ミカンの味

チョ・ナムジュ(著者), 矢島暁子(訳者)

• 販売会社／発売会社: 朝日新聞出版
• 発売年月日: 2021/04/20
• JAN: 9784022517579

商品レビュー

2025/06/22

解説まで読んで再び物語を読み直すと、少女たちの今ここに生きる苦しさ、大人たちが先回りする社会の構造、出口のない教育状況が辛く苦しく伝わってきた。
初見では、韓国の少女たちの青春のもどかしさ、友情のあやふやさ、若さ故の生きにさを少々のミステリーも考えながらうまく伝えているなぁと思った。が、解説まで読み私の解釈の甘さに痛く反省した。
この小説の主人公たちは、教育と言う形で社会的な折に囲まれた現実のルポであり、著者が世に伝えたかった問題であり、非常に考えさせられた。
中でもソランの平凡さが、白でもなく黒でもなく、いつ落ちるかわからない不安定さが逆に希望や光や現状を生きていく多くの代弁者として活かされて印象深かった。

2024/12/13

ちょっとしたことで仲間はずれになったり
する中学生の頃の友人関係を思い出して心がキュッとなった。みんなでミカン狩りをするシーンは純粋で良いなと思う。
みんなで同じ高校に行こうと約束してその通りになるのだが、実現させる方法がミステリーみたいだった。中学生の進学に必死になっている親や学校にとっては番狂せでしかない。けどあの年代の、親より学校より友達との約束が一番という気持ち、進路という大事なことをノリで決めてしまう感じがよく描かれていた。
男尊女卑がひどい家庭、加熱する受験戦争も、韓国独特だと思う。

2024/08/21

年をとったいま思うと中高校生の頃のことは楽しいことしか覚えていないが、そういえばいろいろあった。悲しいことも腹立たしいことも。仲良しみんなで食べたミカンの味。長く熟成されて甘くなるもの、寸前まで太陽を浴びておいしくなるもの。酸っぱさも少し。いいメタファーです。それにしても韓国の学制は多様で複雑。親御さんも大変。フェミニズムも描き出し、母たちの内面にも思いが至ります。おもしろかった！親御さんに丁寧語で話すのが、日本人としては新鮮。かつては日本でも父母には敬語使っていたのに、遠い昔ね。