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シャハト ナチスドイツのテクノクラートの経済政策とその構想
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シャハト ナチスドイツのテクノクラートの経済政策とその構想

川瀬泰史(著者)

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シャハト ナチスドイツのテクノクラートの経済政策とその構想

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 三恵社/JRC
発売年月日 2017/08/01
JAN 9784864876940

シャハト

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2022/05/29

ヴァイマル共和国政権からナチス政権を通して、さまざまな経済政策に携わったヤルマール・シャハトに関する研究書。シャハトの評伝は、ジョン・ワイツ『ヒトラーを支えた銀行家』しか邦訳が出ていなかったが、この本では、短い評伝と共にシャハトが行った政策についての詳細に述べられている。 本書...

ヴァイマル共和国政権からナチス政権を通して、さまざまな経済政策に携わったヤルマール・シャハトに関する研究書。シャハトの評伝は、ジョン・ワイツ『ヒトラーを支えた銀行家』しか邦訳が出ていなかったが、この本では、短い評伝と共にシャハトが行った政策についての詳細に述べられている。 本書では、シャハトが行った経済政策として、ヴァイマル共和国期のハイパーインフレーションの鎮圧、ナチス政権での貿易統制策である「新計画」、ナチスの軍拡を支えたメフォ手形などが取り上げられている。シャハトは、レンテンマルクの発行案の作成自体には関わっていないこと、当時の彼は飽くまで通貨委員であり、ライヒスバンク総裁ではなかったこと、またメフォ手形で用いられた政策スキームはそれ以前から同じような政策スキームの雇用創出手形が存在したことから、シャハトは何もないところから新しい政策を生み出す「魔術師」といったものではなく、あらかじめ決まっていた政策を滞ることなく実行する優秀なドイツ・テクノクラートであったことがわかるだろう。 また、シャハトと同時代の経済学者であるヒルファディングとケインズ、そして独裁者ヒトラーとの比較から、シャハトの経済思想が浮かび上がってくる構図となっている。ヒルファディングが20世紀型の社会主義国家、ケインズが福祉国家を構想として抱いていたのに対して、シャハトは19世紀型の夜警国家を理想視し、その経済思想の中心には金本位制維持と緊縮財政が据えられていた。シャハトは社会福祉政策を人々の自力救済能力を削ぐものとして徹底的に敵視していたこと、メフォ手形は飽くまで軍拡のための「非常手段」であり、均衡財政を「正常な経済体制」として政府の借入による赤字支出を肯定していなかったことから、「シャハト=ケインズ政策の先駆者」という通俗的な見方が本書では否定されている。シャハトは、ヒトラーと同様に原料基地、販売市場、食糧供給地として植民地を持つべきと考えていたが、ヒトラーが武力による東方の生存圏の獲得を目指した一方で、彼は、第1次世界大戦の戦勝国との交渉から旧植民地を取り戻して、国際貿易体制を維持しつつ、加工貿易立国論を唱えていた。この路線の違いから、シャハトはヒトラーと鋭く対立して、後に失脚したという指摘は面白かった。 論文をまとめた本であるので若干読みにくいが、これさえ読んでおけば、シャハトの人生と彼が関わったヴァイマル共和国・ナチス体制下での経済政策について概ね知ることができるだろう。本書は、シャハトに関する日本語で書かれた本がほとんどないなかで貴重な本であろう。

Posted by ブクログ

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