BUTTER

柚木麻子(著者)

• 販売会社／発売会社: 新潮社
• 発売年月日: 2017/04/21
• JAN: 9784103355328

商品レビュー

2024/09/16

木嶋佳苗死刑囚による連続殺人事件に取材した小説。出身地も違うし、殺し方（死に方？）も違うし、死刑囚の父親の死に方も違うし、ここまで変えてしまっていいのかと思いながら読んだ。読み進めるうちに著者は何も木嶋死刑囚の心理に迫ろうとしてはいず、むしろ結婚や料理、あるいは家庭の意味を通じて現代の日本での女性の生き方を探っているんだということに気づいた。木嶋死刑囚（小説では梶井）は結局独善的な人間で、その奔放な生き方に触れてしまったことで犠牲になって死んでいったと、される。そういう意味では事件の本質には迫れていないという感想をもった。
一方、バターの香りをはじめとして、様々な、調理の描写や食べ物の味の描き方は素晴らしく、これまでの著書の作品でも見られた食べ物に対する柚木さんの愛が溢れていた。
七面鳥とか高価なバターとか、一見贅沢に見える道具を自家薬籠中の物にする事が、人生を豊かにするというメッセージでもあり、ステレオタイプの幸せから自由になる事で本当の幸せが得られるという強いメッセージを感じた。
周りに仕事に苦労する女性がいないせいか、知らない世界を見たという感じだった。

2024/08/21

とにかく料理の描写が丁寧で愛がこもっていて、お腹が空くし、つい気になってレシピを検索したりしてしまいました。
内容は少し長ったらしい印象です。女性の生き方についてですが、女性の容姿に対して思った以上に世論は厳しいというのには共感できました。読了後にすっきりとはいかなかったですが、色々考えさせられました。

2024/08/19

食べ物の描写が上手い小説は良い小説と聞いたことがあるが、この作者は食べ物の描写がうますぎてお腹が空くというより胃もたれしてくる。
もったりした濃厚な文章が独特で、柚木さんの他の作品も読んでみたくなった。

女性の献身性・生き方にフォーカスを当てた作品なこともあって容姿の描写が多く、自分に似た容姿の主人公にドキッとした

自分が何を食べたいか、を理解するには気力と体力が要る。

料理とは、誰かに作って、その相手を殺すこともできるし、自分のためだけに作って、人生を豊かにすることもできる。

「料理」や「バター」からマッピングして出てきた項目を全部物語に反映しました！みたいな感じで、要素てんこもりの長い小説ではあるが、読了後の満足感はどこか満腹になった時と似ている。