サリヴァンの精神科セミナー

ロバート・G.クヴァーニス(編者), グロリア・H.パーロフ(編者), 中井久夫(訳者)

• 販売会社／発売会社: みすず書房
• 発売年月日: 2017/07/01
• JAN: 9784622086352

商品レビュー

2018/02/19

アメリカの精神科医H.S.サリヴァンが行ったケーススーパービジョンの記録で、多方面の理解と協力によって、膨大な量の逐語的な記録と逐語的な解説が余すところなくほとんど編集されずに記されている。

セミナーが持たれたのは1946~47年だが、内容的には今なお新しい部分を多く見ることができるし、現代的な意味合いはほぼ訳者あとがきで丁寧に補足されている。
特に「それはどういう意味で言っているのか」を突き詰めていく作業が個人的にはとても勉強になった。

本書に記された治療は個人面接と水治療、OT、PTのみによる精神医療の最後の記録ということだが、薬物療法が飛躍的に進歩した現在、精神医療は患者の話を聞かなくなったのだな、という感想を持った。
　その分、コメディカルや福祉業界がその役割を負うことができれば良いと思うのだが、本書のような水準とまでは行かずとも、テクニカルに、かつじっくりと患者の話を聴くために、非医師も本書を読まれると良いと思う。

最後に、本書は訳本としても素晴らしいというか、頭注と訳注、そして何より口語の文体が、難解な本書を格段に"読める"本にしている。