スタディーズ密教 Studies Buddhism

勝又俊教(著者)

• 販売会社／発売会社: 春秋社
• 発売年月日: 2018/05/23
• JAN: 9784393134351

商品レビュー

2025/05/08

密教の定義と名称：
密教は「バジューラヤーナ (vajrayāna)」、訳して「金剛乗」と呼ばれることがある。「密」は「秘密 (guhya)」という意味で、この言葉を訳して「秘密」あるいは「密」と使うようになったことから「密教」と呼ばれる。
密教は、大乗仏教の発展の延長線上に位置づけられ、最も優れて素晴らしいものと評価されている。
密教経典の成立と特徴：
密教経典はインドで独自に発展し、特に原始仏教時代の呪術や祈願といった要素が密教思想の中に立ち入り、独自の展開を示している。
密教経典の数は膨大で、時代によって成立した文献の数も異なる。中国で翻訳された漢訳仏典の中にも多くの密教経典が含まれている。
密教経典の分類として「胎蔵法部」と「金剛頂部系」が代表的である。
密教経典には陀羅尼（ダーラニー, dhāraṇī）に関するものが非常に多く、多くの経典の題目に「陀羅尼」という言葉が含まれる。
密教経典は単に仏さまを礼拝するだけでなく、特定の修法や法具、作法を定めている点が特徴である。これは、信仰の対象に対して何かしらの働きかけを行い、現実的な利益を追求する姿勢とも関連している。
中国密教の成立：
中国密教は、インドから高僧が来朝し、密教経典を翻訳・伝播することで成立した。特に善無畏、金剛智、不空が重要人物として挙げられている。
善無畏は『大日経』などを翻訳し、中国密教の基礎を築いた。
金剛智は多くの密教経典を翻訳し、密教の教えを広めた。
不空は多くの密教経典を翻訳し、唐の玄宗皇帝の支持を得て密教を発展させた。
これらの高僧たちの活動により、中国密教は独自の宗派として確立した。
密教思想の多様性：
密教は顕教とは異なり、教判において独自の分類を持つ。空海の『弁顕密二教論』では、顕教と密教を比較し、密教が優れていることを説いている。
空海の「十住心」の教判思想は、段階的な心の発展を示し、最も深い段階を密教としている。
密教の仏陀観は多様であり、歴史的な仏陀である釈迦如来だけでなく、法身仏である大日如来を中心とした統一的な仏陀観を持つ。大日如来は様々な仏尊に現れ、その姿も多様である。
密教の曼荼羅は、仏の世界を視覚的に表現したものであり、大日如来を中心とした胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅が代表的である。
即身成仏への道：
密教の重要な思想の一つに「即身成仏」がある。これは、長い時間をかけずとも、この身このまま現世において成仏できるという考え方である。
空海は『即身成仏義』において、即身成仏の理論と実践の体系を明らかにしている。彼は「六大無礙にして常に瑜伽なり、四種曼荼各々離れず、三密加持すれば速疾に顕わる、重々帝網なるを即身と名づく」と説き、即身成仏の根拠を示した。
即身成仏への道として「三密加持」の実践が重要である。これは、身密（手印）、口密（真言）、意密（観想）の三つの秘密の実践を仏の三密と一体化させることである。
菩提心を持つこと、特に密教における「菩提心戒」を保つことが即身成仏の基礎となる。菩提心には、信心、勝義心など様々な側面がある。
月輪観や阿字観といった観想の修法も即身成仏の実践として重要である。
密教の特性：
密教の特性の一つは「象徴性」である。密教は、通常の仏教では理解しがたい深遠な世界を、形やシンボルを用いて表現している。
密教の特性として「修法」が挙げられる。様々な儀式や修法を行い、現実的な利益や目的の達成を目指す。
密教の特性として「呪」や「陀羅尼」の使用がある。これらを唱えることで功徳が得られると信じられている。
密教は「攘災招福」や「即身成仏」といった現世利益的な側面も持つ。

2023/02/20

密教とはなんぞや、の初学本と思われる。
ざっくり200ページ中大体100ページくらいまでは平易な導入、後半は密教用語が多く辛かった。
ざっと流して読んだ限り、外観が掴める本に見えるので、ゆっくり読み返してちゃんと理解したい一冊。

2018/07/15

　密教というのはその字面もあって神秘主義と結び付けられやすいが、仏教の本質(秘密)を明らかにし、多くの人に分かりやすくまとめ、そして実践的な仏教を目指したものであることが本書を読むことで見えてくる。後半はやや筆が走っているものの、独自の解釈を加えずに空海の考え方、経典や曼荼羅の読み方を解説しているので密教がどういうものであるのかを、きちんと学ぶことができる。