お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ

大村大次郎(著者)

• 販売会社／発売会社: ビジネス社
• 発売年月日: 2018/03/09
• JAN: 9784828420158

商品レビュー

2025/07/15

これはおもしろい。今まで私には考えつきもしなかった視点から明治維新を読み解くと、こんなにいろんなことが説明できるんだと思った。幕府も諸藩も経済的には破綻寸前だったが、薩摩と長州は早い時点で財政再建を果たしていたために、大きな活躍ができたとか。竜馬は脱藩した浪人だったから中立の立場で、ビジネス的思惑とか自分のビジョンに従って長州が武器を買うときの取次ぎをしたり土佐藩を助けたりしたとか。贋金作りで利益を捻出した藩もけっこうあり、結局はそれに成功したところが明示新政府の中心を担うことになったとか。大政奉還には幕府の財政破綻が、そして江戸城の無血開城は攻めるほうの軍資金不足が関係していたとか。

「おわりに」で、明治維新は、それまで特権階級であった武士がその特権を自ら捨てたことが西洋諸国の市民革命とはまったく違うと指摘されている。これが明治維新の偉大さだそうだ。翻って現在の日本を見れば江戸時代以上の既得権益にまみれていると筆者は言う。故安倍首相をはじめ各界の要人たちに「もし明治維新の精神に戻ると言ういうのなら、あなた方の持っている既得権益を手放して国民全体に開放しなさい」と訴えたいというのには心からエールを送りたいと思った。

それにしても当時でも諸外国と契約を交わしたり、贋金のことでトラブルになったりしているのだから、通訳の存在は欠かせなかったと思うが、通訳はどのくらいいたのだろうか。オランダ語については専門の家があって、代々通訳を家業としていたらしいが、英語、フランス語、ドイツ語などはどうしたのだろう。たしかドイツ語はシーボルトも通訳をやったらしい、それから英語は福沢諭吉も通訳をやったというが、満足に教材もなかっただろう当時の通訳のレベルが知りたいものだ。誤訳もずいぶんあったのではなかろうか。

2021/09/02

国税局の役人から、経営コンサルタントに転じた著者。明治維新を経済、と言うより「金のあるなし」の観点から論じた本。維新の行動の背景に常に金に纏わる当事者達の悩みがついて回り(無論、それだけではないだろうが)、「金が無いから」こんな行動を取った、という分析が面白い。

締めくくりがよかった。明治維新とは、それまで既得権益を持っていた武士達がその権利を手放すことで世の中の仕組みを変えたのだ、と。そういう見方もあるなと感心したと同時に、正確には「既得権益を持っている武士階級を、持てなかった下級武士達が取っ払った」のではなかろうかと。

実際、維新後に経済的、また精神的(武士だったプライド)に恩恵に預かれなかった旧士族達が反乱を起こしている。

そう考えると明治維新というのはやはり革命だったのかもしれない。既得権益による理不尽を打破し、より良い世の中にしようとする人達による革命だったのだと。

2021/01/08

関ヶ原の戦い（1600年）から戊辰戦争（1868年：明治元年～1869年）までは250年以上を経ている。恨みというものはつくづく恐ろしい。戦争や虐殺の傷は歴史に長く留（とど）まる。民族の相違を簡単に乗り越えることが難しいのも歴史的理由によるものなのだろう。
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