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実験国家アメリカの履歴書 第2版 社会・文化・歴史にみる統合と多元化の軌跡
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実験国家アメリカの履歴書 第2版 社会・文化・歴史にみる統合と多元化の軌跡

鈴木透(著者)

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実験国家アメリカの履歴書 第2版 社会・文化・歴史にみる統合と多元化の軌跡

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 慶応義塾大学出版会
発売年月日 2016/12/01
JAN 9784766423907

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実験国家アメリカの履歴書 第2版

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2025/10/26

慶應大学でのアメリカ合衆国入門講義の授業ノートを基にした本で、アメリカ合衆国を「実験国家」として捉える視点から、社会史・政治史・思想史が、特に予備知識のない人にもわかりやすく記されている。ややリベラル寄りで、とりわけアメリカ的な思想であるリバタリアニズムへの言及がほとんどないこと...

慶應大学でのアメリカ合衆国入門講義の授業ノートを基にした本で、アメリカ合衆国を「実験国家」として捉える視点から、社会史・政治史・思想史が、特に予備知識のない人にもわかりやすく記されている。ややリベラル寄りで、とりわけアメリカ的な思想であるリバタリアニズムへの言及がほとんどないことに若干不満を感じたが、全体としてはアメリカ合衆国への入門・再入門のために非常によくできた本だと感じた。この種の本は複数著者による論集になりやすいが、著者が第1版の「まえがき」で論じているような、一貫した視点の弱い類似の合衆国入門書についての問題意識から、本書は著者一人が植民地時代から第一次トランプ政権成立までを通史的に扱っており、視座にブレがないという点でも貴重である。 本書で特に勉強になったのは、植民地時代、17世紀のピューリタンがキリスト教側から見た旧約聖書の「エレミア記」を題材にしたジェレマイアッドと呼ばれる説教形式の存在についてであった。現実の腐敗や堕落を説いたのち、人間の努力によって新大陸は楽園となることを予言するこの説教の形式が世俗化し、アメリカ合衆国のポジティヴであることを善しとする文化に繋がったというのが著者の見立てである。 “……ピューリタンのジェレマイアッドは、人々に警告したり、神への恐れを抱かせることを目的としているというよりは、むしろ、アメリカは約束の地であるという、ピューリタン特有の楽園建設物語の枠組みを再確認するものとなっているのである。換言すれば、深刻な現実、それに対する嘆き、楽園物語のシナリオ、それら全てが矛盾なく納まるようなものの言い方がここで成立しているのである。神との約束と堕落した現実との間の落差をただ嘆き悲しむにとどまらず、そうした嘆きと楽園建設の物語の枠組とが両立するようなレトリックをピューリタンは編み出したのである。そして、このような「自分たちの社会には未来が約束されているのだから、悲惨な現実に対する嘆きをバネに前進しよう」という、自分たちに言い聞かせ自らを奮い立たせるような論法は、その後のアメリカ社会の様々な局面で登場することになるものの言い方の雛形的存在とみることができる。  例えば、1960年代の公民権運動のクライマックスとなったワシントン大行進の際、公民権運動の指導者キング牧師は、「私には夢がある」(“I have a dream”)という有名なスピーチを行ったが、あの演説の論法はジェレマイアッドのレトリックに酷似している。キングは、人種差別の深刻な現実を批判し、自由と平等を掲げたこの国の理想と現実との間の落差を嘆きつつも、「私には夢がある」という、いわば約束された未来への期待を表明することも忘れていないのである。  アメリカ人の心の底には、様々な社会問題を抱えながらも自分たちには約束された未来があるという「物語」が生き続けているようにみえるが、そのルーツは17世紀のピューリタンに遡ることができる。そして、こうした物語が存在するからこそ、アメリカは常に発展途上・完成途上の国であり、進行形の国であり続けることができるのである。その意味では、17世紀のピューリタンの考え出したレトリックは、結果的にこの国のいわば推進力となるような重要な文化的伝統を生み出すに至ったといえる。アメリカという国は、困難に直面しても、それを矛盾なく回収してしまうような物語の枠組みやレトリックを文化的伝統として持っている国であり、そこが侮れない所なのである。そして、そうした伝統のルーツは、はるか17世紀の植民地時代にまで辿ることができるのである。” (鈴木透『実験国家アメリカの履歴書 第2版――社会・文化・歴史にみる統合と多元化の軌跡』慶應義塾大学出版会、東京、2016年12月24日第2版第1刷発行、24-26頁より引用) 本書では、17世紀のピューリタンが、先住民であるインディアンとの戦いを神が与えた試練であり、インディアンに打ち勝つことで神の意志を満足させ、楽園建設が可能になるという物語の枠組みで解釈することで、インディアン抹殺を正統化していった様子が記されている(22頁)。19世紀半ばに西漸運動のスローガンになった「マニフェスト・デスティニー」も、このピューリタン的な発想から理解できるとの記述があり(85-86頁)、アメリカ合衆国における社会思想としてのキリスト教の役割がこのようなところにあったことは、強く認識すべきだと感じたのであった。

Posted by ブクログ