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ケサル王物語 チベットの英雄叙事詩 岩波文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
| 発売年月日 | 2021/03/15 |
| JAN | 9784003206218 |
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ケサル王物語
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商品レビュー
4.2
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※このレビューにはネタバレを含みます
チベットからモンゴル、中央アジアに至るまでのチベット仏教圏にて広く語り継がれる叙事詩『ケサル王物語(Ge sar rygal poï sgrung)』の邦訳。伝説的なチベットの国リンを舞台に、仏敵調伏のため神界より地上に転生した神王ケサルの活躍を歌い上げる。 本書は、フランスの探検家アレクサンドラ・ダヴィッド=ネールとその弟子アプル(ラマ)・ユンテンによる"La vie surhumanie de Guésar de Ling, le héros thibétain, racontée par les bardes de son pays"(1931 )の抄訳である(序論と後日譚である十四章を除いて訳出)。実際の叙事詩人の語りを筆録・翻訳した原著は欧米圏で最もポピュラーな『ケサル王物語』のバージョンであり、またケサル王の誕生から臨終までの生涯をまとまった形で歌い上げた作品でもある(『ケサル王物語』は文楽の諸作品と同じく物語の特定の部分のみを朗誦さされることが多く、その全物語を通しで語るものは少ない)。 物語は、ある不敬虔な娘が非業の死を遂げる場面から始まる。仏法廃滅を誓い臨終の時を迎えた娘とその息子たちの〈意識(ナムシェ)〉は恐るべき悪鬼王として人間界に転生し、これを憂えた天界の聖者パトマサンバヴァは仏敵調伏のための英雄を地上に送り込むことを決断した。その一大計画の主役こそ、賢人成就者トェパ・ガワの化身であり、神と龍女の子として転生したリン国王ケサルである。神馬キャング・カルカルを駆り神与の武具と無辺の神通力で仏敵を成敗するケサルの征服譚は、同じく神仏の化身である美妃セチャン・ドゥクモや悪大臣トトゥンら様々な登場人物を交えて縦横無尽に展開していく。 チベット仏教の世界観を背景とした勧善懲悪の物語である本叙事詩であるが、一方では(実際に人々の娯楽として叙事詩人が歌い上げたものであることもあり)ユーモラスな場面も多々存在する。馬頭観音の化身でありながら私利私欲に駆られて度々騒動を引き起こすトトゥン、魔術によってその身を千変万化して敵を翻弄するケサルなど、仏菩薩の化身でありながら人間臭く振る舞う彼らの姿を本書は軽快な語りと訳とで描き出している。詳細な注記も付されており、今日もなお語り継がれ"続編"までも生み出されている『ケサル王物語』の世界に触れるのにうってつけの一冊と言えるだろう。
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出版社紹介文がすごい。 チベット文学を代表する一大叙事詩。仏敵調伏に挑む神の化身・ケサル王の物語 帯もなんだかすごい。 「神々が人間界に降下して織り成す物語」 われこそは、 神界ではトェパ・ガワ神、 地上ではケサル王、 仏敵を討ち滅ぼす者なり 「チベットの空に王の雄叫びが響きわ...
