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ガルヴェイアスの犬 新潮クレスト・ブックス
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2018/07/31 |
JAN | 9784105901493 |
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ガルヴェイアスの犬
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商品レビュー
3.6
19件のお客様レビュー
ねらいは分かるし、細部を書き込んでいく様はよく出来てるんだけど、もう一歩飛躍するところが無いように感じた。 ただ、初読で固有名詞の多さに混乱したところがあるので再読すればもっと本書の魅力が掴めるようになるかも。
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ポルトガルの小村ガルヴェイアスーそこは作者ペイショットの故郷であるー の原っぱに、隕石が墜落する。翌日から嵐のような豪雨が七日七晩続き、そして村は隕石のことは忘れて日常に戻っていった。 隕石が墜落した1984年1月と、10か月後の1984年9月の二部構成でガルヴェイアスの村民が入...
ポルトガルの小村ガルヴェイアスーそこは作者ペイショットの故郷であるー の原っぱに、隕石が墜落する。翌日から嵐のような豪雨が七日七晩続き、そして村は隕石のことは忘れて日常に戻っていった。 隕石が墜落した1984年1月と、10か月後の1984年9月の二部構成でガルヴェイアスの村民が入れ替わり立ち替わりに登場し、彼らの日常そしてそれぞれが抱える記憶と感情ーその多くは不幸と悲しみー が語られていく。 小さな村のこと、人間関係は濃密だ。 誰かのエピソードで触れられた出来事や人物が、別のエピソードでは別な意味を帯びたり、思いがけない事件を起こしたりする。 少しずつ重なりあったそれぞれのストーリーを繋いでいくと、ガルヴェイアスという村の輪郭が浮かんでくる。 1月のパートでは、村に漂う閉塞感や排他性、そして暴力の描写が多く、ガルヴェイアスとその住人達の狭い世界に息苦しさを覚える。 9月のパートになると、既出の人物達の意外な顔を知っていくことになる。また、舞台も旧ポルトガル領ギニア、リスボン、ブラジルへと広がる。 しかし、人々の思いの中心にはガルヴェイアスがいつだって横たわっているようだ。 例えば村出身でブラジルに渡った老娼婦の言葉。 “誰にだって、運命の場所ってもんがあるのさ。誰の世界にも中心がある。 (略)どこにあるかなんて、自分にしかわからないの。みんなの目に見える物にはその形の上に見えない層がいくつも重なっているんだ。自分の場所をだれにかに説明しようったって無駄だよ、わかっちゃもらえないからね。言葉はその真実の重みには耐えられない。そこははるか遠い昔からの肥えた土地、死のない未来へと続く小川の源流なのさ。” 本書の中では、宇宙から飛来して原っぱに轟音をあげてめり込んだものは、『名のない物』としか呼ばれない。絶えることのない硫黄臭と不味くなってしまったパンの味として、常に身近に感じられながらも意識からは忘れ去られてきた『名のないも物』を巡って、ラストに物語は動きだす。 “そして誰もが名のない物のことを思い出した。 犬たちは別だ。犬たちが忘れたことはなかったからだ。(略) 人間は、たとえどれほどの善人であろうと、かほど巨大な真実を受け止め理解できる力を持ち合わせていないのだ。 それでも、理解がなくても、生き続けたのだ” 災厄、理不尽な運命、個人の力を超えた存在。 村の共同体を壊すグローバリズムや時代の荒波、そして戦争の足音。 名もない物に何を読み取るかは色々できるだろう。 でも産まれたての赤ん坊の無垢さに触れて、動きだす人々の歩みは力強く、希望を予感させてくれる。 “そしてもうごめんだと思った。もう何か月も、嘘を繰り返してきたことが信じがたかった。このまま嘘を受け入れ続けたら、そのうちそれを信じるようになり、そしてそれを信じるようになったら、あっという間に自分自身が嘘となってしまうだろう。” “誰もが、それぞれの一歩を踏み出した。(略) 決意を固めた瞬間はそれぞれ違い、それからそれぞれが一歩を出して通りの小石を踏み、それからまた次の一歩を出し、左足を出し、右足を出し、必要な行動を順繰りに取ったのだ。どの足も大きさは違ったが、どの足も大事な足だった。” 村と、不様でもその土地への愛を持って生きていく人々を描写するペイショットのまなざしは、温かくも突き放している訳でもない。言うなればひっそりと耳を傾けて、出来事を丁寧に掬いあげている。だがラストの“ガルヴェイアスは死ぬわけにいかない”の一文には、心に響く想いが溢れている。
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ポルトガルの小さな村、ガルヴェイアスにある日「名もない物」が落ちてきた。 それは途轍もない異変だったはずなのに、人々はそれを忘れてしまう。なぜかというと、村人たちにとって、「そのなにものか」はどんなに膨大なスケールであろうとも、「名前の無いなにか」、漠然とした存在にすぎない。そ...
ポルトガルの小さな村、ガルヴェイアスにある日「名もない物」が落ちてきた。 それは途轍もない異変だったはずなのに、人々はそれを忘れてしまう。なぜかというと、村人たちにとって、「そのなにものか」はどんなに膨大なスケールであろうとも、「名前の無いなにか」、漠然とした存在にすぎない。そんな曖昧なものよりも、妻や子や夫や兄弟、想い人や遠い地の愛しい人、彼らと密接する日常のほうがはるかに濃密で、確固とした名前と存在に満ちていたからだ。他愛もない日常、どこかばかばかしくもある諍い、いとしさに満ちた筆致で細やかに描かれる日々は、不穏さを含みながらも生きる力に満ち満ちていて、とても好ましくやさしく受け取れる。 けれど硫黄の匂いでつねに存在を暗示しつづけたように、「名もない物」は確かに脅威だった。 村人たちはそれをやがてみな思い知る。そして、「それ」に対峙する。 浸りきっていた淀みから足を引き抜くまでを、丹念に繊細に描いた、これは確かに小さな村で起こった「黙示録」。 何度となく描かれる、朝が訪れるまでの夜明けの描写がとりわけ美しく、作者は実際にこのひとときがとても好きなのかな、と思いました。
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