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「イスラム国」はテロの元凶ではない グローバル・ジハードという幻想 集英社新書0862
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「イスラム国」はテロの元凶ではない グローバル・ジハードという幻想 集英社新書0862

川上泰徳(著者)

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「イスラム国」はテロの元凶ではない グローバル・ジハードという幻想 集英社新書0862

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 集英社
発売年月日 2016/12/01
JAN 9784087208627

「イスラム国」はテロの元凶ではない

¥220

商品レビュー

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2023/11/24

世界貿易センタービルに飛行機が突っ込むシーンは未だ頭から離れず、ビルから上がる煙や崩れ去ると同時に大量の書類が宙を舞う風景、逃げ惑う人々、あれ程衝撃的な映像を見たのは生まれて初めてだったと記憶している。その後アメリカによる対テロ戦争が始まった。首謀者とされる人物が軍事作戦で殺害さ...

世界貿易センタービルに飛行機が突っ込むシーンは未だ頭から離れず、ビルから上がる煙や崩れ去ると同時に大量の書類が宙を舞う風景、逃げ惑う人々、あれ程衝撃的な映像を見たのは生まれて初めてだったと記憶している。その後アメリカによる対テロ戦争が始まった。首謀者とされる人物が軍事作戦で殺害され収束に近い形を見た事も何度かあった。欧米が支援する政権が樹立し、軍も撤退するなど一時的な平和状態が訪れた様にも思うが、世界では引き続きテロや紛争が絶え間なく発生している。直近のハマスの先制攻撃に報復するイスラエルの攻撃も表向きはユダヤ教対イスラム教の宗教対立に見えるが、真因については、私の様な遠い地に住む人間には解らない。ただ現実そこには貧しい人々の暮らしがあり、罪もない市民が攻撃によって亡くなっていく事実だ。 本書は世界がテロの諸悪の根源として扱うイスラム国の成り立ちや、それに対する世界の動きを追いかけて、イスラムによるテロの真の原因がどこにあるのかを考察していく。タイトルに「(イスラム国は)テロの元凶ではない」とあるように、まるで世界がイスラム国さえ潰せばテロの無い平和な暮らしが来る様な感覚に陥っているが、実際それは問題の真因ではなく、イスラム国自体が問題から生まれた「結果」であると論じる。 何度か繰り返されてきたパレスチナ紛争、アラブ世界が民主化に向かったアラブの春、イラク戦争などの原因と経緯を追いかける事で、今のイスラム世界が直面する貧困・若者の失業を考えていく。そうする事で日本を含む欧米諸国が如何に自分たちの都合の良い国造りを押し付け、結果的に失敗してきた(失敗している)事が紐解かれていく。特にスンナ派とシーア派の対立や政権の転覆を図る内向きなローカルなテロと、アメリカなどの介入により引き起こされ、自爆テロや航空機乗っ取りなどの手段で対外的な攻撃を行うグローバルテロの関係性を理解せずに、誰が正しいのかを理解するのは難しい。 本書はそうした一見すると複雑怪奇に見える構造を分かりやすく紐解いていく。失業し行き場を失った若い世代の熱をインターネット動画をはじめとするローカルニュースによって惹きつけていく過激派集団。欧米諸国で流されないニュース映像が時代の波に乗り、アラブの若者の目に触れるようになった。アラビア語の解らない日本人の多くは、イスラム社会で何が起こっているかを正確に理解するのは難しい。筆者は現地で活動するジャーナリストの眼でそうした真実を明らかにしていく。 先ずはこうした書籍を読む事で、自分の頭で判断するしか無い。それでも答えは見つからないかもしれないが、それらを知らずに垂れ流しの(捻じ曲げられた)ニュース報道だけ見て批判するのはあまりに酷い。世界からなぜ紛争が無くならないのか、テロ組織は何を目的としているのか、アメリカの真の狙いは、イスラエルは何処まで闘うのか。パレスチナ問題を表からも裏からしっかり見ていけるような知恵を身につけなければならない。

Posted by ブクログ

2017/04/15

■なぜ残酷な画像を敢えて公開するのか。アルカイダの幹部で戦略家でもあるアブ・ムサアブ・スーリーによる「イスラム目がある。そこでは,「コーラン」の「戦利品章」にある「彼らに対して,あなたのできる限りの(武)力と,多くの繋いだ馬を備えなさい。それによってアッラーの敵,あなた方の敵に恐...