出版社紹介文がすごい。 チベット文学を代表する一大叙事詩。仏敵調伏に挑む神の化身・ケサル王の物語 帯もなんだかすごい。 「神々が人間界に降下して織り成す物語」 われこそは、 神界ではトェパ・ガワ神、 地上ではケサル王、 仏敵を討ち滅ぼす者なり 「チベットの空に王の雄叫びが響きわたる」 血沸き肉躍る的な。しかし仏敵を調伏する神って一体・・・? 脳内「?」だらけで読み始める。 最初に主な人物・事物・土地の用語説明があって、項目の多さにちょっとひるむのだが、ここで気おされなくても大丈夫。意外に物語は読みやすくておもしろい。 そもそもこの物語、チベットで古くから語り伝えられてきた口承文学である。時代的・地域的な起源は不明だが、広範なチベット仏教地域全体に広がり、流伝され、筆写され、印刷され、録音されてきたものである。正確な巻数が調査されたことはないが、語れば数百時間、書き記せば数百巻に及ぶと見られる。人類の最大叙事詩の1つであることは間違いない。 チベットでは広く知られてきたが、チベット語文化圏外で知られるようになったのは、18世紀後半、ドイツ語訳が出たのが最初であった。本書は1931年にフランス語で出版された版を元にしている。これはこの版がケサル王伝承の大筋を簡潔に一貫した形でまとめており、膨大な物語の全体像をつかむにはちょうどよいと判断されたためである。 これまでに邦訳された「ケサル王物語」はモンゴル語訳または中国語訳からの重訳で、本書を含め、チベット語から日本語に訳された版はいまだに存在しない。 さて、その内容はといえば。 物語世界には、神界と人間界の2つが存在する。神が人間に転生して活躍するので、登場人物のほとんどが元々は神である。主人公のケサル王は、神界では賢人成就者のトェパ・ガワである。パドマサンバヴァ師という、チベット仏教では第二のブッダと崇められる神様に、仏敵を倒すよう依頼され、人間界に生まれ変わる。 この「仏敵」なるものが何者かというと、かつてチベットにいた母娘2人のうちの娘が諸悪の根源である。母は大変信心深く、ブッダの教えによって幸福な生涯を閉じた。娘の方は母の説得にも関わらず、仏教の教えに染まらず、結果、大変不幸になった。息子3人とともに貧窮に陥り、それもこれもブッダのせいと逆恨みし、 「わたしの息子たちとわたしが、強大で裕福な王者に生まれ変わり、ブッダの大いなる御教えとそれを説く人々を永遠に滅ぼすことができますように」 といって息を引き取る。息子もほどなく後を追う。中有をさまよったあげくに4人は転生、女は一度に3人の王になり、息子もそれぞれ王となった。 この6人を、人間界に生まれ変わったケサル王=トェパ・ガワが次々にやっつけていく、というお話。 ケサル王は(元は神なのだから当然だが)超人的な力を持ち、さらに困難があれば、神界から応援が何人も駆けつけ、助けてくれる。 めくるめく冒険譚が繰り広げられる。 おもしろいのはそこだけではなくて、出てくる人物が時に何だか非常に人間臭い。馬頭観音の化身として転生したのに、貪欲で自分勝手なトトゥン(人間界でのケサル王の叔父にあたる)とか、白ドルマ女尊の化身でケサル王の正室でありながら、敵国に連れ去られ、仏敵の王にほだされて一子を設けてしまうセチャン・ドゥクモ妃とか、ちょっとトホホな人たちも出てくる。けれど実際、英雄然とした「正しい」人だけではお話はおもしろくないのではなかろうか。 チベットは7世紀前半、騎馬民族軍事国家として出現する。その後、没落期を経て、11世紀に歴史上に登場した際にはかつてとは趣を異にする仏教国家となっていた。そうしたチベットの歴史を背負い、さまざまな要素を集積してきたのが、この「ケサル王物語」なのだろう。 異界に想像力の翼がはためく、壮大な叙事詩である。
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チベット版「日本書紀」みたいな感じ?神様が仏教をないがしろにする勢力と戦う 話。日本版はまだ若い神様が使命にかられてって感じですが、こちらはかなり強い神様の中でも抜きん出た存在が、「やだ今日はコタツからでたくない」とわがまま言うので、あれもこれも都合のいいオプションを盛り沢山揃え...
チベット版「日本書紀」みたいな感じ?神様が仏教をないがしろにする勢力と戦う 話。日本版はまだ若い神様が使命にかられてって感じですが、こちらはかなり強い神様の中でも抜きん出た存在が、「やだ今日はコタツからでたくない」とわがまま言うので、あれもこれも都合のいいオプションを盛り沢山揃えて、人間界に降りてきた。そりゃーどうやったって死なない。勝つにきまっている。それゆえ、ハラハラする箇所なんかなくて、痛快爽快な作品ではある。あんまインドとかあの辺りの作品はないので読めて幸せ。
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