完璧じゃない、あたしたち ポプラ文庫

王谷晶(著者)

• 販売会社／発売会社: ポプラ社
• 発売年月日: 2019/12/05
• JAN: 9784591164945

商品レビュー

2024/03/09

まっすぐ顔を上げて前をみている人も、うつむき加減で生きている人も、どっちに行ったらいいか迷っている人も。いろんな女、いろんな性格が登場する。誰かと出会えば関係が生まれ、関係が続けば未来のことを考えられるなぁって、そんなことを思う出会いの話がたくさん詰まった短編集。
現実からファンタジックに飛んじゃう話も混ざっていて、グルグル景色が変わる乗り物みたい。

2022/03/29

女同士の関係が1番自由なのかもしれない…友情でも愛情でもなんとなく隣りにいるでも、強く結びついてても付かず離れずでも今は遠く離れてても何にでもなれる。
初読みの作家さんでしたがもっと読みたくなりました。
いかにもありそうなお話から、自分や友人が変態していくファンタジー、ゾンビもの（とても楽しいし終わり方が好き）まで自由でした。
お婆さんのひとり語りのお話も、夢で見た料理を友人が作ってくれるお話も好きです。不味い餃子のお肉それ鈴木さんですよね……？

2021/08/04

文庫版の帯コメントはブレイディみかこ
「せつないほど痛快で、容赦なくきらめく　シスターフッドの万華鏡。すべての性の人々に中を覗いてほしい。」
だが、もともと単行本の岸本佐知子
「女の人生が、たった一度、どうしようもなく変わってしまう、美しくて、怖くて、きらきらした瞬間が、ここには詰まっている。女の人生を変えるのは男だなんて、誰が決めたのさ？」
に惹かれていた。

さかぐちまやの装画（単行本は「「百合映画」完全ガイド」の志村貴子と似た感じ）がサイコーなカバーに、
「We are not perfect.
　We are perfect, aren't we?」
とある。
「完璧じゃない、あたしたち」
は、
「あたしたちは、完璧じゃない」
と
「うちら、マジ完璧じゃね？」
のダブルミーニングになっているのだ。

全23編＋あとがき。
どれも題材が多彩で、これだけバリエーションがあれば、きっと誰かのどこかに届く。いま届かなった誰かのどこかにもいつか届く。
多彩さが武器。
題材に合わせた文体の多彩さも素敵で、何度も何度もにやりとしてしまった。

なんていう雑誌に連載されてたんだろ、初出が書かれていないのが残念だなと感じていたが、なんでもweb連載だった。
ポプラ社のweb astaのショートストーリー連載「レディース・アンド・ガールズウィメン」数編に、多数の書き下ろしを加えたものらしい。

ところで、
https://www.youtube.com/watch?v=9sQq_clV7xc&feature=emb_imp_woyt
「MOC　トヨザキ社長のコレ読め！ 第１０回」で本書について、「自分以外のたくさんの「声」を取り込んでいる」と言及されていた。
先日ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」巻末でリディア・デイヴィスが「声（ヴォイス）」について書いており、アメリカの作家ならではのタームなのかなとぼんやり考えていたが、本書と豊崎由美のおかげで理解が進んだ。
（どちらが良い悪い優れている劣っているというわけでもないし、きっちり分けられるわけでもないけど）ひとり語りで内向していくタイプの小説も好きだけど、こういう他者の予想外さに触れることで自分の抑圧から解放されるタイプの小説も、またよい。

■小桜妙子をどう呼べばいい★
■友人スワンプシング
■ばばあ日傘
■Same Sex, Difference Day.★
■北口の女（ひと）
■しずか・シグナル・シルエット★
■姉妹たちの庭
■十本目の生娘★
■だからその速度は★
■陸のない海★
■春江のトップギア
■イエロー・チェリー・ブロッサム
■腹の町（落語　頭山より）
■あなたのこと考えると無駄になる★
■ときめきと私の肺を★
■戯曲 グロい十人の女
■夢で見た味
■ヤリマン名人伝
■シオンと話せば★
■カナちゃんは足が無い★
■ファー・アウェイ★
■東京の二十三時にアンナは
■タイム・アフター・タイム
□あとがき