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蚕と戦争と日本語 欧米の日本理解はこうして始まった
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | ひつじ書房 |
発売年月日 | 2020/02/28 |
JAN | 9784823410314 |
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蚕と戦争と日本語
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表題の『蚕と戦争とー』の、「蚕」はほとんど惹句程度。16世紀から先の大戦を経て現代に至る西洋の日本語学習の目的と手段と、その歴史的背景を、広範囲な地域と学際的にも多岐にわたる事例を集めた、実に読み応えのある一冊。 蚕に関しては第4章の「絹とジャポニズム」に詳細に報告されている。 「19世紀中頃にヨーロッパでは当時不治の病と言われた蚕の伝染病、微粒子病が蔓延し、ヨーロッパ種は絶滅の危機にさらされていた。その打開策として、日本の養蚕業が注目され、技術翻訳書第一号とも言うべき日本の養蚕教育書がフランス語やイタリア語に翻訳された。」 これが、日本(当時江戸幕府)とフランスの接近のワケだったとは!日本の生糸、絹製品が、その高品質ゆえに重要な輸出品であったことは歴史の授業でも習った覚えはあったが、ヨーロッパでの伝染病の蔓延までは知らなかった。 岩倉使節団や、パリ万博への日本初参加の史実が、一気に繋がった気がして痛快! ロシアの日本語教育は歴史があることは、某レニングラード大学の日本語学科の学生たちとも当時交流を持った身としては、よく認識している話ではある。ピョートル大帝がSt.ペテルブルグ遷都(1704)直後の1705年に日本語学校を開設した話は有名。その背景にあった、ピョートル大帝のロシア版図の東方拡大の野望が日本語教育の需要と相まったのはわかるが、そこに、江戸幕府による「海外渡航禁止令のもと、遠洋航海用の船の建造禁止」が、海難事故の頻発を招き、その漂流民をロシアはうまく利用した。そのあたりの話は伊東潤著『男たちの船出』(https://booklog.jp/users/yaj1102/archives/1/4334912443)の江戸の造船業の話とも繋がって面白かった。 とにかく、ロシアは国策として日本の漂流民を受け入れてたというのは実に興味深い。 「漂流民を国費で養い、100年以上にわたり、断続的に日本語教育を行ったという記録が残っているのは、ロシアだけである。」 第8章の「連合国の日本語教育と情報戦」の中で、諜報に向いた学生かどうかを見極めるのに、3つのCを重視したという話が紹介されている。 「古典(Classic)、チェス(Chess)、クロスワード・パズル(Crossword Puzzle)」だ。 ロシアはチェス大国でもある。そんな点でも、日本語教育が広く受け入れられた素地があったのかもと思うと面白い。 その他の章でも、他国の言語を学ぶ動機、必要性を歴史の必然性から見ていくが、基本、対立や征服、戦争に代表される国家間の交渉、紛争解決のための手段としてだ。 その中でも、日露戦争が、世界史の中で、「アジアの黄色人種の国である日本がヨーロッパの白人の国であるロシアに挑んだ戦争であり、近代化の道を歩み始めたばかりの無名の「小国」が世界有数の大国に挑んだという文脈においてとらえられていた」ことで、ロシア帝国の支配下にあった東欧の国々でも日本、日本語への興味が興ったという話は実に面白い。 その流れの中で、ポーランドのピウスツキの名前も登場する(第162回 直木賞受賞作『熱源』(川越宗一著)の主人公だ)。実に興味深い。 日本語の普及、教育に関わった本書の登場人物は200余名に及ぶ。 蚕にはじまり、産業技術への関心から、日本固有の文化への興味が言語の学習のきっかけとなる歴史。 その動機は今も昔も変わらないだろう。 一方、外国語の学習を推進する側、つまり国家の目的はというと、歴史を俯瞰してみると、戦時下の諜報戦を例に出すまでもなく、戦勝と征服、その後の統治の手段としての理由が、重要視されるのは止む無き歴史の必然。 ただ、大きな戦争を経験した世界は、「戦争抑止と平和への悲願、それを支えるものとして注目されたのが言語教育であった」と著者は言う。 これからの世界で、相互理解のための、他者への理解を深める手段としての外国語学習が、寄与してくれればと願わずにはいられない。
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