中学受験 注目校の素顔 海城中学高等学校 学校研究シリーズ008

おおたとしまさ(著者)

• 販売会社／発売会社: ダイヤモンド社
• 発売年月日: 2015/10/10
• JAN: 9784478047989

商品レビュー

2015/10/12

　中学受験生向けに「注目校」の特徴的な教育の様子を紹介するシリーズで、東京・新宿にある海城中学高等学校の紹介。著者は私学教育や中学受験の本をよく書いている人。
　卒業生のインタビューからはじまり、受験スパルタ校だった時代から今のような生徒主体の授業を実施するようになった改革の経緯、特徴的な授業・行事の取材記事が載っている。在校生の声もわずかではあるが掲載されている。重要な部分がシンプルにまとめてあり、分かりやすい。「本書に書かれた内容については、『いいところばかり書いて…』という批判もあるかもしれない。そのとおり。本書の主旨として、海城の魅力こそを表現した。あら探しはしていない。」(p.179)ということらしい。
　「受験勉強も本来、アクティブ・ラーニングの延長線上にある。そういう受験勉強をしてきた子供は大学に入ってからも社会人になってからも伸びる。」(p.158)という部分は、最近の実績ある人気校の多くに共通する教育方針だろうと思った。特にこの学校の特徴的な部分は、ルールもなく価値観も違う人同士での「コミュニケーション力」、「コラボレーション力」というものを育てようとしているところだと思う。「衝突や葛藤を経験しながらも、最終的には異質な者を取り込んでいく社会こそが発展する。異質なものが出会うときのストレスに柔軟に対応し、異質な者と共同できる素質をもった人物を、海城は育てようとしている。」(p.155)という部分が印象的であった。