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在明の別 残月抄 天下の孤本を新しい校訂本文で読み解く
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在明の別 残月抄 天下の孤本を新しい校訂本文で読み解く

辛島正雄(著者)

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在明の別 残月抄 天下の孤本を新しい校訂本文で読み解く

定価 ¥6,600

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 九州大学出版会
発売年月日 2021/03/15
JAN 9784798503004

在明の別 残月抄

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2025/03/27

『在明の別れ』は、鎌倉時代に書かれた、異性装と異能の要素を含む物語だ。 『とりかへばや物語』以外にも、異性装をテーマにした話があったことに驚き、興味を持って手に取った。 古文と現代語訳が並べられていて、自分のペースでどちらでも読める対訳本のつもりで借りたが、実際に本を開いてみ...

『在明の別れ』は、鎌倉時代に書かれた、異性装と異能の要素を含む物語だ。 『とりかへばや物語』以外にも、異性装をテーマにした話があったことに驚き、興味を持って手に取った。 古文と現代語訳が並べられていて、自分のペースでどちらでも読める対訳本のつもりで借りたが、実際に本を開いてみると、この物語をどう読み解くべきかという古典の研究者による、専門性の高い注釈書だった。 がんばれば読めるかもしれないけれど、あまりがんばる気もないので、今は冒頭の物語のあらすじを読んだだけで満足することにした。 この物語についてさらに調べてみると、現代語訳らしき文庫本が近所の図書館にあるのを見つけたので、近い内に借るつもり。でもその前に、借りっぱなしの本を返さなくてはいけない。 『在明の別れ』と共通の異性装というテーマを持つ『とりかへばや物語』は、以前に現代語訳を通して読んだことがあるので、内容はなんとなく覚えている。 異性装をしていた兄妹が、物語の後半ではシスジェンダーに戻って、ただの恋愛小説になってしまったのが残念だった。シスジェンダーの順調な恋愛小説以上につまらない物語が存在する? この本では『とりかへばや物語』についても少し触れられていて、現在残っているとりかへばやは『今とりかへばや』と呼ばれた別物であることがわかった。 昔は著作権などという概念は存在しなかったので、物語を写す際に、写す人が自分の判断で物語を改変することもよくあった。 そういった行いを戒めていた著名人も存在したけれど、物語を改変するということへの心理的なハードルは、今よりもずっと低かった。社会的なペナルティもなかったので、文章を書く腕に覚えのある人が、飽きられて人気の無くなった作品を改変して改めて世に出すということも、あたりまえに行われていたらしい。 当時の人で、両方の物語を読んだことがある人の感想も残っているが、二つの物語は、異性装というテーマが共通していても、だいぶ内容は違っていたようだ。 現代でも、古い映画がリメイクされて、新旧両方の映画を見た人が、やいのやいのと盛り上がることがあるが、鎌倉時代にも同じようなことがあったのかもしれないと思うと面白い。 オリジナルの『とりかへばや』は、主人公たちがトランスジェンダーとしての人生を幸せに全うする事ができたのかな? ほとんど可能性のないことだとはわかっているものの、いつかオリジナルの『とりかへばや』が発見されることを願ってしまう。そして誰か現代語訳版を出して。 この本の中では、源氏物語や紫式部日記にも盛んに触れられていた。この物語は紫式部の作品を参考にしていると思われる点が多々あるらしい。 この本を読んで初めて知ったけれど、源氏物語にはたくさんの歌が登場するのに、葵上の歌だけは一首もないらしい。 源氏と葵の上のよそよそしい関係性を強調するために、紫式部はあえて葵の上に歌を詠ませなかったのかな? 政略結婚ではあっても、和歌が重視されていた当時の人々の価値観や風習を考えると、姫君本人が書かなくても、周りの人が代筆することがあったというのは十分考えられるが、そういった描写を入れたとしたら、作品が冗長になっていたかもしれない。 それに、葵の上は読者から見ても遠い存在に感じられるように、紫式部は描いていた気もする。 そうだとはいえ、夫である源氏が、息も絶え絶えな葵の上をみて、いつもこうだったら良いのにと思ったり、葵の上に悪霊が取り付いた時に、妻の心配をするどころか、妻に取り付いているのが自分の愛人の六条御息所であると誰も気付かないようにと念じているのは、あまりに酷薄で、私はこのシーンを読むときはいつも、葵の上に同情せずにいられない。

Posted by ブクログ