ねころんで読める救急患者のみかた ナース・救急救命士・研修医のための診療とケア

坂本壮(著者)

• 販売会社／発売会社: メディカ出版
• 発売年月日: 2020/05/26
• JAN: 9784840472326

商品レビュー

2023/08/23

https://usaco.hosted.exlibrisgroup.com/permalink/f/1n0uv8/SFX_BOOK4920000000587762

2021/11/15

2年次初期研修医です。私は1年目の頃は、救急当直に自ら率先して志願し、月に何人もの救急患者を診察してきました。しかし、2年目になり、大学病院での研修が始まると、ノルマの当直も無くなり、救急科を回っている研修医のみが当直に当たるので、長らく救急の現場から遠ざかる事になってしまいました。このまま3年目を迎える事に危機感を覚え、リハビリがてらに救急関係の参考書を読み始める事にしました。そこでまず手に取ったのがこちらの1冊でした。ねころんで読める、とタイトルにあり、且つ表紙に可愛い猫ちゃんがたくさん描かれているではないですか。いきなりお堅い成書を読もうとして挫折するより、入りやすい雰囲気のこちらの本を読破した方が身になると思い、リハビリの第1歩目に選びました。
肝心な中身ですが、それはもう期待以上のものでした。猫ちゃんが随所にちりばめられていて癒しの空気を醸し出しつつ、本文は口語体の読み易い文章で綴られていて、サクサクと読み進める事ができました。かと言って、決して内容が薄い訳ではなく、研修医や若手医師が陥りそうな間違いを症例毎に最初に提示して、何が間違っているのかを解説し、真の診断は何だったのか、またその診断に辿り着くにはどんな診察・検査が必要なのかも説明してくれます。JCSやqSOFA等の抑えておきたい項目も図表化されていて、備忘録としての側面も持ち合わせており、必要な時に参考にする使い方もできます。そして、著者が最も力を込めて伝えているのは、救急におけるHi-Phy-Vi（病歴・身体所見・バイタルサイン）の重要性で、それらを正確に評価できれば不要な検査をせずに診断や重症度判定を行う事ができるというのです。この教えに私は誠に感銘を受けました。思い返してみると、1年目の時にはそこまで意識して診察をしていなかった事に気付かされました。早く患者をさばく事ばかりに気を取られ、診察よりも検査のオーダーに時間を割いてしまっていたと、今更ながら反省しました。ですが、こちらの本のお陰で誤りに気付く事ができただけでなく、久しぶりに救急外来で診察してみたいとも思え、モチベーションも上がりました。
初学者よりもある程度救急対応に慣れてきた研修医や若手医師にこそ、こちらの本は読んでいただきたいです。可愛い猫ちゃんに癒されながら、自分の診療を見つめ直すまたと無い機会ですので、是非とも一読をお勧め致します。