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歌集 渡辺のわたし 新装版
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 港の人 |
発売年月日 | 2016/09/01 |
JAN | 9784896293180 |
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歌集 渡辺のわたし 新装版
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商品レビュー
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5件のお客様レビュー
#斉藤斉藤 #渡辺のわたし 2004年オンデマンド出版が初版、こちらは解説付きの港の人出版の新装版。 解説の阿波野巧也さんが、「口語でいくならこれは読んどかないとね」と教えられた歌集らしい。穂村さんの投稿欄で「斉藤斉藤」が「斉藤斎藤」に間違えられてそのまま「斉藤斎藤」になったらし...
#斉藤斉藤 #渡辺のわたし 2004年オンデマンド出版が初版、こちらは解説付きの港の人出版の新装版。 解説の阿波野巧也さんが、「口語でいくならこれは読んどかないとね」と教えられた歌集らしい。穂村さんの投稿欄で「斉藤斉藤」が「斉藤斎藤」に間違えられてそのまま「斉藤斎藤」になったらしいという逸話がある。 この第一歌集が欲しくていろいろ探しあててやっと購入。 主役よりも圧倒される脇役的存在感、詠まれた場面にはっとさせられる観察眼、冷静な客観視、実験的な歌もある。不安定な存在の「わたし」、「ぼく」と、「あなた」や「みんな」との相容れない距離感、孤独感がひしひしと伝わってくる。 特に気になった歌に私の解釈()をつけてみました。 お名前何とおっしゃいましたっけと言われ斉藤としては斉藤とする (自らを強く意識する瞬間を鋭くとらえている) このうたでわたしの言いたかったことを三十一文字であらわしなさい (短歌にはそう言われているような強迫的脅迫的側面を感じる時がある) 背後から不意に抱きしめられないと安心してるうなじがずらり (うしろからの攻撃をないものとして油断している人の背後の無防備さ) おおくのひとがほほえんでいて斉藤をほめてくださる 斉藤にいる (賞賛されている人々に囲まれていても仮面をつけて演じているわたし) 歩行者用押ボタン式信号の青の男の五歩先に月 (信号を見るたびに思い出しちゃうよ 太陽ではなく月というのが良い) ウォシュレットがぴしりと的を射抜くよう膝をそろえて背筋をのばす (あ、私のこと?!) 俳句でもやってみたらと勧めたら母さんふとんを叩きに行った (短歌じゃなくて俳句なんですね 日常の母さんの様子の連作がまた突き抜けている) 「わたしって足りない人じゃないですか」(a)足りている(b)足りていない (不穏な空気が流れる余韻を選択肢がさらに強調している) ぼくはただあなたになりたいだけなのにふたりならんで映画を見てる (大好きなこの歌がどのページに収められているのか確かめたくて買った歌集です)
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君の落としたハンカチを君に手渡してぼくはもとの背景にもどった このうたでわたしの言いたかったことを三十一文字であらわしなさい 題名をつけるとすれば無題だが名札をつければ渡辺のわたし このなかのどれかは僕であるはずとエスカレーター降りてくるどれか 俺様の楕円の視野...
君の落としたハンカチを君に手渡してぼくはもとの背景にもどった このうたでわたしの言いたかったことを三十一文字であらわしなさい 題名をつけるとすれば無題だが名札をつければ渡辺のわたし このなかのどれかは僕であるはずとエスカレーター降りてくるどれか 俺様の楕円の視野をあふれ出すしずくが世界を写してやまぬ おまえの世界に存在しない俺の世界のほぼど真ん中ガムを噛んでる どっちみちこのほほえみがうそならば生まれることに決めたんだった ぼくはただあなたになりたいだけなのにふたりならんで映画を見てる せつない とあなたの声で言ってみる あなたの耳に聞こえてる声 カラスが鳴いて帰らなければなにひとつあなたのわたしはわからないまま ちょっとどうかと思うけれどもわたくしにわたしをよりそわせてねむります . 「背景でもいい」姿勢に逆に気迫を感じた。ぼくは"入れ物としてのぼく"に入っているだけで、ぼくはぼくじゃなくてもいいけど、今はただぼくとしてやっている。 たまにぼくがぼくとして生きてるどうしようもない現実に、はっと気づく時がある。すれちがう大勢の中のだれかでもいいはずなのに。あなただってよかったはず。ぼくがいまぼくになりきっているように、ぼくはただあなたになりたいだけなのに、それは叶わなくて、それがじわじわ迫ってくる。近いようでどこまでいっても辿り着けない、共感のその臨界点みたいなところまで、スニーカーかなんかですたすた歩いていってるような、ぽつんとした寂しさがある
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解説を読むと、自分の感想が上書きされてしまって、読んでいる時、読み終わった直後に何を考えて、何を感じたか、あのふわふわした感覚が解説の言葉で微妙にズレた着地に固定されてしまうから、もったいないですね。 わたしは苗字がありふれた渡辺なので(笑)、そして社会人経験も3年になろうとして...
解説を読むと、自分の感想が上書きされてしまって、読んでいる時、読み終わった直後に何を考えて、何を感じたか、あのふわふわした感覚が解説の言葉で微妙にズレた着地に固定されてしまうから、もったいないですね。 わたしは苗字がありふれた渡辺なので(笑)、そして社会人経験も3年になろうとしているところなので(社会人は、社会の人と書くので、学生とはまた違うのですよね、学ぶために生きている、何かにこれからなろうとしている存在とは)、「わたし」とは何か、という問いへの、特に、「わたし」の何者でもなさに心を惹かれました。エスカレーターの歌とか。会社や大学で何のスキルも育てていない私は代替可能なありふれた商品として労働市場では扱われます。市場ではありふれた消費者として、ありふれた視聴者として、ありふれた読者として。電車ではスーツをきたありふれた会社員として。大勢のうちの一人であって、もはや誰かの背景でしかないのです。背景にすらなり得ないかもしれないですね。そういう実感を会社に入ってからよく抱きます。 好きな歌がたくさんあって、付箋をたくさん貼ってしまいました。
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