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降霊会の夜 文春文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
発売年月日 | 2018/06/08 |
JAN | 9784167910815 |
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商品レビュー
3.4
8件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
読み終えてみればホラーのようでもありひとりの男の告解でもある。 長き人生の間には様々な出会いはあるが、誤解や勘違いが積み重なって辛い思い出となることも多いし、別れ際の一言が呪いのように生涯ついて回る場合もある。 気軽に読める一冊、というよりはモヤモヤがいつまでも纏わりつく本でした。
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雷の夜に助けた女性から雨宿りのお礼にと、降霊会に誘われた主人公。 そこで忘れかけていた自身の過去に思わぬ再会することになる…。 前半は、同級生のキヨをめぐる霊たちとの再会を描く。 裕福な家庭で育った主人公のゆうちゃんは、貧しいキヨに対して疎ましさと後ろめたさを感じ、どこか溝を作ってしまう。 戦後復興期、大人も子どもも必死に生きている中、誰も救うことができなかった子の哀切が胸に迫る。 そして、学生運動が盛んな時期、自堕落な青春の中で出会った恋人の霊を呼び出そうとする後半。 若さゆえの傲慢さによって愛することも愛されることも自ら手放した主人公。 時を経てもどこか独りよがりな主人公が過去と向き合った時、残ったのは救済ではなく鉛のように重い悔恨の念。 どこか虚しさの残るラストは後味が悪くほろ苦かったです。
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ズシンと重い物語だった。 浅田次郎の王妃の館の次に読んだので殊更にギャップがキツい。 主人公の短い幼い日の、そして生涯忘れるこたができなかった山野井清(キヨ)という少年のいじましさ。最期、父親に甘えるようにお願いしたことが、子犬に名前を付けてあげて、そのあとは捨ててしまっても良...
ズシンと重い物語だった。 浅田次郎の王妃の館の次に読んだので殊更にギャップがキツい。 主人公の短い幼い日の、そして生涯忘れるこたができなかった山野井清(キヨ)という少年のいじましさ。最期、父親に甘えるようにお願いしたことが、子犬に名前を付けてあげて、そのあとは捨ててしまっても良いから。という言葉。シベリア抑留の父親の体験を聞き、もう捕まって欲しくないと願った少年。当時でも簡単にはその想いに思い至らないのなら、戦争から遠く離れた今は尚更だろう。見守ってくれるお月様でなく、まっすぐ解決してくれる太陽が欲しかったのか。胸に突き刺さる言葉だった。時代が変わっても今も本質的に同じことが起こっている。 この前半でもだいぶお腹一杯なのだが、後半は主人公の恋愛(百合子の描写で室生舞を思い浮かべた)。インバイトしたい人でなく、想いが強い霊魂が集まって来てしまう。真澄がボロボロになるまで愛するほど主人公の男に魅力があるように思えないが、本人もそう感じているのでは?だからどこか、見て見ぬふり、言わざる、聞かざる、という本書にあるような江戸っ子の粋のもう一つの顔で、絶妙な距離感で人と接してるのではないか。幼少期、主人公の祖母が生々しい現実を突きつけてくれたが、キヨの壮絶な最期を目の当たりにして無意識に辛い現実を避けてきたのかも。一方、本当にcold heart の持ち主なら、そもそもこの降霊会に参加することはなかったのではないか。不思議なエンディングは主人公に死期が迫ってるからかもしれない。 そして読者も自身の悔悟を振り返らざるを得なくなる。私も、過去も、今この時も自分の平穏を守るために、気付いていながらも距離をとっているものがあるのではないか。戦争の犠牲者という時間も関係性も遠い人たちだけでなく、もっと身近な人たち。 そんなことをまっすぐ突きつけてくる、胸がえぐられる物語だった。
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