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心の進化を解明する バクテリアからバッハへ
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 青土社 |
発売年月日 | 2018/06/25 |
JAN | 9784791770755 |
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心の進化を解明する
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人間が有史以来考え続けてきた問題の一つに、心とは何か、という命題がある。 ヨーロッパでは、デカルトが心と身体を分けて捉え始めたことで、近代の幕が上がったと言う。 21世紀となった今、人工知能の技術が著しく進歩してきたことで、改めて心の問題を扱った言説や書籍が目に付くようになってき...
人間が有史以来考え続けてきた問題の一つに、心とは何か、という命題がある。 ヨーロッパでは、デカルトが心と身体を分けて捉え始めたことで、近代の幕が上がったと言う。 21世紀となった今、人工知能の技術が著しく進歩してきたことで、改めて心の問題を扱った言説や書籍が目に付くようになってきたと思う。 脳科学の分野では、いくつかの方向性で研究が進んでいるが、工学寄りの研究は、脳のニューロンの構造をリバースエンジニアリングしようという試みが進められているようだ。 要は、脳活動は電気信号の集積であるから、ニューロンのつながりを再現すれば、脳活動すなわち記憶や思考を移植できるのではないか、というもの。 脳活動を非侵襲でスキャニングしようという研究はかなり進んできていて、その人の見たイメージを再現できるところまできている。 こういったアプローチは、人工知能がいずれ本当の知能・自我を持つ日が近いのではないか、という危機感をあおる一端ともなっているのは否めないし、中には(無責任にも)そのような可能性を吹聴する専門家もいる。 しかしながら、そういった考えは、もう一方の認知科学のサイドでは少数意見として扱われているように見える。 デカルトの二元論にあまりに固執しすぎた見方であり、二元論が限界を見せているという事例が科学のいたるところで見られつつあるということからも、安直すぎると言えなかろうか。 認知科学の大家であるダマシオは、次のように語る。 「心は、ホメオスタシスの指令のもとで実行される、神経系と、それに関連する身体部位の協同作戦によって複雑な形態で出現し、あらゆる細胞、組織、器官、システム、さらには各人におけるそれらのグローバルな表現のなかに顕現する。意識は生命活動に関連する相互作用の連鎖から生じる。」 ダマシオは、生命活動の基となっている摂理として「ホメオスタシス」を重視している。 このホメオスタシスに則って、現時点で進化の行きついているところが、神経系とそれ以外の器官との相互作用によるイメージ・主観の発生と、結果としての心である。 逆に言えば、心=神経系だけでは心は生まれようもない、生まれる必然がないというのだ。 本書は、心の起源について語るとともに、一貫してホメオスタシスが生命に通底していることに触れており、その点がとても興味深かった。AI隆盛の現代で読むべき良書だと思う。 一方、後半の文化に関する記述は、まだ生煮えな印象も受けた。こちらは先日読んだ「心の進化を解明する」のミーム論の方が面白く読めた。
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人間がなぜ他の生物と異なり,高度な知性,すなわち理解力とデザイン力を獲得するに至ったかを,主に進化生物学の視点で概観した大著.著者の専門は哲学で,内容として難解な部分もあるが,話の基盤となる進化生物学に加えて,計算機科学などの知見も交えて,知的好奇心をくすぐる内容になっている.2...
人間がなぜ他の生物と異なり,高度な知性,すなわち理解力とデザイン力を獲得するに至ったかを,主に進化生物学の視点で概観した大著.著者の専門は哲学で,内容として難解な部分もあるが,話の基盤となる進化生物学に加えて,計算機科学などの知見も交えて,知的好奇心をくすぐる内容になっている.20世紀後半以来の計算機科学の目覚ましい発展によって,機構全体を構成する個々の要素は単純極まるものでありながらも,それが組み合わさることにより,高度な処理を行えることが示され,これは進化論における大きな間隙であった,設計者なき世界で知性の発達が可能か否かの議論にも影響を与えた.しかし実際のところ脳は個々のニューロンそれ自体が生物として,自身の適応を第一として活動するものの総体というボトムアップ型の組織である一方,コンピュータはすべての構成部品が画一的で,上からの統制により全てが制御されるトップダウン型の組織である.著者の考えるところでは,脳それ自体はヒトの進化の初期には今日のような理解力を獲得していなかったが,言語の登場によりミームがヒトの脳を媒介として,結果ヒトとミームの共進化が進んで,ヒトが自省能力や,他者との適応的戦略の共有能力を獲得し,ダーウィン的な進化のスピードが飛躍的に向上して,今日あるトップダウン的理解力に達したとする.本書ではヒトの高度な知性の唯一性を主張しているが,一連の主張はどちらかというとヒト以外の生物に見られる,「賢い」挙動に対して,当事者の理解力や知性を帰属させる試みを戒め,それらが「理解力なき有能性」により獲得されたものと説明できることを,むしろ事あるごとに強調している.同時に,ここまでは知性・意識でそこから先はそうでない,といった線引きが,実際の進化過程が漸進的なものであることから,ナンセンスであることも,併せて強調されている.全体として非常に興味深かったが,結局なぜ人間だけが言語を獲得できたかという部分に関しての理解は今ひとつ進まず.ミームや進化に関する別の本を読んでからもう一度読み直したい.最後に,訳や注が非常に丁寧なのは良かった.和訳というより,原著を注釈つきで読んでいるような感覚で,内容の理解が進んだ.
