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異国の出来事
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 国書刊行会 |
発売年月日 | 2016/02/25 |
JAN | 9784336059161 |
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商品レビュー
5
4件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ウィリアム・トレヴァー初読。アイルランドの作家。本作は外国や旅行記を題材とした短編集。 旅先をキーワードに人間性を描いた作品集。全体的にほろ苦く、単純なハッピーエンドはない。どの短編も前半はスロースタートで、語り手などが中盤以降に畳み掛ける感情の吐露が、物語を急加速させるイメージ。 国書刊行会のシリーズ集が非常に欲しくなった。 以下は作品別の感想。 ○エスファハーンにて イランのエスファハーンに一人旅する男と女の話。それぞれ秘密があって、女は秘密を話し、男は上辺だけ繕い秘密は伏せたまま。結果、赤の他人にすら、旅先で一瞬しかすれ違わない相手にすら心の内を曝け出すことができない、何もない男がいた。と言う苦い話。 ○サン・ピエトロの煙の木 ★おすすめ 毎夏、イタリアに病気療養を行うために訪れる母と息子の話。ある夏、魅力的なフランス人が現れて状況に変化が生じる。母とフランス人が次第に親密になっていく様が良い。静かな文章なのだが、妙に扇情的で。 ○版画家 ★おすすめ ある版画家が、フランスのマシュリの屋敷で暮らしていたときの話。その屋敷の主人との、一瞬の逢瀬を片時も忘れず。奥様も、その子供たちのことも大好きで裏切ることはできず、また妻と子を裏切らない主人だからこそ静かに愛する。静かな情景の中に狂おしいほどの想いが浮かぶ短編。 ○家出 若い娘と浮気をした夫を見限りイタリアへ行った妻の話。新天地のイタリアでの生活に満足し、若い娘に感謝するも、夫が病気になったため、捨てたと思ったものが返ってくる。離婚じゃなくて家出っていう題が見事。 ○お客さん 年に一度、島へ行く青年の話(おそらくスイス)。島では広大な農場を経営する中年夫婦と交流し、滞在の終わり頃に必ずホテルへ食事に誘う。食事中、違うテーブルで非常に無作法をした夫とその世話をする妻がおり、青年は妻に惹かれる。夫が寝ている横で妻と浮気する青年だが、妻はたんに夫に罰を与えたかっただけなようで、どこに行っても青年はお客さんだった、という話。 ○ふたりの秘密 パリに旅行に来た中年男性が、レストランで死んだと思われた幼馴染を見つける話。その幼馴染とは、ある夏に残酷な悪戯をした仲。二人きりの秘密がそのあとの人生にどう影響したか、静かに語られる。 ○三つどもえ 赤の他人のおじさんと同居している夫婦が、勧められたイタリア旅行の手違いでスイスまで来てしまった話。ユーモア溢れる話かと思いきや、実は遺産狙いの夫婦と嫌がらせをしたいおじさんの三つどもえだった、というオチ。 ○ミセス・ヴァンシッタートの好色なまなざし ★おすすめ 南フランスの避暑地にたどり着いた夫婦の話。召使のように扱われる夫と、自由奔放に浮気を繰り返す妻に見えるが実は。。。純愛か、偏執か紙一重な気がする。 ○ザッテレ河岸で 妻に先立たれた父とその娘がイタリアへ旅行する話。妻の死を悼んでいないように見える父と、浮気の果てに何も残らない娘のすれ違いが切ない。 ○帰省 退学を命じられた少年とその学校の寮母が地元に帰省する列車の中での話。二人とも不幸せであり、帰省なんかしたくないと思っている。お互い二度と会うことがないとわかり、今まで胸に秘めていた鬱憤を爆発させる。 ○ドネイのカフェでカクテルを ★おすすめ 旅行記を書いている男がイタリアを訪れた時の話。ある意味ミステリな作品。美貌の人妻に言い寄られ、次の日の予定を約束するが一向に現れない。イタリアでは誘拐が流行っており、犠牲になったのか、はたまたその奔放さで別の男と旅に出たのか。好意を寄せてくれた彼女は、約束の前の晩、何を考えていたのだろうかと想像するところが切ない。 ○娘ふたり 一人の男に恋した2人の少女が歳をとってイタリアで再会する話。死んだ男を取り合ったわけでもなく、片方が真実を告げることができなかったため、仲が良かった2人に距離が生まれた。男が結構クソ野郎笑
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性別、年齢問わず様々な人々に焦点を当て、彼らの旅先での出来事を綴った12編。《異国》という環境がもたらす疎外感や解放感を根底にして、彼らと、その《異国》で出会った人々との微妙な距離感や、どことなく不安定に浮遊した関係を描きたかったのだろうか。どの編も物語的な盛り上がりや派手さは...
性別、年齢問わず様々な人々に焦点を当て、彼らの旅先での出来事を綴った12編。《異国》という環境がもたらす疎外感や解放感を根底にして、彼らと、その《異国》で出会った人々との微妙な距離感や、どことなく不安定に浮遊した関係を描きたかったのだろうか。どの編も物語的な盛り上がりや派手さはそれほどないが、落ち着いた丁寧な描写が染み入る。 順番通りに読んでいて、ひたすら不倫(する側だったりされる側だったり)を題材にした話ばかりだったので興醒めしかけたが、それだけではないので中盤以降多少は読む側の気持ちも持ち直した。《異国》には距離だけでなく時間的な隔たりをも与える力があり、その舞台装置に翻弄される人々の心の移ろいを描くのにはうってつけのテーマなのは何となく理解できるが、もう少し違うタイプの物語を読んでみたかったように思う。 12編の中では、旅先での思わぬトラブルに遭遇した器量の悪い夫婦の葛藤を描いた「三つどもえ」と、少女時代の思い出や淡い恋心から生じた疑心と悔恨が、数十年後の旅先での邂逅により蘇る「娘ふたり」が好き。
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トレヴァーの短編は一編づつ読み終わる度にふぅ…と息をつきたくなる。今回は旅に出ている人々がメインに据えられているので、ほとんどの物語においていつものイングランドの街中やアイルランドの田舎での人間関係といったトレヴァーの十八番といえる描写が出てくることは稀だ。しかし、だからこそと言...
トレヴァーの短編は一編づつ読み終わる度にふぅ…と息をつきたくなる。今回は旅に出ている人々がメインに据えられているので、ほとんどの物語においていつものイングランドの街中やアイルランドの田舎での人間関係といったトレヴァーの十八番といえる描写が出てくることは稀だ。しかし、だからこそと言うべきか、その数少ない描写が回顧という形で出てくる数編においてはそれぞれ決定的な意味を持つ。なぜ私はこんな所に…。いったいどこで間違えたのか…。運命のひとひねりでこじらされた、彼らの内面の叫びをトレヴァーの筆は容赦なく描き出す。
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