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誰のために 新編・石光真清の手記 四 ロシア革命 中公文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2018/02/01 |
JAN | 9784122065420 |
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誰のために
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ロシア革命後に陸軍嘱託としてブラゴヴェシチェンスクおよびアムール川を挟んだ対岸の黒河に特務機関を設置して情報収集に当たった時期について書いたもの(本文に特務機関という語はない)。 ボルシェビキの地域代表者や、反革命を謳う元の市長やコザック部隊、ドイツ=オーストリア(独墺)軍の捕虜...
ロシア革命後に陸軍嘱託としてブラゴヴェシチェンスクおよびアムール川を挟んだ対岸の黒河に特務機関を設置して情報収集に当たった時期について書いたもの(本文に特務機関という語はない)。 ボルシェビキの地域代表者や、反革命を謳う元の市長やコザック部隊、ドイツ=オーストリア(独墺)軍の捕虜から転じて赤軍に協力する部隊、独墺からの独立運動を行うチェコスロバキア兵、といった勢力が割拠するシベリアが描かれる。 長年にわたってブラゴヴェシチェンスクに在住していた日本人たちの自警団は陸軍から武器の援助を受けていたため、反革命勢力から自警の範囲を越えた協力を求められ、赤軍に包囲された戦闘で犠牲者を出す。 石光は軍属として影響力を及ぼすが、その結果を悔やむ(とはいえ、明確な指揮権はないようだ)。 結局、チェコスロバキア兵救援という名目でシベリア出兵が行われるが、反革命勢力の救援という現地の期待とは違い、ブラゴヴェシチェンスクにやってきた日本軍部隊は暴行略奪を行い失望を買う。 石光は現地の不満と陸軍との板挟みになり、ウラジオストック派遣軍の司令官に窮状を訴えるも「日本軍に忠告に来たのか」と難詰され、職を辞す。 ボルシェビキの代表者も、元市長(反ロマノフではある)も、一介の人物であり彼らとの交流は意見の相違を超えた交際であった。 しかし、ボルシェビキの代表は日本軍に捕らえられて逃走を図って射殺され、元市長も赤軍の優位が明確になり亡命し、石光も失意のまま去る。 その後の石光は錦州で行っていた事業も破綻し、三宿にあった三等郵便局長の地位も「特定三等局になったので解任」され、自費で整備した施設は二束三文の賃料で召し上げられた。 一人で子供を育て、経済的にも窮乏していた妻は身体を壊していた。 本人も家族もなんら報われることのない満州生活が終わったところで全4巻完結。 公開を予定していなかったメモだけに、生々しさに満ちている。シベリア出兵の現場感覚での無謀さとだらしなさはもちろん、石光が帰国途上にハルビンで出会った亡命ロシア人の3人娘たちの様子なども、私的メモだからこそのリアルだろう。
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・東京に留まることを家族から望まれながら幾度も大陸へ「帰って」いく真清の姿を鏡として、自分は家族を幸せにできているのか自問せずにいられない。食べていくに困らない給料をもらい、平日は子供が寝る前に帰宅し、週末はどこか少し遠出をして好奇心を満たす、そんな平穏な日々を過ごせている幸せ...
・東京に留まることを家族から望まれながら幾度も大陸へ「帰って」いく真清の姿を鏡として、自分は家族を幸せにできているのか自問せずにいられない。食べていくに困らない給料をもらい、平日は子供が寝る前に帰宅し、週末はどこか少し遠出をして好奇心を満たす、そんな平穏な日々を過ごせている幸せを自覚した。 ・シベリア出兵の政策的欠陥についても考えさせられる。領土拡張を目的とする出兵であったなら戦線を広げすぎたし、戦力の逐次投入は避けるべきであった。連合国との国際協調及び革命思想の伝播阻止を目的とするなら、ロシア反革命勢力を一貫して支援し、連合国の不信を惹起する過剰戦力の投入は避けるべきだった。そもそも、英仏は対独戦争を優位に進めるため東部戦線を復活させたかったに過ぎないのだから、これを見越してプランを練っておく必要があったはずである。明確な出兵目的の欠落が、行き場を失った兵士のモチベーションとモラルの低下につながり、現地民に対する掠奪・暴行を招いたのではないだろうか。
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たぶん、当時から克明に付けていた日記などを元にして書かれたのであろうが、それにしても驚嘆すべき記憶力と記述力である。つまりは、こういう人だからこそ、大陸での諜報任務に就くことができたのであろう。事実は小説よりも奇なりというが、まさにそれを裏付ける稀覯の書である。
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