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読書の時間が満員電車で吊革につかまりながらの1時間に限られるため、購入した直後は「本当に俺こんな本読むんかいな」と後悔しきりだった。なにせ訳注含め700ページ長のハードカバー、片手で持つのはもはや苦行の領域。しかし額に汗し、行きつ戻りつ読み進め何とか最後までたどり着いた今は、ここ...
読書の時間が満員電車で吊革につかまりながらの1時間に限られるため、購入した直後は「本当に俺こんな本読むんかいな」と後悔しきりだった。なにせ訳注含め700ページ長のハードカバー、片手で持つのはもはや苦行の領域。しかし額に汗し、行きつ戻りつ読み進め何とか最後までたどり着いた今は、ここ数年で最大の読書的果実を味わえたとの意が強い。 本書の目論見の一つは、デカルト的二元論に引き裂かれた我々の意識に対する認識を再びブリッジしよう、というもの。そこに至るまでに読者は幾つもの大きな認識の転回を経験することになる。まずダーウィンの自然選択とテューリングのコンピュータから抽出される「理解力なき有能性」という逆説めいた概念。さらに非知性的なダーウィン的進化の過程そのものが、ダーウィン的自然選択を受けた結果として「脱ダーウィン化=トップダウン式知的デザイン」に至るという倒置。そしてその知的デザイナーが用いる思考道具(e.g. 機械学習)により、再びボトムアップ的なアルゴリズムを用いてダーウィニズムへの回帰がなされるという循環。著者によれば本書には「三つの転回」があるとされているが、私にとっては「え、本当に三つだけだっけ?」と思えるほど、自分の認識が大きくひっくり返されることの連続だった。「鶏が先か卵が先か」の議論、例えば「言語」と「文化」になると必ず「共進化」の概念が出てくるあたり、やや御都合主義的な香りがしなくもなかったが、個人的には自然選択そのものが自然選択的過程の中にあるというマンデルブロー的な構造の連環に、目眩のするような美しさを感じた。 終章の「私たちの旅は(中略)長く入り組んだ旅程だった。でくわした地域の一部は哲学者が滅多に旅しない場所であり、また別の地域は、哲学者がたむろしているが、典型的な科学者は避けて通る場所であった」という言葉が、本書の扱う領域の特異性とスリリングさをよく表している。なにせ、この過程で言及される、いわゆる伝統的な哲学者はデカルトとヒュームくらい。引用される学術的成果は言語学、コンピュータ科学、生物心理学、進化心理学など多岐にわたっており、これだけを見てもいかに著者の扱う領域が横断的であるかが理解できる。 理論は一部混み入っており難解な部分があるのは間違いないが、それでも私がなんとか読み進めることができたのはこの本のユーザー・フレンドリネスによるところが大きい。まず新奇性の高い概念が導入される場合、必ず直後に親しみやすく平易な事例が掲出されるのがありがたい。著者の語り口にも高踏的なところがなく、語りかけるような文体が読む者を勇気づけてくれる。さらに翻訳者の技量と親切さを忘れてはならないだろう。巻末の膨大な訳注では訳語選択の理由が丁寧に記述されており、相当に理解の助けになった。訳文も全く不自然なところがなく、途中から翻訳であることを完全に忘れることができる。入試の現代文の問題に最適なのではと思う。 「志向的構え」「浮動理由」「外見的イメージ」…。デネット独自の取っつきにくい用語満載の本書だが、予備知識もなく理解もせぬまま読み進んでも、大量の曝露を受けるうち不思議なことにこれらの用語の意味をある程度了解できていることに「後から」気づく。これもある意味、デネットのいう「理解力なき有能性」「リバースエンジニアリング」の顕現の一つなのかも?
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