくなっていて、この「谷間」を捉えようとする意識がないというのが、安丸の批判である。 梅棹をいくつか読んできた私にも腑に落ちる指摘だったし、当時の多くの歴史家が軽視していた梅棹たちの近代化論を直視・批判することによって、安丸独自の歴史観が創り出されたことも窺える。
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民衆思想史の名著と名高い『日本の近代化と民衆思想』著者による、主として方法論に関する論考をまとめたもの。 まずは「はしがき」において、著者自ら自身の研究の軌跡を振り返りつつ、本書全体の見取り図を簡潔に示してくれる。「歴史家とは、史料と「事実」とを特定の場における時代性とのかか...
民衆思想史の名著と名高い『日本の近代化と民衆思想』著者による、主として方法論に関する論考をまとめたもの。 まずは「はしがき」において、著者自ら自身の研究の軌跡を振り返りつつ、本書全体の見取り図を簡潔に示してくれる。「歴史家とは、史料と「事実」とを特定の場における時代性とのかかわりで理解・解釈する立場を選んだ者と考える」 収録されている文章は、1960年代のものから90年代にまで亘っている。 色川大吉の『明治精神史』が数編の論考で紹介され論じられているが、作品の画期的性格、生き生きとした叙述の素晴らしさを率直に評価しつつ、方法論に特異な性格を見出だしている。 第四章の「『民衆思想史』の立場」は、著者の"通俗道徳"論に対する批判を受けての反批判なので、著者の方法論的立場が鮮明に分かる文章となっている。 第十二章「日本の近代化についての帝国主義的歴史観」、第十三章「反動イデオロギーの現段階」は、「近代化論」に対する批判の言である。戦後歴史学の主流であった講座派マルクス主義=戦後歴史学に対抗する形で、近代化論が日本の論壇を覆い始めた。高度成長という時代もあり、日本の近代化に対する肯定的評価が出てきた。それらの見解のバックボーンとして、圧倒的影響力を持ったのがロストウやライシャワーであり、彼らの論におけるアメリカ帝国主義のイデオロギー性を、著者は鋭く剔抉する。 この辺りについては時代を感じるが、著者はソ連崩壊もあった30年後の単行本化での〈追記〉として、「この小論でとりあげられているような近代化論が一方的に勝利すれば、それは人類にとってもっとも悲惨な結果をもたらすだろうと考える点では、いまの私もたいして変りばえしていない」と言う。その矜持が素晴らしい。
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