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両方になる 新潮クレスト・ブックス
定価 ¥2,640
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2018/09/27 |
JAN | 9784105901523 |
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両方になる
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商品レビュー
4.2
15件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
いろんなところで賞賛されているのを見て読んだ。ギミックに目を奪われながらも強い物語性を感じる話でオモシロかった。過去と現在をクロスさせながら今の社会における課題を相対化させて小説として表現する語り口の新鮮さがあった。 15世紀のイタリアに住む画家、21世紀のイギリスに住む女の子を主人公として二部から構成されえている。時代も場所も年齢もすべて異なるものの、その二つの物語によってこの小説が完結するようになっていて相互に支え合うようなイメージ。両方ともに魅力があるのだが、個人的には過去パートが好きだった。15世紀の絵描きの生活が中心としつつ幽霊と化して現代へ浮遊する描写があって現在の私たちの生活の奇妙さをアイロニーを交えて描いている点がオモシロかった。たとえばスマホについてはこんな感じ。 *人々がそんな石盤(タブレット)や聖像(アイコン)を覗いたり、そこに語り掛けたり、頭の横に当てて祈ったり、指でなでたり、ただじっと見詰めたりしているのはきっと、彼らの絶望の深さを示しているに違いない だからこそ、彼らは自分たちの世界から常に目を逸らし、熱心に聖像を眺めているのだ* 役割に応じた賃金が支払われない、性別によって差別される。そういった今でも問題になっていることを当時の社会状況に応じて描き出しているのが興味深い。公爵に「私の絵の対価はこんなものではない」と手紙を書く、本当は女性だけど男性でなければ絵描きの仕事がもらえないから男装しているなど。「やっぱ五、六百年前だから前時代的だよね〜」と笑ってられなくて2024年の今でも眼前に同じ問題がある。そうやって時間をスケールにして相対化させて人類の進歩のなさについて、未来への希望とアイロニーで語っているところが好きだった。また句点がないのも特徴的で訳者あとがきで指摘された構造のギミックに対する解釈で納得した。 現在パートも意味深な内容が多く、まずジョージという名前で女の子という時点で察するものがある。この性別に関するギミックが最たる例だがタイトルのとおり両方になる、つまり安易な二項対立に対して懐疑的な視点をいくつも提供している。それは物語のあるべき姿に対しても同様だ。絵画を通じて過去と繋がっていくわけだが、「物語的」な展開に対して鮮やかにカウンターを打っていく姿勢がかっこいい。エンディングは際たる例でメタ性を活かして予定調和に収まらないことによって、新しい物語になるあたりに文学が前進していく気配を感じた。同じく新潮クレストからリリースされている四季シリーズを次は読む。
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15世紀の画家と現代の少女の物語。ト書きのような、頭の中で考えていることをそのまま文字にしたような、リズム感がある短めの文が多く、テンポよく進んでいく。時間も場所もあちこちに移り変わるので、はじめはついていくのが難しい。でも、読み進めていくうちに心地よくなってくるし、2人の物語の...
15世紀の画家と現代の少女の物語。ト書きのような、頭の中で考えていることをそのまま文字にしたような、リズム感がある短めの文が多く、テンポよく進んでいく。時間も場所もあちこちに移り変わるので、はじめはついていくのが難しい。でも、読み進めていくうちに心地よくなってくるし、2人の物語の繋がりが少しずつ見えてくるというのもおもしろい。前半部で何をしているのかよくわからないながらも印象に残った「その様子はまるで幼虫がさなぎから出て羽を伸ばし、大きな回り道を終えた成虫が姿を現しているかのようだった。」という部分は、後半部を読んでから感動してしまった。 『両方になる』というタイトルどおりに相反するものが多く出てくる。「両方というのはありえない。必ずどちらかのはず。」「誰がそう決めたの?どうしてそうでなくちゃいけないの?」二項対立で単純に割り切るのではなく、複雑なものは複雑なものとして受け止めるという姿勢。それがあるから、読んでいて心地よかったのかと思う。
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「バナナが踊っていると、むけていた皮が自然に元に戻り、ティーバッグも踊りだすという広告が流れ、母が決してそのCMを目にすることがないなんて一体どういうことだろう?世界はどうしてこれほどまでにくだらないのか? あの広告が存在する一方で、母がこの世にいないなんて、どうしてそんなことが...
「バナナが踊っていると、むけていた皮が自然に元に戻り、ティーバッグも踊りだすという広告が流れ、母が決してそのCMを目にすることがないなんて一体どういうことだろう?世界はどうしてこれほどまでにくだらないのか? あの広告が存在する一方で、母がこの世にいないなんて、どうしてそんなことが起こりうるのか?」 自分に起こっていることと、周りの世界に起こっていることを比べて、なぜ自分はそうなのかと思うようなことがたまにある。 「実際、そこにいるのは、あなただけではないから。そしてすべてはあなただけに降りかかっているわけではないから。」 作者の考え方が表れているような言葉もあって、読んでいて世界が広がった気がしたし、なにか自分の悩みへの救いになっているような気がした。
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