みんなの検索が医療を変える 医療クラウドへの招待

イラド・ヨム・トフ(著者), 山本久美子(訳者), 石川善樹

• 販売会社／発売会社: NTT出版
• 発売年月日: 2017/05/01
• JAN: 9784757103726

商品レビュー

2018/01/04

医療情報を検索する、それ自体では満足な結果が今は得られないとしても、検索したことで、きっと医療が変わる。
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Yahooのリサーチ部門で働き、検索エンジンに精通すると自負する著者が、しかし母親が癌と診断されたときに「検索」した結果に落胆する。

インターネット企業は、ユーザーの検索から生まれるデータを活用している。大勢の人が癌について検索することから、医師は何か有益なことを学べるのではないか。インターネットはいかに医者の役に立てるか。

インターネットの大規模データは愚昧でもあり知恵でもある。だが医療機関以外から取得される健康データにも、今はあまり気づかれていない価値があるのは事実だろう。

そういえば、すでにいくつかの検索エンジンやSNSは、自殺に関することを入力すると、それを止めるようなコンテンツを返してくる。自殺したい、とまでストレートなクエリではなくても、検索クエリから躁鬱状態を見つけるようなことは出来る。検索クエリと場所から、インフルエンザの流行を予測する、なんて話もあった。

つまるところ、大体知っている話、聞いたことある話の延長かなあ…と思っていたが、解説を読んで納得した。派手なこと、今まで得られなかったような大袈裟な話を、著者は避けている。現状の記述と、そこから得られる謙虚な予測にとどまっている。なぜか。対象読者が医学研究者と臨床家であるからだ。

それでも、検索データと医療というのは、重要な研究テーマだろう。病気とはちょっと違うが、助産師さんに話をきいたときに、みんなインターネットで調べてばかり、なぜかというと、助産師に聞くと怒られる、という。これは本末転倒だ。医療についても同じことがいえるかもしれない。まあ、研究者でも臨床家でもない僕は、直接の検索で得られる情報に期待するよりも、自分の行動がまわりまわって医療に寄与することを期待しよう。

2017/06/01

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