■なぜ残酷な画像を敢えて公開するのか。アルカイダの幹部で戦略家でもあるアブ・ムサアブ・スーリーによる「イスラム目がある。そこでは,「コーラン」の「戦利品章」にある「彼らに対して,あなたのできる限りの(武)力と,多くの繋いだ馬を備えなさい。それによってアッラーの敵,あなた方の敵に恐怖を与えなさい」という一文を引用していた。この文書はアルカイダの教本の一つとされるが,ここで「テロリズム」と訳しているのは,「コーラン」の中で「敵に恐怖を与えなさい」という部分である。アラビア語では,テロリズムは「イルハーブ」である。これは「恐れさせる」「恐怖を与える」を意味する動詞「アルハバ」から派生した名詞であり,英語動詞「テロライズ(terrorize=恐れさせる)」から名詞「テロリズム(terrorism)」が派生するのに符合する。「コーラン」の「神の敵に恐怖を与えなさい」が,アルカイダのジハード指南書の中で「テロは宗教的義務」とテロを肯定する理屈になっている。敵を処刑するだけでなく,その残酷な場面をネット上で公開することは「神の敵を恐れさせる」という宗教的意味を持つことになる。 ■「部族は社会の土台であり,国家が分裂すると,人々は庇護を求めて部族に目を向ける。部族は血縁に基づいたものであり,部族独自の法と秩序を持ち,メンバーを守る役割を担う。」「国家が強いときは部族の役割は弱くなり,社会の秩序や公正は国の機関によって維持され,人々も国に頼るようになり,部族長の権威は象徴的なものとなる。しかし,国の方が公正を欠くようになれば,人々は部族の法に頼るようになる。」 ■「イスラム国」は混乱の原因ではなく混乱の結果である。その混乱は米国による誤ったイラク戦争と,誤ったイラク駐留によってもたらされ,更に自由も平等もないアラブ世界の強権体制に対する若者たちの反乱である「アラブの春」への暴力的な封殺が帰結したものでもある。

Posted by ブクログ

2017/03/18

一読してよくわかった‥とは言えない。中東地域の対立とか協力関係は複雑‥という印象はぬぐえない。著者自身、「中東情勢を見る上で大切なのは、表に出ている情報をもとに、どのような情報が表面に出ていないか、別のストーリーが裏で進んでいるのではないか、と考えながら状況を見ること」(p.20...

一読してよくわかった‥とは言えない。中東地域の対立とか協力関係は複雑‥という印象はぬぐえない。著者自身、「中東情勢を見る上で大切なのは、表に出ている情報をもとに、どのような情報が表面に出ていないか、別のストーリーが裏で進んでいるのではないか、と考えながら状況を見ること」(p.206)と言っておられる。 ただ、イスラム国が単なるテロ組織ではない(国を維持するためには電気や水の供給、食糧・医療・貧困救済などの恩恵を人々に与えることが必要になる)こと、混乱の原因ではなく結果なのだということ、は、そうなんだな、と思った。 なるほど、と思ったことをいくつか *米軍がイラクのイスラム国空爆に踏み切ったのはイスラム国がテロ組織だから、というより、米国と関係の深いキルクーク油田の防衛を考えたように見える(p.68) *イスラム国にとって、民主主義の正当性を繰り返したムルシ(ムスリム同胞団)は、アッラーが下したイスラム法以外の規則を信奉した「ターグート(偶像崇拝者)」ということになる(p.129) *イスラム国では女子教育が認められている→タリバンとの違い(p.160) *若者がジハードに参加するのは同胞を助けたいという思いが中心で、過激思想への傾倒は必要条件ではない(p.190) *国際社会では諸悪の根源のように言われるイスラム国だが、民間人の使者は(シリア)政府軍やロシア軍によるもののほうが圧倒的に多い(p.200) 単にイスラム国を壊滅させたとしても問題は解決しないだろう、ということ‥ イスラム国を叩くのではなく、犠牲になっている人達に目を向けるべきだということ‥

Posted by ブクログ

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