暴力をめぐる哲学

飯野勝己(著者), 樋口浩造(著者)

• 販売会社／発売会社: 晃洋書房
• 発売年月日: 2019/02/10
• JAN: 9784771031210

商品レビュー

2022/03/15

『暴力』をキーワードとして9人の学者が暴力とは何か、そして避ける糸口はあるのかを各々の切り口で論じあう。

テーマは以下
1.暴力におけるミーメーシスとアイデンティティ
2.文化と暴力
3.暴力の行使と制止の行動科学
4.日本キリスト教思想史における暴力理解
5.暴力を直視する
6.構造的暴力としてのヘイトスピーチ
7.ひとつの暴力、いくつもの暴力
8.語りをめぐる暴力
9.荒ぶる思いの行方

人文系の学者ばかりのため、言葉遊びに近い議論や、ある著作を過度に深読みしすぎている章があるなど、当たり外れは大きい印象。

ただし、1.　3.　6.　章は読みやすく得るものも多かったように感じた。　　

覚えておきたい部分
・自らの欲望について冷静に見つめた時、それが他者の意志や欲望に従ったものでしかないと考えてみる余地はないだろうか。

・私たちに必要なのは、自らのアイデンティティが複数であることを自覚しつつ、その中から自由に、自らの思考と意志に基づいて、時の状況に応じて選択をすることである。

・それらが、味わい楽しむ美的な対象であって、所有の対象となりえないという事である。

・人には不快感情に起因する衝動・自動的な攻撃システムと熟慮や合理的判断を経た制御的。戦略的攻撃システムがある。