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二十五年後の読書
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2018/10/31 |
JAN | 9784104393084 |
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二十五年後の読書
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商品レビュー
3.7
10件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
脊梁山脈以来の乙川優三郎作品。 とにかく、使っている日本語の多彩さ豊富さ適切さに感心する。奇をてらうのではなく、日本語の豊かさで小説を描き切るのは素晴らしい。 比して自分の日本語力のなさよ。こうやってレビューを書いていても自分の語彙の乏しさが悔しくてならない。 物語自体は、どちらかというと退屈な部類である。中年も後期に差し掛かった書評家兼カクテルを愛する女性が仕事と恋と生き方に転換期を迎え、精神を疲弊したなか、南国リゾートで癒され再生をとげる…。それだけの話。 生き方も考え方もスノッブというかちょっと鼻につく主人公のちょっと鼻につく生活に引き込まれてページを食ったのも丁寧できれいな描写のおかげ。文章には(文学には)こういう力があるから侮れない。 物語の後半、彼女が復活の書評に選ぶ本のタイトルが「この地上において私たちを満足させるもの」…なんと、乙川優三郎がこの作品の次に上梓した小説なのである。どういうハードルのあげ方や!是非読まねばならない作品がここにも1作出現した。
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美文調ではなく、よく磨かれた感じの文章を目指すのか。何か繰り返し、現代的な作品への不満が語られているが。 最後が温かな空気になっているから、それが心地よく。よかったなぁ 響子さん。
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ふむ、そう来たか、という最後のオチにニヤリ。 著者作品は、2作目。『ロゴスの市』がとても良かったので、著者得意の歴史ものではなく、同じく“読書”、“本”そのものを題材とした本作を読んでみた。 正直、美辞麗句のオンパレード、そのくせ、ストーリーは遅々として進まず、登場人物も、どこかハイソな縁遠い世界の浮っついた言動が鼻について、感情移入もできずに、なかなか読み進む気になれなかった。 ベテラン作家と男女の関係を続ける書評家が主人公。馴染みのバーの若いバーテンダーとカクテルの品評会にチャレンジしたり、元恋人が亡くなった親戚(従姉妹)の旦那として出てきて復縁を迫ったり、友人のトラベルエイジェンシーの女性が、都合よく海外旅行をアレンジしてくれて、どうもなんだかなーの展開。 話もたいして進まないし、どのエピソードも、それぞれ独立していて有機的に絡んでこない。要所要所に挟まれる、文章表現は素敵ではある。特に、本、日本語、そして今の業界というか作家や書評家に関しての言葉は、いくつも付箋を付けたりもした。 「読ませることを意識して書かれた文章の流れは、それこそ読者に読まれてします。どうにか展開は愉しめるが、なにも残らない。」 「佳作の代わりに気取った顔を売る作家が増えて、仕事を知らない編集者が尻馬に乗ったりする。好学の評論家が世間知らずなら書評や解説も凡庸で、作品の核心すら付けていない。」 「過剰に作家を持ち上げる書評、首をかしげたくなる賛辞、なんの役にも立たない青臭い分析、作家より自身の優秀さを証明したいだけの鼻高な文章などがちらついた。」 若い頃、夢中になって読んだ宮本輝の著作『錦繍』もなんの前触れも、説明もないまま出てきて(作者の紹介もない)驚いた。ずいぶん持ち上げる形で登場させる。 「それは手書きの文学の未来を暗示しているとも言えるし、時代という保護者にも破壊者にもなる無言の圧力を思い出させてくれるものでもあった。」 eメールに取って代わられ、手紙での交流が時代遅れとなり、作家も原稿用紙に万年筆ではなく、ワープロ、パソコン上で創作するようになって、なにか大切なものが失われていることを危惧してのことだろう。以下のように続く。 「欧米の作家の書斎からタイプライターの音が消えて、指先にこめていたなにかが失われてきたのと同じことかもしれない。」 こうして折に触れ、良い作品とは、美しい日本語とは、作家のあるべき姿はいかなるものかを語り、そして、本作の中の登場人物である作家(ちょっと落ち目っぽい)が、1冊の本を書きおろし自分の愛人である書評家の女に読ませる。一読して彼女は呟く 「こんちくちょう、生き生きしやがって」と。 その書物のタイトルが、 『この地上において私たちを満足させるもの』 本作と連作で上梓された作品そのものだ。書評家の彼女をしてこう言わせる。 「もう怪しい魅力的な世界が骨格を持って立っている」 「量産は考えられない薫り高い文章」 「美しい日本語がつづいて、それに勝る言葉など見つかるわけなかった」 おいおい、自分で自分の作品を、ここまで持ち上げて大丈夫か?!と心配になる。 本作は、実は、つまらなかった。 が、この作中作の出来次第で、その評価も変わるかもしれない。『この地上において~』を読んでから、こちらのレビューもすべきかと思ったけど、素直に本作を読み終わったところで、一度書いておく。 この作中作を読むのが楽しみだ。
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