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ノスフェラトゥの生贄(上) クリス・ブロンソンの黙示録 4 竹書房文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 竹書房 |
発売年月日 | 2018/06/07 |
JAN | 9784801913561 |
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ノスフェラトゥの生贄(上)
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商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
・ジェームズ・ベッカー「ノスフェラトゥの生贄」(竹書房文庫)は 結構まともな吸血鬼譚であつた。こんな書き方をするのは、竹書房文庫といふものに対する私の偏見による。さう、この文庫はキワモノが多いと思つてゐた。これまで読んだ何冊かはさうだつた。読んで損したとは言はぬまでも、何だこんなものと思つたことは確かである。ところが、これはさうではない。おもしろく、そしてまともなのである。「この小説のプロローグでは、シュバルツェンベルク家のエレオノーラ・アマーリア公女の葬儀の模様が語られているが、ほぼ全面的に史実に基づいたものだ。」(「著者あとがき」下241頁)この場面は公女の葬儀とは思へない簡素さ、いや異常さである。公女ともどもこの物語のために作られたかと考へたくなるのだが、実はそうではなかつた。公女は実在し、吸血鬼として葬られた(同前)といふ。その公女が物語の最後で、「ニコデマ・デルー カその人の頭蓋骨を見よ(中略)エレオノーラ・アマーリア公女の真正なる子孫の頭蓋骨を」(下171頁)と出てくる。物語の言はば鍵となる人物であつた。 ・物語の舞台は現代のヴェネツィアである。主人公のブロンソンと元妻アンジェラがサン・ミケーレ島の一つの墓の崩落に出会す。そこでアンジェラが古い日記を見つけたのが事件のきつかけとなる。これ以後、ホテルの部屋を荒らされたり、道で襲はれたりする。最後は、アンジェラの職業柄、ラテン語ができたためにいづこにかさらはれていく。ここまではアンジェラの歴史に対する知識が披露され、それが物語を深めてゐるのだが、ここからはアンジェラの訳すラテン語が物 語を導く。といつても、問題の文書は短い。だから、そんなに時間はかからない。その間、ブロンソンはアンジェラを捜す。現職の刑事だから、かういふのはお手の物であるのかもしれない。しかし、ヴェネツィアである。勝手知つたるとはいかない。そんな中でたつた一人で敵に立ち向かふ……かうなると、もはやこの種の物語の定番といふか、定石通りではないか。さう、ブロンソンはアンジェラを無事に助け出すのである。かうなるに違ひないと分かつてはゐても、その先が 気になることはまちがひない。安直である。そんなわけで、この物語はこのての作品によく見られるご都合主義の物語、あるいはスーパーヒーローの物語であらう。ただ、さうでないとおもしろくないとは言へる。それにも関はらず、私がこれを結構まともな吸血鬼譚と評するのは吸血鬼に対する記述による。「著者あとがき」には「真実の吸血鬼年代記」といふのがあり、カインやリリスから始まつて先の公女、そしてゴシック小説等以降の世界にまで及ぶ。吸血鬼の流れを簡潔 にまとめてゐる。かういふのを踏まへてこれが書かれたのである。物語の中で何か分からない「乳」が出てくる。これは狼の「乳」であつたが、これも公女との関係で説明がつくらしい。「古くから療法として伝えられてきた(中略)狼の乳は女性の生殖組織を強化し、男の子を産む力となると信じられてきた。」(下 243頁)だから公女は「乳」を飲み、それを誤解して〈儀式〉でもこれが使はれたのである。また、物語の司祭らしき男は吸血鬼なのであらう。さう思はせる のは腐臭や容姿である。これなどは昔からのイメージをそのまま使つてゐると言ふべきか。力も強かつたりするからなほさらである。そんなわけで、おもしろく読んだ「ノスフェラトゥの生贄」、本書は「クリス・ブロンソンの黙示録」その4であつた。アンジェラも出てくるらしい。かういふ作り方なら結構おもしろい かもと思ふ。他のも読んでみようかと思ふ次第、如何。
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