図説 アーサー王と円卓の騎士 その歴史と伝説

マーティン・J.ドハティ(著者), 伊藤はるみ(訳者)

• 販売会社／発売会社: 原書房
• 発売年月日: 2017/06/13
• JAN: 9784562054176

商品レビュー

2024/08/19

中世の騎士物語といえば「アーサー王物語」は外すことができません。

「アーサー王物語」といえばその内容は知らずとも一度は聞いたことがある名前ですよね。

そして実はこの物語の中であの有名な「円卓の騎士」や「聖杯伝説」、「聖剣エクスカリバー」が語られます。これは興味深いです。

図版も多数ですので視覚的にも優しい作りとなっていますので読みやすさも抜群です。

アーサー王入門に最適の一冊だと思います。これは非常にありがたい作品でした。

ぜひおすすめしたいガイドブックです。

2024/06/26

アーサー王物語関連は何冊か読んだけれど、特に構成が面白かった。
これまで読んできた本は、冒頭に「アーサー王は実在したのか？そのモデルは？」という現実の歴史の問題に切り込み、そのあと物語の内容が紹介される。
この本もそれと似ているが、単にモデル候補をあげるのではなく、物語に描かれた文化や武器などの要素のチグハグさにも触れる。
それは本書で触れられるので、仮に日本史で例えるなら、
「飛鳥時代頃にモデルとされる人物がいたっぽい」
「描かれている社会は鎌倉時代、御家人·武士団がメインキャスト」
「登場するアイテムやビジュアルは戦国時代の当世具足や石垣と天守閣のある城(ただし近現代をイメージさせるような銃砲…火縄銃とかは無し)」
日本をよく知らない外国人のかいた不思議な日本！という感じだけれど、これが海外のアーサー王物語。しかもそれが本当の歴史として信じられていたと思うと…。

その後の物語の説明も面白い。
「疑似歴史の流れ」
「アーサー王の出自と人生」
「騎士たちの冒険」「聖杯探求」
「アーサー王の死」
を扱うが、これらの内容紹介には古い順に文献をあてて紹介している。
「ブリタニア列王史」からはじまって、クレティアン・ド・トロワ、聖杯探求物語、トマス・マロリー、と言う具合。
この並び方は結構理にかなっていて、アーサー王本人の物語が、時代を経るごとに騎士たちの話がメインになり、キリスト教要素が強くなり、やがてそれらをまとめて整えるマロリーが現れる…という物語発展史にもなる。
最後には現代の映像作品を含む展開を盛り込んでいるのも、流れの一つになる。
アーサー王物語史、といってもいい、面白い一冊だった。