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はじめての動物倫理学 集英社新書1060C
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 集英社 |
発売年月日 | 2021/03/17 |
JAN | 9784087211603 |
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動物倫理学の学問史と、研究の中心に置かれてきた社会問題について網羅的に解説した本。後半では、動物倫理学が批判してきた西洋的な人間中心主義の考え方に対して動物倫理学がとる立場と、動物倫理学の論点をさらに越えようとした倫理学的立場として環境倫理学とマルクス主義の動物と環境観が紹介され...
動物倫理学の学問史と、研究の中心に置かれてきた社会問題について網羅的に解説した本。後半では、動物倫理学が批判してきた西洋的な人間中心主義の考え方に対して動物倫理学がとる立場と、動物倫理学の論点をさらに越えようとした倫理学的立場として環境倫理学とマルクス主義の動物と環境観が紹介される。 この本では、はじめに、動物の権利を考える上での基本的な考え方として、規範倫理学の学説を大きく「功利主義」「義務論」「徳倫理」の3つに大きく分ける。その後、こうした倫理学的原理から、肉食や動物園・水族館、野生動物の狩猟、駆除、コンパニオン動物(ペット)、動物性愛といった具体的な動物に関わる善悪問題について、それぞれの立場がどのように考えるのかを解説する。 ここら辺は、他の入門書でも知っていたので、やはり基本的な論点は、そこなのだなということを改めて確認できた感じである。 個人的によかったのは、動物倫理学という学問自体が、誰のどういった著書から成り立ってきたのかを解説した第二章「動物倫理学とは何か」だった。ピーター・シンガー『動物の解放』、トム・レーガン『動物の権利の擁護』といった、おそらく基礎文献にあたる本と、そこで初めて主張された論点が紹介されている。この学問史の理解に、どの程度、妥当性があるのかは知らないが、すごく分かりやすくまとまっていて、他の本を読むときにも参考になった。 正直、第四章の「人間中心主義を問い質す」のところは、内容に陳腐さを感じてしまってイマイチだった。加えて、肉食の問題などは、統計的なデータなどがないので、いまいちその規模が実感しづらかった。 ただ、内容が網羅的で、動物倫理学の成立の全体像がよく分かるので、この点については、新書としてすごくおすすめできる一冊だと思う。
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動物倫理「学」とは何か、という方向での入門。動物に倫理を当てはめる理由と各理論における位置付け、最後にマルクスにおける動物倫理観は余計な感じがあるが、マルクスの専門家故仕方ないか。 苦痛や幸福を勝手に判断する点、ペットを絶滅に向かわせる視点、動物倫理であって生命倫理ではない点など...
動物倫理「学」とは何か、という方向での入門。動物に倫理を当てはめる理由と各理論における位置付け、最後にマルクスにおける動物倫理観は余計な感じがあるが、マルクスの専門家故仕方ないか。 苦痛や幸福を勝手に判断する点、ペットを絶滅に向かわせる視点、動物倫理であって生命倫理ではない点などは広げるべき課題。人類規模がどこまで縮小したら成り立つのか興味はある。 実世界ではない机上論として。
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新書という形式では本邦初の動物倫理学の入門書。これまでの人類の動物への扱いは基本的に不当であり、動物に権利を認め、動物を「生きた道具」として使わない文明とライフスタイルをこれからの人類は構築すべきだと主張。 倫理学の3つの主要学説である功利主義、義務論、徳倫理のエッセンスの解説か...
新書という形式では本邦初の動物倫理学の入門書。これまでの人類の動物への扱いは基本的に不当であり、動物に権利を認め、動物を「生きた道具」として使わない文明とライフスタイルをこれからの人類は構築すべきだと主張。 倫理学の3つの主要学説である功利主義、義務論、徳倫理のエッセンスの解説から始まり、それぞれの立場に基づく動物倫理学の経緯や考え方を解説した上で、人類は動物とどう付き合っていくべきかの考察や人間中心主義の問い直し、環境倫理学との対比、マルクスから得られる示唆へと論が展開していくが、動物倫理学やその周辺について理解が深まり、とても勉強になった。 しかし、動物倫理学の考え方には違和感が拭えず、著者の主張に納得できたかというとそうは言えなかった。 まず、動物に人間と同様の「権利」があるとする根拠が曖昧なように感じた。「生の主体性」や苦痛を感じるなどの感情があることが根拠とされているが、やはり人間の持つ意思表明能力、世界の認識能力、言語によるコミュニケーション力など、いわゆる理性といえる能力は一般的な動物とは区別されてしかるべきではないかと思う(著者が人間に近いとして例に挙げているのは基本的に類人猿であり、百歩譲っても認められるのは類人猿の権利だけではないか)。 また、権利を持つ対象となる動物の範囲も不明確である。魚類や鳥類も生の主体たり得る可能性があるとしているが、では、昆虫やエビ・カニなどはどうなのかについては全く語られていなかった(蚊に刺されたからと言って死ぬわけでもないのに蚊を殺すことは動物倫理学ではどう評価されるのか)。また、感情を持つというならば、植物にも感情があるという研究もされているが、植物については権利を認める必要はないのだろうか(そうなれば、人類は餓死せざるを得なくなる)。 そして、肉食を倫理に反すると主張しているが、雑食動物である人間にとって動物を食べることは自然の摂理に沿ったものであり、否定されるべきものなのかという疑問がある。「工場畜産」に問題があるとしても、それはそれとして動物福祉的な考え方で対応すべきことではないか。 ほかにも、「自然の権利」を否定するところで、本来の意味での権利は法的な権利ではなく道徳的な権利である旨を主張しているが、個人的には権利というのは法的なものという説明のほうが理解しやすく、道徳的な権利というのは内容が不明確だと感じた。このように、「権利」などの動物倫理学で使用される用語が観念的で、恣意性を帯びているように思われることも、その議論にあまり説得性を感じない一因である。 以上のように、個人的には、本書の主張には疑問が多く、納得はいっていないのだが、動物と人間との関わり方に関する議論に一石を投じるという意味で、本書の意義は認めるところである。
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